図書館は返却義務があるので、また図書館に行かなくてはいけないというのもいい。
火星の次は何を借りようか~と、選んだのがタイトルの、「政と源」でした。三浦しをんです。
伊坂に比べてかなり読みやすい、さらっと読めてしまいすぎるけど。
三浦しをんの作品は他にもあったけど、この一冊を選んだのは、扉絵が良かったからです。
オールバックイケオジがいる(後にイケオジはハゲの方と知る)ため、わくわくしながら持ち帰りました。
……予想以上でした。
きみはポラリスとか所持してましたし、ネットでも評判は聞いてましたけど、ここまでとは。というかまんまと。
政が可愛くて、源がいいやつで。72?3?のおじいちゃんずですが、可愛いものは可愛いしかっこいいものはかっこいい。
挿絵がねー!また、いい。
扉絵で選んだだけあって、絵は好きです。
後半、若かりし頃の二人の絵もみれるのですが、そこでようやくきがつきました。
……このイラストの感じ、BL畑の人だな……?
BLの人でした。
二人には奥さんがいる(いた)し、今はもうお互いたたないんだろうけども、そういうんじゃないんですよ。
終戦後、「生きててよかった」と抱き合う二人が全てです。親より妻より長い期間を共にした、切っても切れない仲。
それがもう、唯一無二の二人が至高なんです……。
国政は元来の性格もあるでしょうが、年寄りにありがちな捻くれたところや、虚勢を張るところが愛おしい。もと銀行員でエリートだけれど、こと人間関係においては不得手なのも好みです。
源二郎は世間や常識に縛られない、自分をしっかり持った人で、けれど戦争によって家族を奪われた寂しさを抱えるどうみてもいいキャラ良い攻めです。大雑把だし家事はできないけど、人の事を良く見てる。人の心を、仲間を大事にするんです。
正反対として描かれる二人、そういうの大好物だから(東巻とか戌辰とかダンバジとか)
そりゃあ、はまる。
話も一話一話が適度な長さで、読書復帰勢の私には優しかったです。伊坂に比べてなんと読みやすいこと……(伊坂も読みにくくはないです。おそらく読みやすい部類)
政と源以外の登場人物もいいんですよね~!!徹平は誰が見たっていい奴ですよ。気が利いて思いやりがあって明るくて努力家で真面目で。こんな孫がほしい。彼女といちゃいちゃしてても「幸せになれよ!」と素直に応援したくなります。
以下お気に入りセリフ。
「また遊びにきてください」
国政と源二郎は、七十三年も幼なじみをやっている仲だ。喧嘩をしたいときにはするし、顔を見たくなったら訪ねる。これまでもそうだったし、これからもそうだ。徹平に言われるまでもない。
新参者のくせにお節介を焼く徹平に、国政は苛立ちを覚えた。だが、源二郎への独占欲と、変化を嫌う老醜をさらすのがいやだったので、
「もちろんだ」
と表面上はにこやかに答えた。
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「なんかこう、おまえが呼んでる気がしたんだ。七十年以上も付き合いがあると、専用の無線が頭の中に内蔵されるんだな、きっと」
(国政ぎっくり腰のターンは全部いい。「気がした」で雨の中やってくる源二郎も、ぽんこつ源二郎を見守り、それでも安心してしまう国政も、すごくいい)
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いままでは、「自分が心でも、離れて暮らす家族はもとより、幼なじみの源二郎ですら、なんとも思わないかもしれない。若い弟子に夢中だからな」などと、いじけたことを考えていた。だが、ぎっくり腰になって目が覚めた。いじけるのは、もうよそう。源二郎よりさきに死ねない。死にたくない。
国政は、なるべく長く生きて源二郎を看取ってやりたいと思った。もちろん源二郎は、町内に顔なじみが多いし徹平もいる。放っておいても、一人で死ぬような事態にはならないだろう。それでも、源二郎と同じ時代を生き、だれよりも長い時間を共有したのは国政だ。妻に先立たれ、血をわけた子どももいない源二郎を、国政までが置いていくような真似はできない。したくない。
(これを愛と呼ばずして何と呼ぶのか)
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徹平の申し出に、源二郎はやや気を惹かれたようだ。
「そうだなあ。政はどうする」
「遠慮しておこう」
正月の浅草寺など、疲れにいくようなものだ。人混みに揉まれて、ポックリいかないともかぎらない、拝みにいったのに、拝まれる立場になっては元も子もない。
「じゃ、俺も留守番する」
と源二郎は言った。
「なんでだ。おまえは徹平くんたちと行けばいいじゃないか」
「寝正月も乙なもんだからな。徹平、船を使っていいぞ」
(やや気を惹かれた源二郎があっさり俺も留守番する、という所が、国政のことよくわかってる)
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「どうせまた、ひがんでるんだろ。『娘と妻が、正月に誘ってくれなかった』とか」
図星を指されて心拍数上がったが、
「子どもじゃあるまいし」
と国政が平静を装った。
「そうか?」
源二郎はにやにやし、顎を掻く。「おまえの作ったチャーシュー、うまかったぜ」
「ななななぜ」
平成の砦はもろくも崩れ去った。「俺が作ったと思うんだ」
「だって政の味つけだから」
(歳をとると、取り繕うのもうまくなる。でも幼なじみには、源二郎には通用しない。最大の理解者。「だって政の味つけだから」は一番好きなセリフかもしれない)
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源二郎の家へ様子を尋ねにいきたいところだが、連日のように顔を出したら、「さびしいのか、政。ん?」などと、源二郎ににやにやされそうで業腹だ。
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メモするのを忘れてしまったのですが、国政は死んだ後も源二郎に会いたい、と願うんですよね。もうお前何よりも源二郎が大事じゃん……と思わずにはいられないわけです。
完璧に私の好みドストライクです。何度も言うけど挿絵がずるい。これ電子書籍や文庫版でも挿絵あるのかな。ないならハードカバーで買うの一択。それぐらいの破壊力。
源二郎がお嫁さんを強奪する時、国政の元を訪れるのですが、そのシーンが完全に、平安時代の姫の元を訪れる想い人のそれ。上げてるの御簾じゃなくて蚊帳だと思うけど。ディオ様に「夜這いじゃん」と言わしめるイラストでした。ありがとう。
政と源はいいぞ。個人的には月魚より好きです。世の腐女子読もう。