今日ここでは、久しぶりに「王子」と呼ばせてもらうことにする。

 

王子、高校三年生。

言わずと知れた受験生。

 

ピリピリムードはたしかにあった。

だけど死ぬほど時間を使ってあからさまに勉強ばっかりしてるわけじゃない。

隣から漏れてくる動画の音声は、数学の講義の時間もあったが、そうでないものも多かった。

 

もうわからない領域。

彼の殴り書きのメモがたまに置いてあるけど、それの意味などサッパリ分からない。

数字と数式の羅列。これがどれくらいの難易度のものなのかすらわからない。

 

数学という科目は、自分の経験上「発想力」を要するものだと思っている。

問題を解くためには、角度を変えて観る力、仮説をどれだけ出せるか、可能性の消去、逆説、こういうことが絡み合って方向性を絞っていく。

そしてその作業の中に、定理や数式の知識が必要になる。

これまるごとをどれだけ経験できるかがトレーニングになる。

 

で、合ってるかな。

たぶん彼にそんなことを言えば、合ってないと言うだろう。

 

一度、試験の形式を聞いたことがある。

 

「数学だけで4時間、問題は4問」

 

ふえぇぇ。

なんだそのマラソンみたいな競技。

集中力と精神力がまず大前提になるのか。

 

向こうの方に見えるか見えないかゴールが全然わからないところからスタートして、手探りをしながら前進する作業、気が遠くなる。

 

早くから、国立理系に進路を絞っていた。

それはなんというか、自然な流れだった。

 

思えば、彼が中学から高校にかけて通っていた個人塾。

ここにそのきっかけがあった。

「数学オリンピック」「数理の翼」こんな世界は普通の塾じゃ開けなかっただろう。

もちろん、学校の友達からの情報もあっただろうが、想像するに王子が自分で切り開いた道で、友達たちをリードしていたのではないかと思う。

 

かと思えば漢検準1級を中学で取ったり。

ストリートピアノで聴衆に聞かせたり。

折り紙の応用で論文を大学教授と共著したり。

ツイッターのフォロワーが何百人もいたり。

 

ホントすげぇな。

 

国立理系の最高峰はもちろん東大であろう。

次に京大か東工大なのか?正直その辺はよくわからない。

 

京大ってカッコよくない?

 

ある時彼がそう言っていた気がする。

たぶんまだ1年生くらいの時。

 

そして2年生の時、立川の実家に泊まって京大模試を受けてきた。

結果は散々だったが、聞けばその模試は3年生と浪人生が受けるものであって、2年生の勉強範囲では知らない領域の出題がされていたという。

それを知ってて、どんなもんか1年早く受けたかったという。

 

こういうのも、今思えば自分で受験を決めてきた。

親のしたことと言えば、「試験料払ってほしい」に対して払っただけ。

特に説明もなかった。

 

二年生の時だったか、何度か全国模試の結果についてその時の現状を話すことがあった。

第一志望東大、第二志望どっかとかの判定の出るやつ。

その時は、東大の判定はDとかだった。

さすがにそりゃあそうでしょう。全国に天才はいるのだからと思っていた。

 

いつだか、バイトを始めた。

モールの中にあるマック。別に学校でも禁止されてるわけじゃないし、社会勉強になるからと全然反対しなかった。

あと、学校に段々いかなくなった。

彼女とかもいた時期あったのかな。それはよく知らない。

 

パソコンを買った。

すげえスペックのマック。

これは自分が立て替えて出世払いということにしてある。

マックのバイトで返済計画を立てたが、それは途中で頓挫したまま。

 

これについては、今となっては払ってやりたい気持ちもあるが「約束を守る」といういう意味で自分で稼いだ金で払ってもらいたいと思っている。

 

6月

学園祭でバンドを。

もちろんその道専門ではないようだけど、メインというかトリのバンドのメンバーだった。

まさかのボンジョビを演るというオープニング。あとは知らない曲だった。

キーボードで参加してたけど、ベースでもいけたんじゃない?

 

7月

今年の誕生日プレゼントにはコレをお願いされた。

正直、もはや何の本だかもわからない。(CELLって細胞でいいんだよね?)

