日本の戦時下ジョーク集 満州事変・日中戦争篇 (中公新書ラクレ 249)/早坂 隆

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満州で生まれ育ったか、あるいは多感な時代を過ごしたという、世に遍く知られた方々を指折り数えてみる。

別役実がそうである。MONDY満ちるの母君がそうである。宝田明がそうである。宮内勝典がそうである。桂米朝がそうである。辻村寿三郎がそうである。松島トモ子がそうである。

故人であれば、安部公房がそうである。池田満寿夫がそうである。と、いくら数えても、とめとがない。

元満州の居留民に直接話を伺うように、私を仕向けさせたのは、池田満寿夫の『楼閣に向って』という短編の一節である。


満州にまつわる厖大な資料を一部一部繙けば繙くほど、元居留民の方々に話を伺えば伺うほど、元満州居留民らが、戦後の極東の大きな引率力の一つになったのではといった結語に、現在のところは辿り着きそうになるが、まだまだ、果たしてどうなることか、傾聴は始まったばかりである。

ある好々婆によれば、ご多分にもれず、満州に渡った動機は、収入の倍増であったそうである。

たとえば、小学校教諭などは、極東にいるより年収が三倍から四倍になったらしい。駆け出しのペイペイでも、ある宮城県北部の町の小学校校長がもらう位の給与額になったという。

奉天の物価は、極東と比較して高かったが、収入の多くを貯蓄することが出来た。

だが、1945年8月中旬、青天の霹靂、ソ連の参戦、関東軍総崩れとなり、虎の子の貯蓄をすべて引き出そうと、奉天市中の郵便局に向ったが、そこはすでに、満人のパルチザンらに占拠されており、満州語、北京語が混入した日本語で詰め寄り、激しく食い下がってみたところで、銃口を向けられて追い返されるだけだったという。

好々婆の執拗な金へのウラミ、嘆き節が、それから始まった。

斯様な話を聞くにあたって、痛感させられたのは、当時の一円が現在であればどれ位の額になるか、物価はどんなものだったのか、換算表や目安が自分の中に出来ておらず、算出や想定がままならないことである。

外貨と日本円を換算するように、昔の貨幣と現在の円を換算できるような私版早見表を、早晩拵えることが不可欠だろうし、そんなレファ本があれば頗る便利だろうから、どなたか画策してみてはいかがでしょうか。





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