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回教寺院の石塀越しに漏れ聞こえて来るアザーン、コーランの朗詠に、どっぷり浸かってみたい。一見、禁欲的な動機で再び足を踏み入れたい国を選んでみる。

土地の女に過剰な艶気があってはいけないから、まず、ギリシャやロシアの隣国が尽く消え失せる。湿度が過度であってもいけない。インドネシアもマレーシアも消去される。

銃声やら爆音で、せっかくのアッラーに捧げる謡が、ことごとく掻き消されてしまっては、台無しだから、イエメン、アルジェリア、パレスチナは論外で、時々、アルコールが補給出来るとなると、シリア、イラン、ヨルダンが×、サウジは大バツ。湾岸諸国はうってつけだけれども、なまくら過ぎる。

喜捨を求める、経済的に不自由な人々に付きまとわれることがないといえば、エジプト、モロッコが、あえなく落選してしまう。加えて、現地の料理に食傷を覚えたら、即座に南欧諸国へと飛んで行けるとなると、ある一国が、忽然と、浮かび上がる。

その国は、テロリズム、軍人上がりの完全独裁、過激な原理主義がはびこる国々の狭間にあっても、極端な方向へ暴走することがない。原理主義の朱に染められて、オセロの駒さながらに、あっさり裏返ったりすることがないのである。

ただし、人間の基本的な営みがおおっぴらにされている訳ではないから、艶笑秘話を無性にまくしたてたくなったら、各街に一軒あるかないかの、女人禁制の盛り場へと直行せねばならない。

盛り場にはビールもある、ウィスキーもジンもウォッカもある。欧州諸国産のワインもふんだんにある。メニューには、種々のスピリッツを揃えているから、カクテルも嗜好に応じて無限に拵えることだって可能である。

地元のフットボールチームの勝利の美酒に骨の髄まで酔わされた男どもが乱入してくると、盛り場は、火がついたようにざわめき立つ。男性器や女性器の名称が随所にちりばめてある、チーム応援歌を男共と一緒に、見よう見まねで、がなり立ててると、今度は、誰かが、艶笑落語を呟き始める。

この地で話されるアンミーヤの心得など殆ど無くとも、くすぐりに反応した人々の笑声がどっと沸き起こると、雰囲気に飲みこまれて、私も笑う。言葉はよくわからなくとも、背景が見えるから、即席の艶笑落語についつい熱中させられる。コーランに浸りたいなどという、表向きの大義名分は、いつのまにか、何処吹く風となる。


<続>


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