観た映画 2021年6月 | BTJJ

BTJJ

リハビリの為のタイピングブログ

■2021年6月に観た映画

21本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・エイリアン2 (原題:Aliens) - 3.2/5.0 (Blu-ray/2021.6.29)

監督 脚本:ジェームズ・キャメロン。1986年。1作目が好きだったので続いて鑑賞。シリーズ毎に監督が変わっているのですが2は、「ターミネーター」「タイタニック」「アバター」のジェームズ・キャメロン。まさかとは思っていましたが137分の長尺作品。正直117分だった1でもかなり序盤にダレたのに大丈夫かなと思っていたがマジでダレにダレた。90分で済む事に137分もかけるな。まず初作もそうだったがエイリアン登場までに1時間以上もかけないで欲しい。見てられない。ようやく出て来ても何だか小出し感が否めないしが終始続く感じ。クライマックスの胴体真っ二つからの宇宙に吸い込まれるかの悶着シーンは面白かったがそれだけ。そのテンションで90分にして走り切る様な作品が観たい。3もフィンチャーなので不安。観るけど。

 

・逃げた女 (原題:도망친 여자 洋題:The Woman Who Ran) - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.6.29)

監督:ホン・サンス。2019年。日本公開2021年。(局所的に)話題のこちらを。ホン・サンス作品は初めてでしたがかなり独特な表現だなとまずは感じた。フィックスの長回しでキャラクターを捉え内情や事情をじっくりと描き(逆にそれだけしか無いとも言える)、カットの最後にはあからさまなデジタルズームをウィーー---ーンとキメる。77分の中に3人の女性と主人公女性の物語を紡いでいく。3つに章立てられた作劇は非常に分かり易く主人公の所謂"心の、自身の解放"へと繋がっている。最後のエピソードで主人公がミニシアターで映画を観るシーンがあるが一度立ち去ったその場へ戻り("事後"の状態で)もう一度スクリーンを見つめた姿からのスクリーンへパンしそのままエンドロールへ移っていくラストカットは、ギョッともするし何よりもハッとさせられる見事な映画館体験だった。ちょっと違うかも知れないが「街の上で」の様な"何を見せられているんだろう映画"の系譜を感じた。というか、今泉力哉がホン・サンスを好きなのでは?と思うくらいだった。77分でも若干のダルさを感じたのでとっつき易いかと言われると全然そうでもないと思うが好きになりそうな気もするので他の作品も見てみようと思う。

 

・夏への扉 ―キミのいる未来へ― - 3.2/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.6.28)

監督:三木孝浩。脚本:菅野友恵。原作:ロバート・A・ハインライン。2021年。原作は1956年に書かれたSF作品。アトロクの課題作品になり鑑賞。タイトルを聞いて嫌な予感、メインビジュアルを見て嫌な予感、予告を見てさらに嫌な予感。かなりげんなりしながらも見て来ました。うーん、これどうしたらいいのでしょうか。まず大きく言いたいのは、一番のオチというか話の核となる部分の辻褄が合わないのはいかがなものか。最初に見せられた95年3月8日の事件で車が動いたり家が爆発したり、と結末が既に起こっていたのなら(清原果耶ちゃんが観た車から降りてきた人は?)未来はもう"(この映画の中でいう)良い結末"に勝手に向かっているはずなのに山﨑賢人演じる主人公が"そうなる様に"再び歴史改変をなぞっていくのをただ見せられるのがイマイチ意味が分からなかった。もう既に解決している件を"こういう風に解決しましたよ"と魅せるために観客をミスリードした(清原果耶ちゃんが死んでるとか)と捉えれば良いのでしょうけども、そうだとしてもわざわざ"まあそうなるでしょうね"みたいな事を復唱されてもあまりテンションはあがらないよなとは思う。し、あんなに一生懸命歴史を換えるために頑張った主人公の頑張りとは?となってしまった。救いは藤木直人演じるロボットとの良いバディもの風になったのは案外良かったと思うし、猫がかわいいのは最高。95年3月8日のシーンで車が動き出すシーンは最初猫が運転したのかと思った。あとは描写とか、作劇とか、表現とか、子供向けレベルでけっこう全体的に鼻につくうすら寒い感じだった。
 

