「口蹄疫・絆シンポジウム」第一部 基調対談

9月23日(木)13:00~16:00宮崎市JA AZMホールにて
食・農・環境 宮崎県民フォーラム 第9回学習会
      口蹄疫・絆シンポジウム
に参加して参りました。
以下、録音・撮影禁止でしたので、筆記メモを基に書き起こした会場の様子と参加者のやりとりです。24日宮日に詳細が載るということです。
できるだけ、客観的に書き起こしたつもりですが、県民故、事件・災害を同じくした人間故の主観・共感が出てしまったところもあります。
後半疲れて 何を聞いたかメモったか思い出せず、メモ書きのままのところもあります。すみません、ご容赦のほどを・・・。
 では、どうぞ。
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<宮日編集によるVTR>

◆子牛競り市再開:
価格が電光表示されると会場内から「おお!」の声
◆口蹄疫蔓延の経緯:宮日新聞記事より
◆埋却地の様子と養豚農家さんのコメント
:先行きが見えず不安  終息兆し見えず
:コスモスが優しく揺れている映像は、この地であったことを知らなければ秋の長陽をたのしむ一風景。知る者には、辛く複雑。
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<開会挨拶>宮日新聞編集局長 大重好弘氏

4ヶ月間徹底的に本県を痛めつけた口蹄疫。
8月末にようやく高千穂で競り再開で復興の兆しが見え始めてきたが・・・。

壮絶な闘いの記憶を風化させないためにも

後世に伝えていくためにも

このシンポジウムがその第一歩となることをのぞむ

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<基調対談「絆~ありがとう、学んだこと得たこと>

高山文彦氏:作家(以下 高)
口蹄疫が発生して、10年前と今回規模が全然違うのですが比較してどのように?

羽田正治氏:JA宮崎中央会会長(以下 羽)
その前にまず、心より御礼申し上げます。
今回の口蹄疫、県民のみなさん或いは全国のみなさんが支えてくださいました。
感心したのが、献金温かい励ましの言葉。500円、千円という募金をしていただきました。以前宮崎に務めておった、「ばさん(ばあさん)」と二人、入っている老人ホームから献金してくれた方。明日の生活が苦しい人からも献金をいただいた。これは決して忘れてはいけないことです。
今回の口蹄疫は想像していなかった。

これは天災なのか人災なのか。
台風のように天災ならどういう経路で日本に来るかわかる。口蹄疫は誰によってどのように宮崎県に運ばれたのかが見えないわけです。
地震でも何時間か前にわかる。余震が来て本震がくる。口蹄疫はつかめないのが本音。
多くのものを失った。同時に多くのことを学んだ。
それは、命、資源の尊さ、資源は無限ではない有資源であると。
きずな、人間共通の絆、資源との絆、業種をこえた絆、いろいろあった。

高:
「絆」という字は、半分半分ずつの糸を結び合って強いロープができるということをぼくは感じた。
強いロープで輪ができていく。
どこからきたのか、感染ルートは解明しなければ。
昨日も宮崎市内でタクシーに乗っていたら運転手がこうおっしゃる、「あれは水牛が悪い」(会場 苦笑)
あのチーズをつくっているところ、モッツアレラチーズ」とこしかない と言う。
東京のレストランミヤチクの黒服のあんちゃんも「水牛ですよ。」と言う。
どこに行っても「水牛が悪い」と言うんです。
だけど文藝春秋にも探求なさた獣医師のせんせいは
「(水牛ルートは)ありえない。」と。
それよりもっと前に問題を抱えていた”あー”農場があるわけです。
川南の人も言います。
なぜジャーナリズムは”あ”の牧場のことを書かないのか、と。
”あの”と言えばこう会長もおわかりになると思うのですが(羽田さん他 ずっと笑)こういうと公正を欠くけれど
あんなに、ずるがしこい 自分たちで こういう問題(口蹄疫発生)がわき上がる前に 殺処分して 埋めとったっていうのに。
この問題について、
県は追求しないし、
保証金だけもらって、かなり組織的に・・多額の保証金を受け取ってという現実があって

噂の中では水牛農家の方は最大の悪者になって。
これを是正示さないと 彼はこれから水牛を養って東京やら大阪やらに出荷していたものができないわけです。
風評被害が個人に対してきている

ぼくは、口蹄疫を「災害」だと言ってしまいます。どこに怒りや哀しみを・・・。
見えかたがどこにあればいいのか。
それが、水牛農家にあつまってくるような気がする。
あれだけ時間がたっているのに、この噂だけが語られ続けるのが奇妙な・・感じがして。

