*pixivの方に、毎回先にUPしています。

*大変お待たせしてしまい…申し訳ありません;;
リクエストいただいてから、那月君を頭に叩き込むのに時間がかかってしまいました;;
書き慣れないので、偽物化していないか…心配です;;
甘く…優しく…繊細な那月君と
優しく可愛いハルちゃんが表現できていたら…良いのですが。

リアルで色々あり…ワンドロ状態で…読み辛い部分がありましたら、
申し訳ありません;;


『その音符は貴方と共に』(那春)


抱えていた仕事が一段落して、少し恋人と会える時間が増えるかもしれないと思っていた矢先…。
普通コラボ企画は水面下で準備をしてから制作発表、発売となる筈が…ある企画のキャラクターとのCMが好評で、那月君の仕事が突発的に増加してしまった。
彼の事を誰よりも応援していると思っている自分としては、永久に離れないと誓った状況なら、笑顔で送り出してあげなければいけないのに…今朝は見送った後、玄関が閉まった瞬間…
『寂しいです』
小さく…本音を零していた。
まだ今日は扉がガードしてくれていたから、那月君には聞こえていなかったと思うけれど、このままでは…いつか聞かれてしまうのは目に見えていた。
 
誰よりも繊細で…純粋な心を持つ那月君だから惹かれて好きになった。
背丈も、力も強くて…楽器を弾けば…全てのモノを虜にするような技術も持っている。
 
「だから…応援しないと…ですね」
お気に入りの公園で、頭の上に広がる眩しい青空に視線を向けながら、両手で気合いを入れるように両頬を叩いた。
 
 
普段小さな子供達のはしゃぐ声が聞こえている公園なのに、今日は静かだと思いながら、気持ちを持ち上げるように勢いを付けて立ち上がると…公園の中でも一番背の高い木を目指して歩き出した。
恋人は見上げていると首が痛くなる程に背の高い人で…。
今目指している木と同じような…安心感を見ている人に与えられると思いながら、くすりと小さく笑みを零していると…。
 
静かだった場所にメロディが微かに流れてきた。
 
「…この曲は…」
 
聞こえてきた曲は、微かな音量だったとしても、すぐに正体が分かってしまう。
 
___私が…愛しい人の為に…作った曲なのだから。
 
「那月君の曲ですっ」
 
不思議な事に…誰かがラジカセで流しているような音では無く…生演奏で奏でられているヴィオラの音だと気付いた私は無意識に駆け足の状態になっていた。
 
  
___♪
 
バイオリンより少しだけ低い音。
その音が作り出す音色は、まるで穏やかな陽射しの下で揺れるハンモックに乗って昼寝をしているみたいな優しさで…。
 
「那月君っ」
 
近付けば近付く程に、弾き手が恋人である確信が胸に広がっていく。
同じように弾いたとしても、聞いているだけで温かさと切なさを生み出すようなメロディを作れるのは…彼しか思いつかない。
 
大きな木がある小高い丘の反対方向にある場所まで辿り着くと…そこでは何かの撮影をしているスタッフや機材が置かれていて、その中心に姿を持たない筈の音符達が弾んでいるのが見えた。
更に、その音符達は一人の王子様の回りでダンスをしている。
 
「…やっぱり」
 
偶然とはいえ…。
お仕事…演奏をしている大好きな人の姿を見る事が出来て、私の心は音符達と同じ位に弾み始めた。
 
出会ったばかりの頃。
その時も…優しい姿で弾いていたけれど、今みたいに楽しそうな姿ではなかった。
何かを我慢して。
それでも音楽が好きで。
自分の心や涙…多くの感情を込めて弾いていた時…つい…考えるよりも前に私は那月君を抱き締めていた。
 