・キック アス (原題:Kick-Ass) - 3.6/5.0 (Blu-ray/2021.6.27)

監督 脚本:マシュー・ヴォーン。脚本:ジェーン・ゴールドマン。2010年。過去作鑑賞。クロエ・モレッツちゃんが可愛い!というのはまず言えると思うのですが、ちょっと期待し過ぎたかなという感じだった。序盤の見どころであるヒットガールとビッグダディの登場シーンは残虐描写含め見事な画とテンポ感でテンションが上がったのですが結構その先はずっと中だるみ感があってノリ切れなかった。キックアスである主人公は(ヒーローとしては)何も達成しないままトントン拍子でヒロインと付き合って自信もついてなんだか良い感じ的になっていきましたけど、これって実はそここそがメインテーマなの?とも思えてくる作り。根暗でさえない奴でも、ヒーローというスーパーな存在になんかならなくても内面をわかり合って理解をし合えばカワイこちゃんともくっつけちゃうよ!という肯定的な話なのかな。よくわかんないけど。主人公も勿論マジで何もしてない訳ではなく彼なりに努力はしているので自動的に良くなって行っているわけではないのでそういう解釈でもいいんだよなあとも思う。ただ映画内の活躍としてはキックアスが活躍するというよりもヒットガールが大活躍するお話だったので何だか肩透かしを食らった様な気分で見終わった。

 

・アメリカン ユートピア (原題:DAVID BYRNE`S AMERICAN UTOPIA) - 4.3/5.0 (伏見ミリオン座/2021.6.25)

監督:スパイク・リー。2021年。ようやく観られたアメリカンユートピア。複数日に及ぶライブショーを切り取り一つのライブ映像にしているのでライブ映画というよりは音楽を題材とした映画作品と捉える事も出来ると思う。トーキングヘッズ時代の曲たちも、勿論アメリカンユートピア収録の曲たちも、今回のフィジカル一つでの表現が見事にハマッていて、バンド表現ではない身体表現で行う今回の演目に為に作られたのかな?と思えるほどの完成度、シンクロ率でひたすらに気分よく見られる映像作品だった。楽器のマイキングや照明、演奏自体"これどうやってんの?"と思うような部分もたくさん観られ、全曲刺激的だった。クライマックスに近づくにつれてスパイク・リー味も濃くなって行きラストの2曲では、音楽の役割とか、生身の人間が人前で表現をする事とか、他者とのつながりとか、そもそもそういった事に対する希望というか(コロナ禍を通過中の我々なら特に)、に激しく揺り動かされてちょっと涙が出るほど良かった。エンドロールの気の利いた感じも鑑賞後さわやかにクールダウンさせてもらった。劇映画ではないので何とも言えませんが、エンタメやカルチャーを信じる僕らが2021年の今観る事を考えると圧倒的に素晴らしく今年ベスト級だなと思わざるを得なかった。素晴らしかった。

 

薄氷の殺人 (原題:白日烟火) - 3.9/5.0 (U-NEXT2021.6.25)

監督:ディアオ・イーナン。2014年。ディアオ・イーナン作品は初鑑賞。話は何だか煙に巻かれる様なフワッとした不思議なテンションでしたが、何よりもそれを支える描写が素晴らしかった。カメラワークの妙か非常にクールかつミステリアスな画面で終始貫かれる、所謂"映画的な"、言葉で説明せずに画で説得力を持って見せていくのがとにかくかっこよかった。どういうお話だったのかと問われるとちょっと難しいのですがこういう観方もこの監督の作品に関してはありなのかなとも思った。

 