羽:
情報のありかた。確信にのっとった情報じゃない間違った情報が裏情報として回ってくる。
確証がつかめないまま、人間は何かを信じたいというのがあるのではないか。
大きな原因は、動物生理と、過度の経済を追うことでマイナスの要因をなるべく公表しないでできれば黙ってできることなら隠して被害をとめようというところにある。
でもいけない。すべてを公表して信頼をもらわなければ 大きな問題が出る。
農業の基本の面は

命を大事にする
人をだまさない

金儲けのために、農業をするというやり方は破綻する。

高:
えびのにみんなで集まって、「どうなっちょっちゃろうか。」と話した。
3月のはやいうちに 川南の大農場から牛を満載したトラックが来た。
えびのからも一頭の牛を乗っけていく。
「どうするとね。」ときくと「大阪方面の屠場に持って行って処分する」と言う。
口蹄疫がまだ問題になる前の話。
疑いのある牛を秘密裏に屠場にいって埋めておる。
綾町の問題・・・・いろいろ書く側は、それを立証できないんです。悔しい思いをした。
経済効率を優先するのが農業にとっていいのか。

ああいう牧場だと 餌はどれくらいくわせればいいのか。
一戸一戸の農家の方は、それなりに真心込めてやってるようだが。
投げ込んで金儲けをする方との間には、共犯(共存?)関係は成立しないはず。

脱線するが、最近の尖閣諸島のことを、2・3日、テレビは経済効果が下がる話ばかりする。
もっと語らなければ大事なことがあるはず。

羽:
バランスの上に成り立っていて、それが崩れたときに問題が起こる。
人間は経済性を追求する。自分の都合のいいように進めていく。企業の農業も大切だが。

発見が遅れる。なぜかというと少ない人数で多くのものを養うと目が届かない。
発見できないことがある。 
発見しても伝えない。
口蹄疫の恐ろしさを知らない。
無知がおそろしい。
また無知を利用する経済の甘さ。
仮に東京に従業員がいて、現場と地域が行動するのに、連携がない。
東京からの指示だけで動く。
金、金、金。
最小限のモラルがぴしっとないと。

高:
学校現場、会社などモラルハザードの問題が。たとえば挨拶ができないなど。
物を失い・・・豚さんたちは、モラルハザードの最終的な姿を我々人間に見せてくれたのではないかと。
川南、町を歩く姿も見えない。まるで戦争が起きたのかというような様相。
自衛隊が入ってそこら中に白い石灰。 児湯に真空地帯ができたのか、と思うくらい。
何もできない。
生活の支えの牛豚の世話もできない。
殺処分の時の強烈な悲しみをこう語った方がいる。

「人間の 勝手で生まされてきて 人間の勝手で殺されていく。
こんな勝手が許されていいんですかね?」


被差別部落で、自分自身が部落なのに自分自身が部落を差別していたというのがある。
口蹄疫の殺処分をされた方の気持ちも似たようなものがあるのではないか。すごい矛盾。
ワクチン接種後でも(死に逝くことがわかっている)牛や豚に餌をやる。 凄まじい哀しみの中に人は投げ込まれていく。
作家としてそれに強烈な感動を覚える。
人間はこのような苦しみを生き抜かねばならない。
たくさん泣きながら語られた方がいらっしゃった。

そういう苦しみ・哀しみをきちっと書いてお伝えしていくことが文学の使命だと思った。

羽:
地球上に今100万種の動物。毎年、4万種が消えてゆく。
バランスが壊れてたとき生活がおくれない。生きるために、みんな生き物を食べている。
何千年の時空を越えて今日を迎えているから そういう命を口にすることができる。

口蹄疫は悪の細菌も生きていかねばならないわけ。だから出てくる。そのメカニズムを問うことによって共生を描いていく。現象の裏側にあるものを捉えていくことが必要。

高:
循環型農業。30年くらい前、気仙沼の畑山さんがたくさん生じた赤潮の原因を探そうとした。山が原因か。山なくして海は存在しえない、海なくして山は存在しえない。そうやって植林を続けている。
それは、畑山さんがつくった「物語」。
「物語」を食べると、食べ方が変わってくる。理解して食べる、ということが大事。

羽:
温かく環境のいいところが宮崎のいいところ。
いい環境は技術ではなく、料理で言うと隠し味は愛情。
農家の方は
一頭一頭観察しながら
一頭一頭 えさをやるとき
「おい、元気か」
とききながらやる。
ピーマンもキュウリもそうです。
相手が物言わなくても愛情を込めてやる。

