本論文は、幼少期から思春期の虐待と子宮内膜症の関係についての前方視的検討です。
Hum Reprod 2018; 33: 1657(米国)doi: 10.1093/humrep/dey248
要約:1989年以降にNurses' Health Study II(NHSII)に登録した116,430名(25~42歳)の看護師のうち60,595名の方について、2001年に暴力被害質問票調査を行い、腹腔鏡にて内膜症の有無を診断しました。結果は下記の通り(有意差の見られた項目を赤字表示)。
子宮内膜症罹患率
全体 軽度 中等度 重度
虐待なし 1.00 1.00 1.00 1.00
肉体的虐待 1.13 1.03 1.24 1.39
性的虐待 1.17 1.15 1.38 1.69
肉体的+性的虐待 1.41 〜 〜 〜
小児トラウマスコア 子宮内膜症罹患率
1〜5 1.00
6〜10 1.09
11〜15 1.38
16〜20 1.68
21〜25 1.60
解説:子宮内膜症は生殖年齢の女性の10%に見られるポピュラーな疾患ですが、真の原因は不明であり学説の疾患とも言われています。一方、幼少期から思春期の虐待が長期的な健康被害をもたらす可能性が多数報告されており、内膜症の発症にも影響しているとする論文が1件あります。これは、虐待による炎症や慢性骨盤内疼痛に起因するものと考えられています。本論文は、幼少期から思春期の虐待と子宮内膜症の関係についての前方視的に検討したNurses' Health Study IIであり、虐待の程度と正の相関をもって子宮内膜症のリスクが増加することを示しています。調査した6万人のうち、およそ半数の3万人が虐待を受けている事実に愕然とします。
Nurses' Health Study IIについては、下記の記事を参照してください。
2018.4.29「フルーツで子宮内膜症予防?」
2018.3.29「初潮の頃の大気汚染で生理不順?」
2016.7.7「☆子宮内膜症の方は不妊になりやすいのか」
2015.8.22「不妊症、妊娠治療と高血圧のリスクは?」
2015.3.22「甘味飲料水と初潮の関係」
2014.11.28「☆ニキビと内膜症の関係」
2014.10.30「☆卵巣癌のリスクを減らす方法」
2013.7.18「☆痩せすぎは内膜症になりやすい?」