もう3月、だんだんと春の気配が感じられる…ような。

春先の公演ラッシュも始まってきてますね。


今回の芝居は北九州芸術劇場プロデュースの公演。

この公演はなかなか興味深いもので、


・どこか北九州をイメージさせる内容である

・第一線で活躍する演出家が北九州に住みながら作品を創る

・オーディションで選抜された、地域の役者を中心としたキャスト

・スタッフも北九州芸術劇場のメンバーを中心とする

・東京公演を行って外部へ発信する


という5つの明確なコンセプトがあるそうで。


盟友・宇内が数少ない北九州以外のキャストとして出演していました。

これは観ない手は無い!!と池袋のあうるすぽっとへ。

有名な劇場ですが、実は訪れるのは初めて。


こちらもキャパ300クラス。

またいつもの小劇場クラスよりデカいですね。

広いんだ、またコレが。もっと小さいホールが好きなんだけどな…(笑)


でも一つの安心感がありまして。


宇内の不思議な…「芝居への引きの良さ」??とでも言おうか。


「良い芝居に出演する力」


という…なんだろうな。

変な安心感…勝手な思い込みがある(笑)




さて、芝居は135分。

なかなかの長編でした。


どんな芝居かというと、ちょっと書きにくい。

北九州・小倉あたりを題材にした芝居でホント、街の日常を描いた作品。


若い頃に東京から小倉の町工場へ就職し、定年を迎えるおじさん。

小倉へ嫁ぐ事が決まったが、不安でたまらなくなっている女性。

アルコール中毒で倒れた兄と、ヤクザの子分として働く弟。

家の事情で結婚しながらもストリップを続けていた女性。

「小倉の父」なんて呼ばれる、人生相談に乗ってくれるケーブルカーの運転員。


などなど…そこの街で働いたり、出会ったり、別れたり。

日常と、そこで起きる小さなドラマや人間関係を丁寧に描いた作品でした。

一見すると、特別何でもない、どこにでもある景色と日常なんですが。


コレはもう…

素晴らしかった!!



日常を描いた芝居でこんなに素晴らしいものが観れるとは。

人間関係の繋がりの面白さが本当に良く描いてあって。

感動…感心…なんだろう…言葉にしにくいな。


良い風景見ながら足湯に浸かって。

だんだん血が温まって、身体が温まって。

最後には気持ちまでが温まる。


そんな気持ちになりました。


最初はあまりに普通の日常感なので、ちょっとキョトンとしてましたが。

ああそうか、ジワジワくるなぁ…と気付いたら、北九州に連れて行かれました(笑)


脚本が本当に素晴らしいし、役者も日常の自然な生活感そのものがしっかり出ていた。

ヤクザやアルコール中毒者、ストリップ嬢といった、ちょっと裏の世界っぽい要素があるのに。

嫌みっぽさや不快な感じなど、全く感じられない。


ちょっと暗めの工場地帯を感じさせる舞台装置。

音響、照明など、スタッフワークもバッチリ。


特に舞台装置の工夫の数々にはもう感心しきり。


これでチケット3000円だと…とんでもないな。

5000円だったとしても何一つ文句無いぞ。




何でこんなに日常を描いた芝居がここまで面白いのか…。


自分の観た回は幸運な事にアフタートークがあり。

そこで北九州芸術劇場のプロデューサーさん、さすが。

良い事を、スッキリしっくりくる回答を一つ言ってくれました。


この芝居の脚本・演出は桑原裕子さん。

このプロデュース公演シリーズでは初めて女性の方だったそうで。



この芝居には愛があった、と。

それも『女性の愛』であった、と。



丁寧に、緻密に芝居を創り上げていく、芝居に対する愛。

脚本・演出家であれば、芝居に対する愛は男女問わず人一倍強く持っていると思いますが。

男性には無い、女性的な丁寧さ…なるほど、すごくしっくりきました。


嫁いでいく女性の気持ち、出産の気持ち、ストリップ嬢の気持ち…

男では、こんなの天地がひっくり返っても理解できないですね(笑)

女性の愛か…ホント、偉大です。


こんな面白い芝居を創る脚本・演出さん、一度でいいからじっくりお話したいものです。

…あまりに楽しかったので勢い余って質問コーナーで質問までしてしまった(爆)


観終わった後は、本当に極上の気持ちよさでした。

良い芝居が観れた後でしか味わえない、最高の気分だ。




北九州芸術劇場・あうるすぽっとをはじめとする、各部・全スタッフの皆様。

出演していた各地のキャストの皆様。

脚本・演出の桑原裕子様。


そして今回も素晴らしい芝居に誘い、観せてくれた宇内。


素晴らしい芝居をありがとう!!

本当にお疲れさまでした!!