・ホドロフスキーのDUNE (原題:JODOROWSKY'S DUNE) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2021.6.24)

監督:フランク・パヴィッチ。2014年。デヴィッドリンチ版('84)は鑑賞済み、今年の暮れにはドゥニ・ヴィルヌーヴ版の公開が控える「DUNE」。本来であれば最初に製作に取り掛かっていたのはホドロフスキーで、製作が中止になってしまった幻の1作を追ったドキュメンタリー。本人インタビューをメインに、その「DUNE」が未完にも関わらず後のSF作品や芸術に与えた影響の大きさや、各出演者や裏方の決まっていく過程の裏話、などを交えながら進んでいく。正直、役者が云々の所は微妙というかあまり興味が持てなかったのですが、やはり製作陣や、ホドロフスキー本人のこの作品にかける情熱などの部分には非常にクるものがあった。特にラストの、晩年を迎えたホドロフスキーがまだまだ表現者として枯れていない、滾っている、という事を刻々と話すシーンは今作で一番の見どころの様に感じた。デヴィッドリンチ版を沈んだ状態で見に行ったが見ながらクソ過ぎて段々元気が出てきたというエピソードは知ってはいたのに話している本人の姿がイキイキし過ぎていて面白過ぎた。

 

・おとなのけんか (原題:Carnage) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.6.24)

監督:ロマン・ポランスキー。脚本:ヤスミナ・レザ。ロマン・ポランスキー。2012年。ロマン・ポランスキー監督作品初鑑賞。80分というタイトな尺にまとめ上げられた"子供のケンカがきっかけの大人のケンカ"をワンシチュエーション密室(的)会話劇で魅せていく。話自体は別に特段何かあるかと言われれば何もないのですが、ひたすらに"あるある"と"他人事だから楽しめる地獄"を詰め込んだ様な会話劇にクスリとさせられる。基本的に(本人たちは至って真剣な)コメディタッチで描かれるのでその滑稽さがひたすらに面白い一作になっています。ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリーの4者4様の駄々を見せられつつも確かな演技力が素晴らしい。短い事もあるし、すごく気楽に楽しめるのが特に良かった。エンドロールの"親同士のゴタゴタをよそめに当の本人たちはとっくに仲直りしている"オチだと思うのですが、ちょっとそれが分かりにくいなあというのが気にはなったがそれ位で、非常に良い作品だった。ゲロを吐く映画に駄作無し!

 

・Mr.ノーバディ (原題:Nobody) - 4.0/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2021.6.21)

監督:イルヤ・ナイシュラー。脚本:デレック・コルスタッド。2021年。友人たちがこぞって絶賛しているので鑑賞。「John Wick」シリーズの脚本家デレック・コルスタッドが書き下ろした劇場用作品。主演のボブ・オデンカークは元々コメディ畑の人で、YouTubeにある宣伝用の動画でも日本での知名度の低さをネタにしている程。かもめんたるの岩崎氏の様などこにでもいるおっさん(もちろんマッチョではない)が超強くて大活躍する姿は非常にスカッとする。描写としても、主人公の冴えない日常をわざわざ説明していくのではなくルーティーンの細かいカットの連なり&リピートで一気に魅せていくスタイルは冒頭から分かり易くスピード感高く良かった。全体的にテンポがとても良く、グイグイと引き込まれていく編集も素晴らしかった。アクションシーンもしっかりとタフな感じに仕上がっていてきちんと痛そうだし、殴られてる、刺されている感もバッチリ。バス中での乱闘シーンはあくまで"敵の行動(武器)に応じてこちらも対応して倒す"というのがヒーロー然としていてかっこよかった。終盤、なんと施設入所していたオヤジ(クリストファー・ロイド!)も、兄弟も強かったという笑える展開を魅せますがそこはこの手の映画ならではの軽口タッチでOKという事で観られた(ホームアローンの様なピタゴラスイッチ殺し展開もおもろかった)。上映時間も92分でこういうのが観たかったんだよ!!と思わせる素晴らしい作品だった。少し思ったのは、クライマックスは銃撃戦も良かったけどもう少しフィジカルな闘いを観たかったかなと。そしてボスともう少しどうなるんだ的なギリギリの闘いが観たかった。

