子宮腺筋症の治療について:手術療法 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

子宮腺筋症の治療についての第2弾は手術療法です。

 

Fertil Steril 2018; 109: 406(日本)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.01.032

要約:1990年頃から子宮腺筋症の子宮温存に手術(子宮腺筋症核出術)が行われるようになりました。術式は、V字切除術から始まり、子宮筋3重フラップ法、非対称性切除法などが実施されています。手術適応は医師によって異なり、一定の基準はありません。また、開腹手術と腹腔鏡手術のどちらも実施されています。腹腔鏡手術は部分的な子宮腺筋症が対象になることが多く、傷も小さく済みますが、開腹手術より子宮破裂のリスクが高いようです。これまでに18論文、2365件の子宮腺筋症核出術が報告されており、このうちの2123件(90%)は日本で実施されていますので、本法は日本が世界で最も先進的に取り組んでいることになります。妊娠例は397名(17%)449妊娠であり、流産率24%(108/449)、出産率81%(363/449)、子宮破裂3.6%(13/397)と報告されています。これまでに報告された子宮腺筋症核出術後の子宮破裂は23件妊娠12〜34週に生じており、手術に用いるパワーソースが影響するとの考えがありますが明らかではありません。また、術後妊娠許可の時期についても明確な基準はありません。

 

論文に発表された日本国内での実施件数の多い施設順に並べると下記のようになります(施設名は発表当時の所属です)。

筆頭著者 実施施設      実施件数 論文発表年

西田   霞ヶ浦医療センター 1349   2016

貴志   高の原中央病院    141   2014(英文)

杉並   京都医療センター   138   2008

長田   日本大学病院     113   2017

北出   順天堂大学病院     74   2017

小玉   倉敷成人病センター   71   2015

吉木   国立京都病院      67   2004

本田   熊本大学病院      51   2009

藤下   長崎大学病院      41   2010

西本   東北大学病院      14   2011

 

解説:子宮腺筋症核出術は健康保険適用外(自費)ですが、厚労省の認定する「先進医療」として5つの医療機関で現在実施されていることが、厚労省のホームページに掲載されています(2018.3.1現在、独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター、東京大学医学部附属病院、聖マリアンナ医科大学病院、秋田大学医学部附属病院、自治医科大学附属病院)。なお、上記以外の医療機関でも手術は行われていますので、「腺筋症外来」を設置している病院あるいは医師を当たってみてください。