大型農場は、「どうせ 殺処分するものには えさをやらない」という。

農家さんは
「ごろうさん、ありがとう。」
そうして最高のえさをやって別れを告げる。
・・・この論理がわからなければ 農業者とはいえない。


つねに農業者は「命」と対峙する。
科学や技術だけではない。

高:
ゲンゴロウ、タガメやらおらんなった。高千穂では”ちんぽはさみむし”(会場 笑い)みんななんて言います? ”ぼぼくじりむし”(会場 笑い)
でかい声で言えんけど。

羽:
40年前、雨が降ると 不思議なくらい田の中にフナ、ドジョウなどがあがってきていた。
今、別世界。田んぼの中にせびれが見えた。人間がかえてしまった。

高:
(高千穂の方が)「きれいな水しか、延岡に流しとらん。」
と言ってます。
延岡の人たちは高千穂の棚田の米を買うて食わないかん。(会場爆笑)
「どしてん、食わんというなら、上から公害を流す。」(高山さん笑)
50kmの一本の川。川一本で海が死んでしまうことがある。
だから さっきの気仙沼の話のように循環を意識しないといけない。

自分たちのものを商品化することもいる。
川南にホルモン屋があるけどいっつも閉まっている。肉を出す店がない。畜産やってるのに。
外に出すばっかり。
久留米に「ビッシュ」と「ダル」という商品がある。あわせてダルビッシュ(会場笑い)
独特の部位の名前を付けて名物として売るのもいい。
ホルモンなんて「ほおる(捨てる)もん」という意味ですよ。
それを売り出した。

挫折して、他のもので再興しようとしても乗り越えられない。蘇れない。

畜産で挫折したなら、畜産で取り返す。

誇りを取り返す。

それが再開の(再興)の道。周りで心配して見ている人たちに感動を示す道。

羽:
宮崎は、工業に近い畜産。
買った餌をやる。経済効率としてはいい。
宮崎は今、120万頭。年間餌になる穀物180万t(一年間)をブラジル アメリカから もってくる。宮崎の農地は7万haある。米を作ったら500kg 35万tしか米ができてない。今10万t。18年間分を。牛・豚が食べている。
脱皮していかんといかん。
外国の部品を組み立てないで、国産部品を、宮崎部品を組み立てていかねばならない。
価値あるものを、どうつくっていくのか。1kg100円のものを1kg1000円で売らないとたちいかない。その中で、宮崎方式をどう組み立てていくのか。

高:
餌が口蹄疫のルートの一つにあげられる。
中国から餌がくるが、中国にちゃんとやれと言ってもちゃんとやらないでしょう。
92戸再開断念、1300戸のうち。かなりの広さ。

羽:
こうしゅうもの(?)に移行していただきたい
差別化商品で生き残ろう。
しかし 外国部品をつかうとまたいつか悲劇がおこる。
宮崎部品をつくる。宮崎全体の知恵を絞れば出てくるかもしれない。

高:
おとり牛 最後は処分するんですか?

羽:
処分はしません。不安だからおとりを入れるということ。
もし(口蹄疫が)出たらどうするのかは考えてない。
もし出たら宮崎は終わりですよ(会場もお二人も爆笑)」
誰が飼っても安心だということにしないといけない。
私は賛成ではないが、農家が安心して次のステップにいくということでいいだろう。おとりは絶対に口蹄疫に罹らないという前提で入れている。

次は農家だけの問題ではない。
宮崎県には次なる再興はない。

完全に近づけて次のステップにいかないと、
29万頭の命を弔うことにはならない。

高: 
ラグビーの川南は、大分チームに三連敗してる。外出できない、練習も集まれないからできない。
やっと先々週に試合があって三倍の大差で勝った。練習もできなかったのに。
(9月)26日 北九州のバーバリアンみたいなどう猛なチームらしいですが。笑あたります。 
チームの中に農家が二人いて、殺処分にあった。
することないから他の農家さんのボランティアで、殺処分に関わってきた。

農家の苦しみを知っている。負けてたまるかという気持ちが強い。

哀しみが全部背中にのった、魂のタックルをやっている。

ぜひ、見に来てください。


羽:
向かっていくエネルギーをつくっていかんと。
農業が基礎的産業であること、食は万人共通の課題。
全国のみなさんが心を寄せていただいたということで
宮崎の可能性は、まだまだたくさんある。

高:
国原さんが辞めても頑張りましょう。(会場大爆笑)

どんげなるとですかね?

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高山氏、絶好調だったのですが、いいのかな?
ラストは椅子から立ち上がって なお 話していた大きな独り言でした。