Serenade(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「津村さんが全てを知った上で萌香のお母さんに会いたいと決心したということは。 それを受け入れたい、と思ったからではないんですか。」


斯波は自分が直感したことを思いきって彼にぶつけた。



「・・・一度は。 もう叶わぬ思いだと諦めました。 彼女とは同じ道を歩いていくことはできない、と。 一人息子だったぼくは親に逆らうことができなかった。 若かったとはいえ、男としての責任を取ることができなかった・・・。もう後悔以外の言葉が見つからない。 そして・・・今日、彼女に会って。 やっぱりどうしても・・・諦めきれない気持ちが蘇って・・・」




津村は正直すぎる気持ちを吐露した。



そこに萌香が戻ってきた。



「お母さんは、」


斯波が声を掛けると



「・・帰りました。 落ち着いていたように見えましたけど・・・。 やっぱり少し動揺しているようでした。 もう・・津村さんとは生きる世界が違うようなことも・・・言って。」



津村は顔を上げた。


そして



「・・・またこうして出会えたことに。 絶対に意味があると思って。 ぼくはこのまま静香とまた別れる気持ちはありません。」


きっぱりと萌香に言った。


「・・津村さん・・・」


彼の思いは自分が思うよりずっとずっと強い、とひしひしと感じた。



「・・・母は。 一度も結婚をしていません。 自分が知っている限りでも・・何度か他の男性からそのような話はありましたが、『結婚はいい、』と言って全く考えていなかったようです。・・今思えば。 母の心の中にも津村さんのことは大きく残っていたのかもしれません、」



萌香は静かにそう話した。



母を捨てた人だと思うと


憎いばかりだと思っていたけれど


彼の人柄を目の当たりにすると、すべてがその時の運命だったような気がして


たぶんこの人も傷ついて、悩んだんだろうと思うと


自分の父親だと思う以前に母を純粋に愛してくれた人として穏やかに見ることができた。





斯波と萌香が帰宅したのはもう深夜だった。


翔を南に預かってもらっていたので、ゆっくりと戻っては来たが。


「・・・・母は。 幸せやって思ったころがあったんやろか。」


イスに腰掛けながら萌香はつぶやくように言った。



「・・たぶん。 津村さんと愛し合ってたころが・・一番幸せだったんじゃないかな。」


斯波も彼女の正面に座った。


「母も。 父親のない子として生まれて。 母親は行方不明になって。 物心ついたときから施設で育って。 ・・ほんまにひどい母親やって思っていたけど・・・・。 このまま母がこの人生を終えるのかと思うと。 なんだかやりきれない・・・」


それは心からの気持ちだった。




そのころ。


津村は大きな決心をしていた。





「ああ、祐二・・。 帰ったんかいな。」


京都の自宅に戻ると、待ちかねていたように母親がやって来た。


「この前の。 右京さんから頂いた見合いの話やけどな。 年は30で、お花の先生をしてるお嬢さんで。 後添えでも構わないって言うてくれはるんやて。 ・・そろそろお返事を、」



母はこの頃見合いの話をちょくちょく持ってくる。


自分が年老いてきて、『椿屋』の跡取りが心配でならない様子なのだった。



自分はまだ49で。



妻を亡くして4年がたち、周囲も再婚を望むようになった。


跡取りを産める若い女性ばかりを探しては話を持ち込む母に最近は嫌気がさしていた。



もう結婚は


考えられなかった。




妻が亡くなったことで、自分の気持ちの中にひと段落がついたのも事実で。


そして


静香に再会して


さらにその気持ちが強くなった。




「その話なんやけど、」


津村はネクタイを緩めて母にあらたまってそう言った。



女としての幸せを経験したことがない母の寂しさを萌香は思い知ります。 そして津村は・・



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