Q&A4002 凍結卵子41個で思うような結果が出ません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 33歳、AMH 0.1、FSH 16.3(1年前の測定結果)


2017年に急性骨髄性白血病のため骨髄移植をしており、現在閉経には至っていませんが卵巣機能が低下しています。骨髄移植前の2016年6月と8月に、抗がん剤の合間を縫って2回採卵し卵子凍結していました。(詳細は覚えていませんが、アンタゴニスト法と記憶しています)
1回目凍結20個(採卵時26歳)
2回目凍結21個(採卵時26歳)

結婚し、2023年より不妊治療を始め、自力で排卵があること、凍結卵子があることから、約半年間タイミング法をしていました。しかし、夫とは別居婚で週末しか会えないことも影響してか、妊娠には至りませんでした。そこで、2023年末に1回目に採卵した凍結卵子20個のうち15個を融解しましたが、7個正常融解(8個は変性)、4個受精、胚盤胞0でした。その後、残りの卵子26個を全て融解し、17個正常融解(9個変性)、13個受精、胚盤胞6個、凍結胚5個となりました。結果は以下のとおりです。
6日目胚盤胞 3AB、3BC、3CC(破棄)
7日目胚盤胞 4AA×2、4BB
2024年、6日目胚盤胞3ABをホルモン補充周期で移植しましたが、HCG<0.1で陰性でした。(AHA等のオプションなし)

①凍結卵子の融解時変性率が高いことや、全体数から見た胚盤胞到達率の悪さ、5日目胚盤胞が出来なかったことが気になります。主治医からは、当時の凍結技術や抗がん剤治療が影響しているのでは、と説明を受けました。この点先生はどう思われますか。抗がん剤の影響を受けているなら、妊娠しづらい胚である可能性もあるでしょうか。夫は34歳で、精液所見は全く問題ありませんでした。
②今まで子宮や卵巣について血液検査以外の検査をしたことがありません。次の移植の前に何か検査をしたいと思い、子宮鏡検査をする予定です。今通っている病院では先進医療を扱っておらず検査に限界がありますが、他にしておくべきことはあるでしょうか。
③主治医からAHAの説明はなく、前回の移植ではAHAを実施していません。ただ、卵子凍結から考えると2回凍結した胚盤胞となり、素人考えながら透明帯が硬化している可能性もあるのではと思っています。今の病院でAHAが出来るか定かではありませんが、AHAは必要だと思われますか。
④次は6日目胚盤胞3BCを移植することになると思います。これで陰性の場合は、私が第二子まで希望していること、AMHが低いこと、卵巣機能が低下していること、残った胚は7日目胚盤胞であることを考慮し、採卵に進んだ方がいいのではと悩んでいます。7日目胚盤胞の移植か採卵か、どちらを優先すべきでしょうか。もしくは次の移植もやめ、すぐにでも採卵に移るべきでしょうか(主治医からは、採卵1回につき取れても1つと言われています)。
⑤採卵する場合、今の病院では先進医療を取り扱っていないこと、培養液が合っていない等の可能性を考え、転院を検討しています。貴院へ通う場合、高速バス2時間の距離ですが、最善を尽くし転院することで採卵結果が想定より良くなる可能性もあるでしょうか(現在凍結している胚盤胞は保険適用ではありませんので、破棄せず転院が可能です)。

凍結卵子が41個もありながら、思うような結果が出ず、追い詰められています。どうしても子どもを持ちたいです。

 

A 2016年=25歳での採卵の胚はとても貴重です。これを最大限有効に活かしたいと思います。

①主治医のお考えと同様で、私もこの両者あるいはどちらかだと思います。
②現在の凍結胚でお子さんを授かりたいので、当院で行なっている全ての着床障害•オプション検査を実施してから移植することをお勧めします。参考までに、リプロダクションクリニックでは、下記の検査を行っています。

血液検査:甲状腺(TSH、fT4、TPO)、耐糖能(HOMA-R)、NK活性、ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体IgG IgM、抗PE抗体IgG IgM、抗β2GPI抗体IgG IgM、抗aPS/PT(プロトロンビン)抗体IgG IgM、血液凝固第12因子、プロテインC活性、プロテインS活性、25OHビタミンD、銅、亜鉛

子宮因子検査:慢性子宮内膜炎(CD138細胞)、子宮鏡、子宮収縮(エコー動画)、ERPeak、ERBiome

③凍結すると透明帯が硬くなりますので、当院では全例にAHAを行なっています。AHAは必須だと思います(リプロダクションクリニックではオプションではなく必須です)。
④胚盤胞であれば、5〜7日目を問いません。現在採卵しても1〜2個なのでしたら、②を実施して万全な体制で現在凍結中の胚を移植したほうが近道だと思います。
⑤リプロダクションクリニックへ胚を移送して、②を実施し万全な体制で移植することをお勧めします。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。