「那月君…本当に…良かったです」
 
スピードを姿が見えた事で緩めて、邪魔にならないような場所を探す為に撮影現場周辺に視線を向けていると…。
 
____♪___
 
滑らかに…楽しげに…流れていた曲が止まってしまった。
 
「えっ?」
那月君から視界を外してしまっていた為に、いきなり変化してしまった音楽の原因が分からず、両手を祈りのポーズにしてドキドキと五月蝿く鳴り響く心音を抑えながら円の中心へと視線を戻そうとすると…。
「…ぁっ」
周囲が真っ暗になってしまった。
 
「な…那月…く…」
周囲に多くのスタッフが居るのだから、名前を呼んだりしたらダメだと分かってはいても…。
恐怖を感じた瞬間、瞼裏へと映し出された姿は大切な人…那月君の姿だった為に…唇から名前が零れてしまった。
「はい。僕ですよ?」
「…えっ?」
「会いたかったですっ」
「…那月…君」
「ハルちゃん。僕に会いに来てくれてありがとうございますっ」
「…えっと…」
ギュッ。
少し力強い抱き締め方で…暗闇を作り出しているのが那月君だと確認できた私は体から力を抜いていく。
 
「…皆さんが居るのに」
「皆、ハルちゃんに会いたがっていました」
「えっ?」
アイドルの恋愛は御法度。
会えて嬉しくて…沢山腕の中で微笑みながら名前を呼びたい思いを止めようと身じろぐと…考えてもいなかった言葉が聞こえてきた。
「撮影をしていました」
「…はい。その音で惹かれて…此処まで来ましたっ」
「でも…何かが足りなくて」
「えっ?充分…素敵でした」
「ありがとうございます」
少し力を緩めてくれた腕の中から見える景色で…スタッフの中でも影響力のありそうな人が近付いて来るのが見えて、私は一度深呼吸をすると姿勢を正した。
 
「君が作曲家?」
「はい。七海春歌です」
「なら、弾けるよね?」
「…えっ。あの…電子ピアノがあれば…」
「ハルちゃん。一緒に弾きましょうっ」
「ええっ」
突発的な流れで、大きく瞬きをして、現状把握をしたいと思っても…。
撮影終了時刻が予定より大幅に越えているのか…周囲には期待した瞳で頭を下げるスタッフの数が増え始めてしまって、流されるようにカメラに映らない位置に置かれたピアノの前に私は座る事になってしまった。
 
「ハルちゃん。いきますよーっ」
「…は…はいっ」
「頼むよっ」
「が…頑張りますっ」
突発的な事に弱い精神だけれど…。
青空の下でフワリと微笑む那月君に微笑みを返して見つめ合っていると…二人だけで演奏しているような感覚に包まれ始めた。
 
___楽しく。私と那月君の曲を…奏でれば良い。思いを込めて。
 
一度。
那月君に教わったみたいに手をニギニギとして、少し前にした時とは違った意味で両頬をパンっと叩いてから、視線で開始の合図を送った。
 
___♪
_____♪
 
今迄、沢山の曲を弾いてきた。
那月君と二人で練習もしてきた。
でも…まるで二人で作り上げる曲が…愛しい子供みたいに思えて…指に羽があるみたいに滑らかに動き始めた。
 
___楽しい。
幸せ。
愛しい。
輝いている。
 
これが撮影だと思えない位に集中して楽しんでいると…。
 
「最高だ!」
演奏が終わった後…まるでコンサートの後みたいに、周囲から弾けるような拍手の音が聞こえてきて…。
「ありがとうございますっ」
座っていた椅子から飛び上がるように立ち上がると、ペコリとお辞儀をした。
 
そして…視界の端では…。
那月君も同じように…お辞儀をしているのが見えて、顔がくしゃくしゃになる位に笑みが零れた。
 
 
 
その日の夜。
『ありがとうございますっ。流石ハルちゃんです』
ベッドの上で那月君は優しく包み込むように抱き締めてくれながら、私に感謝の言葉とキスを沢山プレゼントしてくれた。
 
__貴方の為に。
私が出来る事は何でも…贈りたい。

*pixivの方が先にUPしています。


『天界から聞こえる音』(カミュ春)
 