 

・クワイエット プレイス 破られた沈黙 (原題:A Quiet Place: Part II) - 2.7/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2021.6.21)

監督 脚本:ジョン・クラシンスキー。2021年。クワイエットプレイスシリーズの第二弾。アトロクの課題作品になったので渋々鑑賞。前作がそもそもノレ無かったので今回も全く期待せずに臨んだのですが案の定。どこを取っても"なんだそれ"と思う様なご都合主義展開、矛盾だらけな設定、微妙な見せ場の連続で今回も本当にノレなかった。前作もそうだった様ですが(1作目の評論音源聞き直して知った)耳の聴こえない少女の無音描写が全然活かせてないし、相変わらずうるさい劇判はずっと鳴ってるし、せっかく赤ちゃんがいるのに泣いてピンチに陥るというシーンもないし、この事件のきっかけの1日目の事も描いていますが怪物たちが音に反応して襲いかかるという理屈を何故かいきなり全員知っているのも腑に落ちないし、耳が聴こえないのに都合の良い所は聞こえてるし(まあ"文脈とか流れで分かるんだよ"という事かもしれませんが)、補聴器のハウリングで怪物の嫌がる音を出していたはずなのに最後の方は補聴器単体でハウってるし(理屈が破綻してる)、アンプのコード切ってどうやって電源取ってるの?とか、"子供の成長&活躍"が描きたいのかもしれないけど"サッサとやれよ!!"と何度も突っ込みたくなるし、クライマックスのスピード感がそんなんだから非常にイライラするし、世の中が1年もこんな状態なのに電気や水はきてるんだ、とか。とか。とか。もう言い出したらキリが無いと思うので。おそらく3もあるのでしょう。もう本当に見たく無いので二度と当てないでいただきたい。これがガチャで当たったという情報を得て、鑑賞しに行きその後にラジオのガチャタイムの部分を聴いたが宇多丸もイヤイヤ感が全開でそりゃそうだよとなった(1万円だしてガチャやり直すのもそんなに最近は多く無い様な気もするので)。二回も当てるなよ!!

 

・シックス センス (原題:The Sixth Sense) - 3.9/5.0 (DVD/2021.6.20)

監督 脚本:M・ナイト・シャマラン。1999年。アトロクの過去音源を聴いてシャマラン作品を徐々に見ていこうと思い先日観た「サイン」に続き鑑賞。一番有名なコレが配信サイトには無いのが謎ですがそのおかげで優先順位が上がった。99年当時にヒットしていたことは勿論知っているし(中1だったので見てはいませんが)、"本当に(霊が)見える人にはこういう風に見えているんだよという描写がバツグンだ"という事で結構怖いことを期待して観た。が、実際は分かり易く怖い描写はあまり無く、ラストには"家族とのつながり"または"自分が失った家族との思い出"、なんなら"生"自体というかなりどんでん返しなズシンと来る展開をハートウォーミングなテイストで魅せる作劇に驚いた。「サイン」しか見ていないので何とも言えないのですが、シャマラン作品が一筋縄ではいかないというのはこういう事なんだろうなあと非常に感心した。"(霊が)見える"時にはああいうさりげなくそこにいる感じなんだろうし、シンプルにグロかったりとかはしないんだろうなあとも思った。幽霊譚というか死んで成仏できない男の寂しい(哀しい?)話だった。

 

・不思議惑星キン ザ ザ (原題:Kin-dza-dza!) - 3.9/5.0 (DVD/2021.6.20)