16500円が高いかどうかもわかならい。

だけど、彼にすれば相当重要な本で、手元に最新版を持っておきたいという。

 

8月

プリンターも新調した。

受験要綱やらがPDFで配信される時代、ちゃんと印刷できないと困るとのことで。

 

そして10月。

京大の特色入試の願書提出。

このあたりはピリピリムード最高潮で、特に奥さんの「しっかりやりたい気質」が強く、ぶつかっていた時期。

王子的には受験番号があまり若いのは好ましくないらしく、申込を遅めにしたいという戦略があるらしい。

 

10/2深夜

自分が出張中のホテル。

夜中の2:22

いきなりLINEが入った。

 

「京都大学 インターネット出願」の画面ショットが三枚。

 

ログインして

支払いして

その後ここで写真票など印刷物が印刷できるようになるから印刷して

支払わないと進まない

 

なんと夜中にぶっきらぼうな・・

 

たまたま起きてたのでリアクションできたけど、普通は朝までスルーになるだろ・・。

そこから色々ログインや支払い手続きに手間取り、封筒や写真のことをどうするかのやり取りで結局3:00を超え。

 

翌日、とりあえず出願は完了。

 

そして迎えた11月11日。

京都へは奥さんが一緒に行った。

 

この京大の特色入試、非っ常に狭き門で、定員5名のみ。

全国の高校三年生の頂点が狙ってくる、トップオブトップと言っていい。

数学オリンピックや数理の翼で知っているメンバーがライバルになる。

 

そこへのエントリーが70名強。

大学側からすると、青田刈りもいい所。

 

1日目の筆記試験がそれこそ4時間4問というマラソンで、手も足も出ないこともあるという。

そこで人数が15名ほどに絞られる。

この発表は当日22:00にネット上で発表され、通れば翌日の面接に。ダメならそこで終わりという残酷なシーン。

 

11日は自分も仕事終わりでアウェイ山形に移動という目まぐるしい日だった。

それでも王子の経過は気になる。

 

朝、仕事前にラインを送る。

そして、山形に着いてからおそるおそる聞いてみる。

 

割とそっけない第一関門突破の報だったが、70→17を突破したのって、凄いことだと思うんだけど・・。まぁそういう所あるキャラなんで。

 

翌朝。

8:11にここにいるという事は、結構早めからスタンバってる。

 

自分の方はというと、山形ワシントンホテル。

これから最終節決戦。

の前に神社参拝(決戦とこの入試をお願いするために)に行く所。

 

里の宮湯殿山神社

祭神はオオヤマツミ。

まぁ学問とは少し違うんだけれども。

 

がんばれ王子・・!

さすがにヴァンフォーレよりも先にお願いした。

だから甲府は勝てなかったのかもしれない(涙)

 

 

この後の、面接は想定と違ったという。

前日の試験のことを中心に聞かれると思っていた(たぶんその情報は掴んでいた)が、どうもそうではなく、最初に願書の時点で出したレポート中心に聞かれたという。

 

しかも、シチュエーションは1対5。

そりゃ圧迫感あるわ。

 

第一声は、「落ちたかも―」だった。

だけどそれなら全然わからない。

 

この説明を聞いて、親バカながら想像した。

 

普通なら試験の解答についてのロジックや考え方を面接で聞くところだが、レポートの内容に興味深い所が多く、そちらを中心に話が展開した。

それだけレポートが濃かったということ。

たぶんだけど、筑波大学教授と共著の、正多角形と折り紙の論文(正確なタイトルではない)が面接官の興味を引いた。

そんな流れだったんじゃないかと想像する。

 

この日、朝から座禅を組みにいった奥さんと合流し、京都からはるばる帰ってきた。

帰りの道中はあまり機嫌がよくなく、ほぼ何も話さずに帰ってきたという。

 

自分の方はというと山形で泣き崩れた後、日付をまたがって帰宅した。

 

合格発表は11月27日。

ずいぶん先だ。

その間もずっとドキドキしていた。

 

なにしろ17→5だ。

もしかしたらと期待してしまう。

 

この間、自分も京都にいく用事があった。

まぁ作ったといってもいい。

 

11月20日

天橋立・文殊の知恵の知恩院に参拝し、お守りを購入。

オモヒカネを祭神とする元伊勢籠神社でもお守りを購入。

翌日の北野天満宮はまさにこのお願いに。ここでは合格祈願の梅干しを購入。

 

たぶん王子と同じ高校三年生がたくさん参拝に来ていた。

 

そして。

王子が面接の朝送ってくれた、あの写真の場所へ。

 

