5周目も うまく走れず 追試験~第12回利尻島一周悠遊覧人G完走記8 | 神社仏閣旅歩き そして時には食べ歩き

神社仏閣旅歩き そして時には食べ歩き

還暦を過ぎて体にトラブルが出始めて、ランニングを楽しめなくなりました。近ごろはウォーキングに軸足を移して道内の神社仏閣を巡り、御朱印を拝受したり霊場巡礼を楽しんでいます。いつかは四国八十八ヶ所巡礼や熊野詣をすることが夢です。by おがまん@小笠原章仁

(8)耐える


 残すチェックポイントは2つ。徐々にゴールも近づいています。あとひとふんばりです。レース前に掲げた2つの目標。イーブンペースで走りきることも、余力を残すことも、もはや望めそうにありません。でもせめて、「その代わりに自己ベストは出せたから」と言えるようにはしたいところです。


 45km地点の通過タイムは4時間57分58秒。今の状態で残り10kmを62分というのはかなり難しそうです。でもなんとか自己ベストは出せそうです。この間の5kmは36分41秒です。キロ7分を超えていますが、この前の5kmよりはちょっと速くなっています。


 あらかじめ掲げた2つの目標はサロマを見据えたシミュレーションとして考えていたのに、ついつい目先のタイムに目がくらんでしまい、6時間切りが難しくなった今となってはどっちつかずのレースとなってしまいました。でもこのまま終わらせるわけにはいきません。何かひとつでもサロマに向けて実りあった思えるようなレースにしないといけません。


 今は苦しいとき、耐えるときです。サロマはさらなる長丁場ですから、こうして苦しむ場面、耐えるべき場面はもっともっと多いはずです。ここ数年は、そうした苦しみに耐えきれずにリタイアの憂き目を見てきました。


 よし、今こそこの苦しみに耐えきる訓練をしなきゃ。こうした苦しみを感じながら走る練習なんて、本番までもうする機会がないでしょう。これもせっかくのチャンスです。こうした苦しみに襲われたときにいかにして耐えるか。いかにして耐えてペースを維持するか。そのように粘るためのいい練習となります。


 一瞬たりとも気を抜けません。気を抜いた瞬間に足は止まり、気力は萎えてしまう。それはこれまでサロマで何度も味わったことです。同じことを繰り返してあとから後悔することはまっぴらです。残りはたったの10km。耐えられないようでは話になりません。サロマでは20kmも30kmも耐えなければならない場面もあるかもしれないのですから。


 45kmを過ぎると、距離表示は2kmおきとなります。47km地点は5時間11分42秒で通過しました。この2kmは13分44秒です。わずかですがキロ7分を切っています。


 まもなくすると第11チェックポイント(47.9km地点)に到着しました。わずかな尿意を感じていて、トイレに寄るかどうか迷ったのですが、迷ったときは寄ってしまった方がスッキリとして走れます。6時間切りが難しくなった今、トイレの時間をケチるより、心が折れそうになる要因になりかねないものを取り除いた方がいいでしょう。


 トイレから出てきてから、コールドスプレーを膝と腰に入念にかけてからリスタートします。このチェックポイントのあとには、野塚岬に向かう上り坂が待っていますから。


 上り勾配のついている覆道の中をゆっくりと走ります。上りは歩く作戦を実行してもいいような勾配ですが、利尻の55kmは上りは歩く作戦を採用せずに走りきりたいと思っているコースです。


 終盤になって天気がよくなってきたこともあり、気温も上がっているようです。それだけに、覆道の中はひんやりとして気持ちよさを感じました。49km地点は5時間27分37秒で通過します。この2kmは15分55秒です。トイレロスがあり覆道の上りがあってのこのタイムは上出来でしょう。でも足はますます動かなくなってきています。


 野塚岬をぐるっと回って下っていくところは、正面に利尻富士が美しく見える場所です。2年前はここで沖縄から参加していたKさんと、洞爺湖マラソン以来の再会を祝って記念写真を撮った場所です。(そのときの写真です)


Road to SAROMAN BLUE-4年ぶりの再会


 でも今年は、利尻富士すら見る余裕はありませんでした。


 苦しくて苦しくて、足が止まりそうになります。どうせゴールはできるのだからと、足を止めたくなる衝動に襲われます。でもここで頑張らないとサロマへの展望が開けてきません。ただゴールをすればいいわけではありません。ゴールは終わりじゃなくてまた次への始まりなのです・・・どこかで聞いたようなフレーズだな?


 道端にはおなじみのリシリヒナゲシが咲いています。例年はこのあたりで写真を撮りましたが、足を止めると走れなくなるような恐怖感があり、今年は撮影を断念しました。


 やっと51km地点に到達します。5時間44分01秒。この間の苦しさを象徴するかのように、16分24秒もかかっていました。


 でも、残りの距離は5kmを切りました。遠くに見えるペシ岬がなかなか大きくならないのがもどかしく思えますが、足を動かしている限りゴールは確実に近づいてきます。


 最終チェックポイント(52.4km)が見えてきました。このチェックポイントからゴールまでは3km(2.6kmじゃありません。コース図に書かれている距離は、3kmなんです)です。あと20数分走り続ければ、ゴールがやってきます。


 最終第12チェックポイントでいったん足を止めました。スポーツドリンクで口を浸し、エイドの方々と言葉を交わして呼吸を整えます。でもどんな話をしたのか覚えていません。かなりギリギリの状態になっていたようです。


 「いってきます」


 空になった紙コップをゴミ袋に捨てて、私はチェックポイントを後にしました。(つづく)


(9)ゴールするへ



(1)2つの目標

(2)今年もうにぎり

(3)スタートする

(4)大休止する

(5)先を急ぐ

(6)計算する

(7)失速する