~対面~


 キョウスケさまは事故に遭い、半年前から入院していた。

 しかも現在も意識不明のまま・・・・・・。


「今まで不自然に思っていたことも理解できる・・・・・・けど、信じられない話しだわ」


 私が今まで会っていたキョウスケさまは・・・・・・。


「リルと手も繋ぎたがらないわけよ、連絡先の交換もしないわけよ。・・・・・・相手は幽霊だったんだから!」

「幽霊・・・・・・?」


 私の中にある記録ではそれは架空の産物。

 幻覚や夢に類似したものと記されています。


「あいつの妹と連絡がつけられたの、明日会ってみましょう」


 明日・・・・・・。


「明日は午後からキョウスケさまと会う約束が・・・・・・。」

「幽霊に会うより”本人”に会う方が先でしょ。病院も聞いたから明日行くわよ」


 ユウナさまに手を引かれて私は帰りました。

 キョウスケさまとさっきまで話しをしていた公園を振り返りながら・・・・・・。



 土曜日の朝。


 私とユウナさまはキョウスケさまが入院しているという病院へ行きました。

 近くでタクシーを降りると、病院の玄関前に女の子が一人立っていました。


「あの子が・・・・・・。」


 玄関の方に歩いていく私たちに気づいた女の子が、私たちに近づいてきました。


「はじめまして、あたしが昨日連絡したユウナよ。で、こっちがリル」

「はじめまして、長谷川美奈子です」


 お辞儀をした美奈子さんは、おとなしそうでした。

 

「せっかく来ていただいたんですけど、今日は面会の方は・・・・・・」


 申し訳無さそうに視線を落として美奈子さまはおっしゃいました。


「そう・・・急な話しだったし、仕方ないわね。美奈子ちゃんは少しお話しできるかな?」

「はい・・・・・・」


 私たちは病院のお庭のベンチに移動して話しを続けることにしました。


「・・・昨日話しを聞いたときはとても信じられませんでした。意識の無いお兄ちゃんと会ってた人がいたなんて・・・・・・」


 ベンチに座った美奈子さんの最初の言葉・・・・・・。


 キョウスケさまの事故。

 部活動の帰り道、横断歩道を渡っていたキョウスケさまは飲酒運転の車にはねられて・・・・・・。


「でもお兄ちゃん、前に言っていました。好きな人がいるみたいなこと・・・・・・。でもその人は自分のことは好きになってくれないだろうって」

「・・・それがリルのことだったのかな」


 キョウスケさま・・・・・・。


「あの・・・・・・」


 美奈子さまが私を見ました。

 今にも泣き出しそうなお顔で・・・・・・。


「リルさん、もしお兄ちゃんがリルさんと会っていることが支えになってるなら、このままお兄ちゃんといてくれませんか!?

 そしたら・・・・・・リルさんともっと会いたい気持ちが強くなって、ベッドのお兄ちゃんは目を覚ましてくれるかもしれないから・・・・・・!」


 美奈子さまは私の手を取って涙を流しました。


「美奈子さま・・・・・・」

「お願い・・・・・・!」


 強く私の手を握って、美奈子様は何度もその言葉を繰り返しました。



 ~つづく~