Procyon(15) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「そっか。大変やったんやな、」

 

「まあでも。なんとか頑張れそうやったで。」

 

初音はその晩赤星から電話をもらった。

 

「・・みんな。いろいろあるよな。」

 

赤星の言葉に初音は一瞬黙りこくってしまった。

 

「ほんまやな。」

 

そしてひとりごとのようにつぶやいた。

 

 

ゆうべ降った雪がまだ残っていてそれをかき分けるように鎌で白菜の根元を手際よく切る。

 

それをコンテナにどんどん詰めて。

 

 

両親も

 

風太も

 

祐奈も。

 

そして真緒さんも。

 

 

結婚生活は苦いものだった。

 

愛し合った者同士が一緒になって家族になって

 

子供が生まれ家族が増えて。

 

そうやって命を繋いでいく人間の本能みたいなものだと思っていた。

 

感情とかそんなものはあとからついてくるもので

 

それが簡単だとか難しいだとか全く考えることもなかったけれど

 

他人が家族になることは思ったよりとても難しいもので。

 

みんなそれぞれの理由で家族を解消した。

 

傷つきながら。

 

 

初音は自分の臆病さが本当に嫌で。

 

何も考えずに飛び込めない自分が本当に嫌で。

 

気がついたら

 

こんな人間になっていた。

 

 

 

「・・現地に行った時にもうすぐに本題に入れるようにしておいたので。そちらの資料も読み込んでおいてください、」

 

初音からの電話で真緒はぼんやりとしてしまった。

 

「真緒さん?」

 

「あっ、す、すみません。わかりました。」

 

あれから

 

何とも言えないモヤモヤが一日中あって

 

 

それがなんなんだ?

 

という父の声がそれをかき消し、そしてまたモヤるの繰り返しだった。

 

気がつけば一日中初音のことを考えている。

 

電話をしていても

 

どうしよう

 

どうしよう

 

ばっかりで。

 

それは彼への思いがさらに加速度を増していくことに自分でも気づいていたから。

 

 

 

リビングに行くと、なぜか天音がひとりで食事をしていた。

 

「あれ?またいる・・」

 

真緒は思わず言ってしまった。

 

「あ。すんません。今日社長夫妻は出張中なので。お手伝いの美和子さんがもうめんどくさいからこっちで食べたらどうですかとか言うもんですから。」

 

「もう完全に我が家になじんでるね、」

 

おかしくなって笑ってしまった。

 

「ほんま。こんなすごい会社の偉いさんのおうちなのに。こんなに伸び伸びさせてもらって。申し訳ないです。」

 

「て、わりには。めっちゃ食べるね、」

 

「メシ、めちゃ美味いんですもん。」

 

子供のように笑う彼に

 

「天音くんは。彼女とかいないの?」

 

真緒は向かいに座ってペットボトルのお茶を飲んだ。

 

「は?おれ? まあ・・こっち出てきたばっかのころは。バイト先の子とつきあったりとかはありましたけど。半年くらいつきあったときに調律の仕事で2か月くらいずうっと名古屋の方に行かされた時あったんですよ。けっこうそういうの多くて。自然に別れたり・・。まあ金もなかったしね。」

 

何でもないように言う彼に真緒は少しだけ首を傾げた。

 

結婚の難しさを知り初音はさらに臆病になりそうで・・

 

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