BMIは凍結融解胚移植の妊娠率に影響するか? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、BMIが凍結融解胚移植の妊娠率に影響するか検討したものです。

 

Fertil Steril 2017; 108: 770(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.08.024

Fertil Steril 2017; 108: 758(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.09.019

要約:2007〜2014年に凍結融解胚盤胞移植を行なった方461名を対象に、BMIを4群(18.5未満、18.5〜24.9、25.0〜29.9、30以上)に分け妊娠成績を比較検討しました。各群の着床率、臨床妊娠率、出産率、流産率に有意差を認めませんでした。ただし、BMIが高い方は胚移植に時間がかかる傾向にありました(胚移植に200秒以上かかった方の平均BMIは27.5)。

 

解説:かつては、BMI増加に伴い臨床妊娠率、生産率が低下し、流産率が増加するとされていましたが、最近はその論調に変化が見られます。特に体外受精に関しての肥満の影響は否定的であり、一般妊娠治療(タイミングや人工授精)では肥満の悪影響があり得るとの論調になっています。しかし、現在なお混沌とした状況であり、結論づけることはできません。コメントでは「確かに肥満は健康上の問題点が多いけれども体外受精に関してはマイナスにはならないので、保険会社はBMIによって保険のカバーする範囲や料率を変えるようなことはしないで欲しい」と、極めて米国らしい見解を述べています(米国では、民間保険会社が治療方針を決めるような仕組みになっています)。

 

下記の記事を参照してください。

2017.9.13「肥満女性におけるライフスタイル改善の効果 その4:メタアナリシス

2017.7.26「肥満女性におけるライフスタイル改善の効果 その3:費用対効果

2016.12.17「肥満女性におけるライフスタイル改善の効果 その2

2016.12.14「☆肥満女性におけるライフスタイル改善の効果 その1