致し方あるまい。
小さく溜息を零して、窓から空を眺めつつ紅茶が入っているカップに唇を寄せた。
 
以前は…このような事態に陥ったとしても、冷静に判断して対応出来たものが…最近では感情を隠さずに表に出すようになっていた。
 
___それでも俺以外が、焦っている事に気付きはしないのだろうが…。
 
コンコンコンコン。
 
明日共に買い物に出掛けようと話していた予定が…一本の電話で崩れてしまった事を、どのようにして春歌に伝えれば良いか考えつつ、俺は通常の声色を使って返事をする。
 
「入れ」
「失礼します」
「…あのっ。カミュ先輩」
「ん?」
 
ノックを丁寧に四回鳴らして、俺の返事を聞いてから入って来る丁寧さは…親の躾の賜物だろう。
あの時…突発的な出来事であったとしても何故…俺は自宅へと春歌を迷わず攫って来たのか分からない。
付き人、秘密保持、多くの理由を掻き集めたとしても…結局は本能的なモノなのかもしれなかった。
 
「こちらに」
「はいっ」
 
俺が一言声を掛けただけで、まるで待てをさせられていた小型犬のような感情剥き出しの状態で春歌はこちらへと駆け寄って来た。
…が…。
パタパタ走り始めた春歌の頭には…手にしたトレーの上に置かれたお代わり用の紅茶など意識の端へと押しやってしまったのだろう。
 
「危ないぞ」
「…えっ…ああっ」
「…くっ」
 
自室で寛いでいた為、長い足を畳むように重ねていた状態から解いて素早く愛しい体を片手で抱えて逆でトレーを受け取った。
 
「…すみません」
「少しは落ち着け」
「…はい」
「まぁ…お前が俺に会いたくて触れたかったのであろう?」
「…うっ」
「くくっ」
 
本当に…春歌の行動は単純で…俺の意識を砂粒程も使わずとも分かってしまう。
 
___だが…それが良いと思えてしまうのは…恋の病なのだろうか。
 
「火傷したらどうする」
「…それは…」
「まさか、この俺に治してもらえるから良いと思ってはいないだろうな」
「……はい」
「愚かな事だ」
 
テーブルの上にトレーを置き、春歌を抱えたまま体を回転させて、先程まで座っていた椅子に腰を掛けて…。
愛しい体を膝上に、そっと…まるで空から降り注ぐ雪が陸へと降りるような優しさで座らせた。
 
「お前が怪我をした後、俺がどのように思うか…考えてみろ」
「…あっ」
「分かったか?分からないのならば…逆を思えば良い」
「…カミュ…先輩が…火傷…嫌ですっ」
「ならば、少しは落ち着け」
「…はい」
 
シュンと音が出るように、消沈する姿。
 
他の者相手ならば、心を動かされることも無いシーン。
常に冷静であれと教育されて、細かな分析もしていない状態の筈でも…体が勝手に動き…春歌の顎を指で掬っていた。
 
頬を赤らめて。
己の愚かさを反省している。
だが…また同じことをするだろう。
俺の傍に置いておかねばならない。
いつでも触れられる場所に居させなければ。
 
___手首を俺の片手に縛り付けたい程に…愛しい。
 
「お前を護ってやろう」
「カミュ…先輩」
「違うだろう?」
「…っ」
 
他の事には疎い体と心でも、今求められている事は分かっているらしい。
頬に薄く見えていた春の色が…顔全体に広がっていく。
 
「ク…クリスザード」
「春歌。何をして欲しい?俺の機嫌が良いうちに決めるが良い」
「…っ…き…キスを…」
「ああ。与えてやろう」
「…んっ」
 
甘い吐息が唇を重ねていると、春歌の鼻先から零れてくる。
その音は、天界から聞こえてくる曲のように…美しく、甘い音色で俺を魅了して心を捕らえていく。
 
「誰にも渡さん」
「…はい」
 
次第に体から力が抜けていく。
腕の中から零れないように強く抱き締めながら…甘く香る首元に強くキスを落として、背中へと手を滑らせた。
 
___春歌。お前だけを愛している。