卵子凍結に関するASRMの見解 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、卵子凍結に関するASRM(米国生殖医学会)の見解です。

 

Fertil Steril 2024; 121: 604(ASRM)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.12.030

要約:

1 将来の妊娠を望む女性あるいは女性から男性へのトランスジェンダーの方では、卵子凍結は倫理的に許容されます。

2 卵子凍結の有効性、適応、長期的な影響に関しては不確実な部分があります。

3 医療者は、卵子凍結を希望する方に、現時点で明らかにされている全ての情報を提供すべきです。

4 卵子凍結の有効性、適応、長期的な影響に関しての理解を深めるために、医療者はデータを収集すべきです。

 

卵子凍結の女性が死亡した場合の死後生殖の可否や相続権に関する取り決めについて明確にする必要があります(日本では全て禁止)。凍結卵子の保管施設では、卵子の紛失、破壊、盗難、保管料の不払いに関する取り決めを明確にする必要があります。また、研究のために未使用の卵子を提供するオプションや他人への提供に関する取り決めを明確にする必要があります。使用する場合の年齢の上限に関する取り決めも明確にする必要があります。

 

解説:広報活動による周知や助成金などの拡充により、卵子凍結が増えています。それにより、新たな問題点やクリアすべきことが浮かび上がっています。しかし、未だ発展途上の分野であることも忘れてはならないと警告しています。