おおお、ここで・・。

 

ここからこの写真を王子に送ると、「遊んでるの?」と。

決して遊んではいない。大真面目だ。

せっかく京都に来たからこの場所に来たかった。

 

チャリで京大の構内を走る。

ここに王子は来れるのかな・・。

 

そして・・

 

ついに迎えた。

11月27日月曜日。

 

フツーに会社の日。

朝、起きてきた王子に「今日だね」というと「なにが?」と。

そんなわけないだろ(笑)

教えてよ?と告げて出社した。

 

学校には例によって午前中行ってない。

自分も奥さんもそれぞれの職場でドキドキしていた。

 

発表は正午。

例によってネットで発表される。

 

王子から、少し早く奥さんにラインが。

 

 

11:32。

まだ発表前の時間ではある。

だけど少し早く発表されることもあるかもしれない。

 

ああ・・そうか・・

まぁそりゃあトップオブトップだもんな・・

さすがにそう簡単じゃないよな・・

 

ただ、王子の事だ。

フェイントもありうる。

だけどそんなことするかな・・

 

11:52

奥さんからラインが。

京大の合格発表のサイト、「只今ご利用期間外です」の画面ショット。

っていうか、奥さんがそのサイトにログインできる方法と受験番号を知っているとは。

さすがだ。

 

そして・・

正午を迎える。

 

12:02

 

キターーーーーー!!!!!!!

 

このサイトを開く瞬間の王子の様子は、動画で収録されている。

しかしよくそれを自分で動画に収めようと思ったものよ。

 

あれだけ平静を装っていた王子も、その動画の中では興奮している。

 

高校数学の世界でのトップオブトップと言っていい。

その5名に入ったのだから、これは恐れ入るわ・・。

 

午後はあまり仕事も手につかず、定時で会社を出る。

何か王子の喜ぶものをとも思ったが、奥さんが準備してくれている。

ならばと、クラッカーとくす玉をダイソーで購入。

 

王子よりも先に帰りたかった。

料理をしている奥さん。さすがに今日は上機嫌。

からあげと肉を。

そしてモンブランもあるよと。

 

19:30 王子帰宅。

おかえりー!!!

クラッカーとくす玉でお出迎え。

 

こんなに明るい、そして嬉しくめでたい日はないかもしれない。

人数がいればガードオブオナーでもやってやりたい気持ちだったw

 

それからの数十分間、もちろんその経過や裏話に花を咲かせる。

からあげと肉、そしてケーキをみんなで食べる。

 

そのあとに・・

今日はこれを開けるべき日でしょう。

それくらい特別な日だ。

 

王子6歳の誕生日に買った、産まれ歳のワイン。

↑その時の記事。ブログも長くやっとくもんだねぇ。

 

 

長い年月が経っているので、コルクを抜くのに相当苦労した。

 

プピーユ2005

ワインのことは正直よくわからないけど、神の雫とよばれるワイン。

この年は当たり年という事で、4本買って寝かせてあるうちの1本。

 

今日はそれに値する記念日でしょう。

王子はまだ飲めないけれど。

(ただ、水に2滴だけ入れて飲んだ)

 

だって。

これでもう王子は来春この家を出ていくことも確定してしまったんだから。

次の節目の日には王子はもうここにはいない。

結婚する時にこのワイン開けてほしいけど、それはもう一緒に飲めないのだから。

 

味の方は・・

渋いが、うまい。

なんか感情が複雑に動いた日だったからか、少しのワインで酔ってしまった。

飲みながら家族みんなで話して、やがて夫婦二人で話して。

 

この記念すべき日が終了した。

 

 

 

王子よ、本当におめでとう。

まさに実力で勝ち取った合格。親として誇らしいよ。

自分はいろんな神社に参拝してお守りやハチマキ、鉛筆などを買ってきただけだったけど。

そういう意味ではずっと祈ってたよ。

 

このブログの王子カテゴリの記事は、354を数える。

産まれる時の記録も、かわいい時も、大病を患った時も、数々の舞台も、反抗期に入った様子も、いろんな旅行記録も。(あ、それは王子カテゴリに入らないか)

 

ここまでの成長記録を残している親は、そういないんじゃないか?

そこは少し評価してくれてもいいんじゃないか?

いつかこのカテゴリだけで本にして渡そうか?

 

いらないって言うだろうな(笑)