決勝トーナメント1回戦 VSクロアチア
前回準優勝のクロアチア。
そりゃ弱いわけはない。
思えば、今大会ほどシステムや戦術が議論されている大会はないような気がする。
W杯OB戦士たちがメディアにたくさん出て、玄人目線での解説をたくさんしてくれる。
これはたぶん中村憲剛の存在が大きいと思う。
戦局を有利にする細かなことや配置、相手との兼ね合い、選手の心理など非常にうまくわかりやすく伝えてくれる。
彼に引っ張られるように、他のOBが様々な興味深い話をしてくれるようになった。
あとは、影山ちゃんだと思う。(団体名は知らないw)
マニアックともいえるサッカー戦術オタク。
欧州トップリーグのチームや選手、戦術に詳しく、ウッチーとの掛け合いから始まり、このW杯で露出が爆発的に増えた。
さてクロアチア。
システム・戦術的には、ドイツ、スペインなどともまた違う。
ボールを持ちたいわけでもなく、守ってカウンターというわけでもなく、個人技で打開したいわけでもない。
解説陣によれば、もっとも対策の立てにくい相手。
スペインやドイツに比べれば日本はボールを持てると思うけど、決定機に持っていけるかどうかは、もしかしたらクロアチアが一番難しいかもしれない。との評。
なるほど。
試合が始まると、まさにその通り。
森保監督は3バックを選んだ。
出場停止の板倉は残念だけど、計算が立った谷口・キャプテン吉田・復調の冨安。
左に長友、右に純也。
ダブルボランチは遠藤・守田、シャドウに鎌田と堂安、ワントップ前田大然。
冨安と遠藤の復帰はかなり頼もしい。
前半は一進一退。
というか日本が普通にボールを運べる。
ビルドアップも楔のパスも、勇気をもってできている。
まるで強国のそれのように。
たしかに相手の特徴がつかみづらい。
繋いできたと思ったら、アバウトなロングフィードを出してきたり。
モドリッチがいろんな所に顔を出す。
その受け渡しがカギだった。
鎌田の調子がいい。
中盤で後ろからのボールを反転しながら受けるあの動きは、甲府で言えば元希の得意とするプレーで、前にトラップをすると読んだ相手DF2人を置き去りにする。
早い段階でこれが決まった。
これは調子に乗れる。
その鎌田に前半40分、絶好機が来た。
ペナ外で遠藤が体の強さでキープ、シュートレンジだったが鎌田に出す。
角度はないがもちろんシュートの場面、なんと左足シュートフェイントで切り返した。
キーパーとDFを転がし、あとはその上のボールを浮かすだけ。
もらった!
が、ボールは無情にもクロスバーを越えていく・・。
うぉぉ・・
完璧だった。
最後のボールタッチだけ。
悔やまれる。
が、そのすぐあとの前半43分。
右コーナーを相手がクリアし、もう一度コーナーに。
ショートコーナーから堂安のクロス。
これが鋭かった。
吉田と相手DFが競ってこぼれたところに・・
前田大然がいた。
左足で押し込む。
ゴール!日本先制!
前半終了間際のいい時間帯に、なんと日本先制!
このW杯では先制点は初めてのこと。
そのままハーフタイム。
こりゃいいぞ。
いい雰囲気でハーフタイムのロッカーを過ごせるはず。
しかも日本には有効な交代カードがまだ残っている。
攻撃なら三苫と浅野に南野、守りなら田中碧がいる。酒井が出れるならなおベスト。
後半開始時の交代はなかった。
前半と同じようにゲームが続く。
クロアチアも特にやり方を変えてくる感じでもなく、淡々と時が進む。
しかし。
特に崩されたわけでもないクロスから、ペリシッチのロングヘディングシュートを決められてしまう。
ペナルティエリアのラインくらいからの弾丸ヘッド。
あのボールスピード、あのコースでなければ権田なら触れる。
それくらい確率の低いシュートが決まってしまう。
やられた・・。
あんなん入るんかい。
ショックではあったが、別に崩されたわけじゃない。
まだ同点、こっちにはまだ交代の切り札が残っている。
今大会恒例となった、浅野と三苫を投入。
しかしクロアチアもこれまでの日本戦はもちろん見ているから、二人がどんなキャラかはバレている。その上を行くプレーが求められる。
特に三苫は警戒されていた。
左に張っても、常に近くにDFがいる。
ボールを入れればもう一人カバーが来る。
点を取られる気はしなかった。
疲れの見えた鎌田を下げ、酒井投入。(このとき純也はウイングバックからシャドーに)
右サイドの堂安を下げ、南野投入。(これで純也は本来の右サイド前に)
伊東純也という選手のユーティリティたるや。
左の三苫が警戒されているとわかると、右の純也に期待がかかる。
しかし純也はスタートから出て、しかも複数ポジションをこなし、後半40分から右サイドのぶち抜きを期待されてもそりゃ無理ってもの。
それをやっちゃうんだよこの人は。
超人だよ。
どんなスタミナしてんだって話。
延長に入っても右サイドをぶち抜こうとする純也の姿を見て、涙が出た。
いつだかのアウェイ清水戦で下田のロングフィードを追いかけ、キーパーの櫛引をかわしてゴールに流し込んだあの時の圧倒的スピード。(このゴールは天城越えと呼ばれた)
その姿を思い出す。
走るフォームもずっと変わらない。
W杯の舞台で、あの時オラがチームの一員として戦ってくれたあの純也が、世界の目が集まる中で・・
泣けるよそんなの。
スペイン戦だってフルで走り切ってるんだよ?
