本論文は、桑実胚でPGSしたらどうなるかについて検討したものです。
Hum Reprod 2018; 33: 935(米国)doi: 10.1093/humrep/dey053
要約:2013〜2016年にPGS(PGT-A)を実施した1615周期のうち、763周期で1260個の桑実胚が含まれていました(day 6でbiopsy実施)。桑実胚はコンパクション388個、腔形成ありの872個が含まれました。これらを同一周期に採取した3014個の胚盤胞と比較しました。なお、PGT-AはCGH法で実施しました。年齢別各群の染色体異常率は下記の通り(全ての年齢群で有意差あり)。
年齢 コンパクション 腔形成あり 胚盤胞
35歳未満 68.7%(57/83) 57.0%(118/207) 40.3%(387/960)
35〜37歳 75.5%(34/45) 66.4%(97/146) 50.8%(304/598)
38〜39歳 88.9%(40/45) 81.0%(111/137) 55.9%(255/456)
40歳以上 98.1%(211/215) 91.6%(350/382) 78.3%(783/1000)
合計 88.1%(342/388) 77.5%(676/872) 57.4%(1729/3014)
これらの胚を移植したところ、着床率と出産率は桑実胚が28.2%と23.1%、胚盤胞が54.6%と55.0%で有意差を認めました。
解説:桑実胚でPGS実施というのは非常に珍しいことですが、本論文の施設ではday 7まで培養しないと記載されていますので、通常このような胚はday 7に胚盤胞になっているものと推察されます。また、本論文で「腔形成あり」としている胚は、通常初期胚盤胞(G1〜G2)と表記しますので、純粋な桑実胚は「コンパクション」群のみです。そのあたりのことを加味して考えてみると、この結果は極めて妥当なものと思われます。ただし、桑実胚でbiopsyを実施する際には、胎児になる部分と胎盤になる部分の区別がつきませんので、胎児になる細胞に何かしらダメージを与えている可能性は否定できません。なお、本論文の著者は、自己修復が働くのではないかとしています。桑実胚でのPGS実施は実用的なものではなく、現段階ではあくまでも試験的なものとお考えください。