以下の文章は2015年に英国松濤會 原田満典先生とお会いした後に書いた日記を一部加筆訂正したものです。

追悼の意味を込めて記しておきます。

 

(以下 日記より)

 

原田先生から「幻想でなく現実を観よ」と言われた気がする。

 

世の中には自分が経験したでもない先人のエピソード、それも下手すると話し手が加工し誇大化したおとぎ話を熱く語る人が多い。

 

勿論、私自身もそのような傾向があることを自覚しているが、その様な憧れはともかく自他を同一化して下駄を履かせるようなことは稽古には何の役にも立たないと言うことだ。

 

おとぎ話を話したがる人はそのおとぎ話で何かの効果を得ようとしている、もしくは利得を得んと考えている。

 

超絶の技巧があることは間違いないし認めるが、だとしても所詮は「人のやることですから」、原田先生は某先生門人が「△△先生はまるで天狗だったそうですね?」と言う問いかけにそう答えていた。

 

他にも「○○先生は如何に達人だったか、偉大だったか」と言う問いかけなのか自慢話か分からない話に「いや、私は○○先生と直接稽古しているが、あの先生はここはイイがあそこがいかんのです」と言うように「あくまで人間、完ぺきではないんです」と言うことを何度となく仰っていた。

 

ご自身のことも「私は何とか組手だけは示せるけど、所詮は年寄りです」とあれほどの技量を示されているにも関わらずそう謙遜されていた。

 

信者に崇拝され、それに応えようと荒唐無稽ばかりな説教ばかり話すような大先生の幻想ばかり追っていては地に足の着いた稽古は出来ない。

 

先達の偉業が現実と感じられる様に稽古を進めたい。

 

(以上)