ER Map®/ER Grade®とは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、スペインのERAテストのグループからの続報で、着床の窓の新たな検出方法「ER Map®/ER Grade®」に関する報告です。

 

Hum Reprod 2018; 33: 220(スペイン)doi: 10.1093/humrep/dex370

要約:2014〜2016年に妊娠歴のある女性96名(18〜34歳)と不妊症女性120名(30〜42歳)の子宮内膜を採取し、ER Map®/ER Grade®により評価しました。なお、前者は自然周期のLHサージ+2日目とLHサージ+7日目に、後者はホルモン補充周期の黄体ホルモン投与の5日目に子宮内膜を採取しました。着床の窓に関する遺伝子群は、過去に発表された論文から、アクチン、β2ミクログロブリン、チトクロームC1、EMG1、GAPDH、TBT、トポイソメラーゼ1、YWHAZの8種類を選択しました。子宮内膜は子宮底部からピペールカテーテルを用いて採取し、RNAサンプルからRT-qPCR法で遺伝子発現を調べました。調査した184遺伝子のうちLH+2とLH+7の2群間に有意差を認めたものは85種類ありました(遺伝子発現亢進71個、減弱14個)。人工知能によるPCA分析を行なったところ、40個の遺伝子を用いれば着床の窓を分類できることが判明し、これをER Map®/ER Grade®と名付けました。次に、不妊症女性のER Map®/ER Grade®とERAテストを比較したところ、両者の一致率はテスト①で97.6%(81/83)、テスト②で91.9%(34/37)でした。

 

解説:スペインのERAテストのグループは事業を大きく展開し、現在では日本を含め14カ国でERAテストを実施しています。しかし、どちらかというとビジネスが先行し、根拠が弱い印象は否めません。彼らが発表した論文(2017.10.19「☆着床の窓:スペインから続報」)には、「受容期」の妊娠率は60%前後、「受容期前」でも66%、「受容期後」で38%とあります。これが何を意味するのか、ERAテストの本当の意味が問われています。本論文でご紹介した新しい方法「ER Map®/ER Grade®」には®マークがついていますので、すでに登録商標であることを示します。またしてもビジネス先行という懸念が生じて参ります。

 

私は、多くの方では着床の窓が広いのではないかと考えています。つまり、多少のズレは全く影響ないわけです。そう考えると、「受容期」でなくても妊娠する説明がつきます。一方、ごく一部の方では着床の窓が狭いかズレがあるのではないかと推察しています。そのような方には、もしかするとこれらの検査のメリットがあるのかもしれません。どのような場合に有効か、ぜひ対象を絞っての検討を期待しています。

 

着床の窓については下記の記事を参照してください。

2018.1.31「非侵襲的NCS検出法

2017.10.19「☆着床の窓:スペインから続報

2015.9.4「☆黄体ホルモン濃度はいくつあれば良い?

2014.12.21「☆ERAテストについて

2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報

2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」
2014.8.10「「着床の窓」について」

2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」