延長前半に一発、三苫のスーパードリブルシュートの局面があった。
長い距離をドリブルして、当然のように左右と後ろから囲まれる。
渾身のシュートは残念ながらキーパー正面。
これが最後のチャンスだった。
延長でも決着つかず、PK戦へ。
PKか・・
もう後は運だ。
いや、結果的に言うと運じゃなかった。
相手キーパーのドミニク・リバコビッチは壁だった。
画面で見てても入る気がしなかった。
案の定というか、南野が止められる。
三苫も止められる。
浅野は逆をつくも、吉田が止められて万事休す。
これはPK戦においては相手の実力が上だったと言わざるを得ない。
決して運ではないように見えた。
日本、またしてもベスト16で涙。
なぜ?
そんなの理由なんか説明できるはずがない。
持ってるものを全部出したうえで、あとは不確定要素。
スポーツなんてみんなそう。
最初からPKで勝とうと思ってたらその練習だって念入りにしたでしょう。
だけど、その前にやるべきことがたくさんあり、PKばっかり練習するわけにはいかない。
今回の日本代表、本当に楽しませてくれた。
何かやってくれる。そう思えることのできたチームだった。
きっと世界もそう見てる。
ドイツとスペインを逆転で破り、クロアチアと引き分けたのだから。
選手の市場価値も上がる。
ビッグクラブで中心を張るような選手も、もっと出てくるかもしれない。
しかしなぁ・・
惜しかったなぁ・・
グループリーグ突破を、もちろん毎回できるはずはない。
ってことはこのベスト8をかけた試合にたどり着くことも相当なこと。
それも4年に一度しかチャンスがないのだから。
惜しかったなぁ。
本当に惜しかったなぁ。
今回破りたかったなぁ・・
2022年 カタールW杯日本代表メンバー
GK
1 川島永嗣(ストラスブール)
12 権田修一(清水)
23 シュミット・ダニエル(シントトロイデン)
DF
5 長友佑都(FC東京)
22 吉田麻也(シャルケ)
19 酒井宏樹(浦和)
3 谷口彰悟(川崎F)
2 山根視来(川崎F)
4 板倉滉(ボルシアMG)
16 冨安健洋(アーセナル)
26 伊藤洋輝(シュツットガルト)
MF/FW
7 柴崎岳(レガネス)
6 遠藤航(シュツットガルト)
14 伊東純也(スタッド・ランス)
18 浅野拓磨(ボーフム)
10 南野拓実(モナコ)
13 守田英正(スポルティング)
15 鎌田大地(フランクフルト)
24 相馬勇紀(名古屋)
9 三笘薫(ブライトン)
25 前田大然(セルティック)
8 堂安律(フライブルク)
21 上田綺世(セルクル・ブルージュ)
17 田中碧(デュッセルドルフ)
20 町野修斗(湘南)
11 久保建英(ソシエダ)
※DF中山雄太(ハダースフィールド)がケガのため不参加となり、FW町野修斗(湘南)を追加招集(11/8)
■監督
森保一
(日本)1968.8.23
サッカーの楽しさは、プレー以外の所にもある。
長友はインタビューで言った。
「みなさんお住いの地域にもJリーグのチームがあるはずです。そこを応援してあげて欲しいと思います」
いや、Jだとないとこもあるよ(笑)
でもJじゃなくても、地域リーグもJFLも考えれば、必ずサッカークラブはある。
そこには懸命に、ボールを追いかける選手がいる。
応援する人がいる。運営するスタッフがいる。盛り上げるマスコットもいる。
サポ仲間もいる。
それぞれにドラマがある。
そこひっくるめて、日常のアクセントに。
仕事では味わえない楽しみがありますよ。
正直に言う。
代表が負けたことはやっぱりそりゃ残念だよ。
だけど実は気づいてしまった。
自分としては甲府が負けることの方が悔しさがあるんだと。
代表が負けた時は日本人全員悔しいのは一緒だから。
勝った時も全員一緒だから。
4年に一度だから。
Jリーグはそうじゃない。
週に一度、一緒に戦ってる選手が負けるほうがキツい。
あっちサイドで喜んでる相手サポの歌を聞くのが本当に悔しい。
サッカーはその延長線上にJ1,海外、代表と続いているんだから。
伊東純也はまさにその延長線上にいるんだから。
サッカーには夢がある。
日本が負けてもW杯はまだまだ続く。
世界最高峰の技と戦いをまだまだ見たい。