「もっと。自信を持っていいんです。まあ・・結婚生活もいろいろあって傷ついたりしたでしょうけれど。恐らく元旦那さんもあなたのことが嫌いになったわけじゃない。・・とても人間的魅力がある人だと、思ってます。」
真っすぐに目を見て言われて、身体の中からカーッと熱くなるのがわかった。
「・・は、初音さんは。なぜ・・あたしにこのピアスを下さったのですか・・」
やや俯いて目を逸らしながら聞いた。
「え、」
「あたしが。ホクトの娘だから、ですか。天音くんのことがあるから、ですか。」
頭で考える前にどんどん溜まっていた言葉が出てきてしまう。
初音はやや驚いて固まってしまった。
「や、こんなこと。考えたりしたら申し訳ないなって思っちゃうんですけど。なんだか。急にそんなこと考えてしまって。初音さん・・いつも優しいから、」
言ってはいけないことなのかもしれないけれど真緒の口は止まらなかった。
初音はふうっとひとつ息をついて
「・・ぼくは。最初からあなたのことを仕事仲間として『対等』に見ていましたよ。北都のお嬢さんだからとか。そういうことではなく。あなたのセンスが素晴らしくて。こういう仕事にぴったりなんじゃないかって・・思ってました。真緒さんのパリ時代のカフェブログも全部観ました。どれも僕が好きなものばかりだった。逆にそんな風に思われていたのかと思うと。・・残念です、」
「え・・」
真緒は呆然としてしまった。
初音は彼女から視線を落とし、食事を続けた。
それからは。
会話がなくなってしまった・・
あ~~~
バカバカ!
何であんなこと言っちゃったんだろ・・
部屋に戻った真緒はもう自分を責めるしかなかった。
ベッドにうつぶせに寝ころんだ。
でも。
そっと耳のピアスに触れた。
すごく嬉しかったけど。
急に不安になってしまって。
彼の優しさが。
『あ。社長の甥っ子さんなんですか。すみません、急に人が入るって聞いたからびっくりしちゃって、』
『この音楽配信アプリの企画開発チームは若い人ばかりだから。野々村さんもすぐに溶け込めますよ、』
『有希子専務の息子さんですか。似てらっしゃいますね。』
あの時の疎外感を初音は思い出してしまった。
伯父に乞われて借金のこともあって重い腰を上げて上京。
高野楽器の企画開発チームの一員になった。
会社員経験のない自分にいきなりそんな仕事が務まるのか、と不安がなかったわけではないが。
それでも不思議にやっていける自信はあった。
それは今も不思議だった。
初音に褒められて嬉しいはずなのに真緒は逆に懐疑的になって思わぬことを口走ってしまいます・・
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