http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080812-00000002-cnc-l20


ちょうど23年前に御巣鷹山に墜落し、520名の命を奪った日本航空123便墜落事故のニュースだ。


まったくの偶然であるが、仕事帰りに「沈まぬ太陽 (3)御巣鷹山編」を購入し、あまりに生々しく凄惨な内容に目が覚めてしまい、明け方の4時頃まで400ページぐらいまで一気に読み進めたのは昨日から今日にかけてのことだ。


沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)/山崎 豊子
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ドラマ化された「華麗なる一族」もそうだが、山崎豊子の小説は実話に基づいて構成されており、その記述の信ぴょう性の高さに、どれほどの数の取材と専門知識の勉強を著者は重ねられたのかと、感心してしまう。



まだ読んでいる途中だが、3つのことを思う。


1.利益至上主義が生んだ悪夢

この大事故の背景には、日本航空の利益至上主義と、それに基づく徹底したコスト削減、腐敗した会社のモラル、不当な人事制度、政治との癒着、といった大企業が陥るところまで陥った大病が横たわっている。食品会社のコンプライアンスの低下が食中毒を招くのと同様に、フラッグキャリアのそれは逃げようのない大惨事を巻き起こすが、被害者及び被害関係者、社会に与える影響は食品会社の比ではない。

事故に際し、被害者の家族に「人殺し」と罵倒され罵られながらそれでも自社の非を詫び土下座する一般社員と、運輸庁や大臣の顔色ばかり伺い保身に走る上層部。同じ会社でも上層部と末端の思考がかくも違うものかと考えさせられる。


コンプライアンスが声高に叫ばれる昨今、このような会社はもはや存在しえないと思うも、改めて健全な心で信念・使命感を持ち社会のために良い仕事を敢行することの重要さ、大切さを痛感する。忙殺される業務においても、常に日頃から自問自答するよう心がけるべきことだ。


また、経営者と一般担当者が同じ目線で物事を捉えられる組織がいかに優れているかを思う。何よりも経営者の不断の語りかける努力が必要だ。スポーツチームと一緒で、みんなの心がバラバラだといくらうまい選手が集まってもチームは機能せず、それどころか崩壊すら来す。




2.家族への愛と献身

この事故では、機体だけでなく人間も大破した。原型を留めていた遺体は少なく、首より上しかない遺体、右腕しかない遺体、そればかりか、歯や、ビニールのような皮膚だけの遺体も多数あったという。遺族の気持ちはいくら思いを巡らしても巡り至らない。


体育館内で、棺に入れられ腐敗し異臭を放つそれら遺体の一つ一つを、自分の夫はどこだと探す未亡人。皮膚片だけの遺体を両手にとり、生前の傷を発見し夫であることを確信し、優しく撫で「いとおしい」とつぶやいた彼女の気持ちは、いくら考えても到底わかるものではなく、本文には「愛と献身」として書かれているも、自分の理解を超えるものだ。



3.日本航空の存続

このような大惨事を起こした同社が、その後赤字を計上する年が続いたと言えど、未だに存在し得ていることの不思議。また、その後どのように同社は立ち直ることができたのか。とりあえず続きを読み進めるべし。



コンプライアンスがなんだステークスホルダーがどうだといっぱい本が出ているが、これこそまさに考えさせる文芸ではないだろうか。