監督:ゲオルギー・ダネリア。脚本:レヴァス・カブリア。ゼゲオルギー・ダネリア。1986年。カルト映画で有名なこちら、今回アニメ化されたタイミングという事でシネマスコーレにて上映があったのですが行けなかったのでレンタルDVD鑑賞。とんでもなく荒唐無稽なお話で、冒頭3分で何故か地球外にワープしてしまった主人公とたまたま一緒にいた学生が地球帰還を目指すというドタバタSF。"クー!"や"キュー!"などの特殊言語、及び特殊用語が飛び交い慣れるまでなかなか大変ですが中盤以降は何だか癖になってくる。自分も頬を叩いてクーとやりたい。という気持ちになってくる不思議なチャーム。話もぶっ飛んだ内容に思わせながらも作品内リアリティや辻褄はしっかりと担保されていて謎の説得力があって良かった。クライマックス(?)の、主人公2人が地球に帰還するチャンスをフイにしながらもいつしか仲間になっていた彼らを見捨てる事はしないというグッとくる展開も○。最後の最後にタイムリープまで飛び出すサービスが面白かった。

 

・RUN/ラン - 3.4/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.6.18)

監督 脚本:アニーシュ・チャガンティ。脚本:セブ・オハニアン。2021年。公開初日の初回上映。客入りは30人ほど。「search/サーチ」(未観です)のアニーシュ・チャガンティ監督第二作。劇場で予告編を見て面白そうだったので鑑賞。サスペンスやパニックアクション的な映画だと思っていたのですが割とサイコスリラーっぽい内容で、"思っていたのと違う"(映画を見に行ってそれを言うな)というのが正直な感想。もっと分かり易くかつハラハラするジャンル映画が観たかった。自分を誘拐した母親に不必要な薬で身体を破壊され続けた女の子の逃亡&復讐譚。なのですが、ネタ一発で作った様な感じで、全体的に登場人物の動機やテーマ自体が曖昧だし、90分の作品なのですが中身的には45分くらいで出来ることない?という様なちょっと残念な内容だった。テンポも悪く前半なんてほとんど物語が進んでいない様に感じた。主人公が飲まされている薬をウェブ検索するのだがPCがオフラインで絶望するその後ろに母親がいるというシーンが冒頭にあり、そこは結構ワクワクしたがそれまで。襲撃に向かってテンションが上がらないまま終わってしまった。少し期待した分、残念に思う幅が大きかったようにも思う。一応前作である「search/サーチ」もいつか見てみようと思う。

 

・カラー ミー ブラッド レッド (原題:COLOR ME BLOOD RED) - 3.1/5.0 (U-NEXT/2021.6.17)

監督 脚本:ハーシェル・ゴードン・ルイス。19656年。「血の祝祭日」「2000人の狂人」に続き、ゴアスプラッターの元祖・ハーシェル・ゴードン・ルイス作品を。U-NEXTの視聴期限も迫っていたので鑑賞。結局観た2作もやはり古さ故かそれほどまで面白いとは思えずに観たので今作もまあそんな感じでした。テンポがトロい。というのは2020年代の映画ファンの感覚からしたら当たり前なのかも知れないのでそれを評価軸にしてもいいのかというのは正直微妙なのですが、トロいものはトロい。作劇自体もそんな感じではあるんですが、お話としては面白かったなあと思う。どうしても血やスプラッター描写のツメの緩さが気になった。これより古い「2000人の狂人」があれだけ出来ていたんだから何故出来ない?とは思う。

 

・茜色に焼かれる - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.6.15)

監督 脚本 編集:石井裕也。2021年。ポスターのメインビジュアル、タイトル、出演者からして見に行くつもりはなかったのですがアトロクの課題作品になったので鑑賞。平日昼間にも関わらず老人たちでほぼ市松フルハウス状態。30人ほどはいたでしょうか。ハッキリと"コロナ以降"を全面に押し出した演出がかなり斬新だった。こうして全国の劇場でかかる商業映画でコロナ以降の世界を描いた作品を見るのは初めての様な気がした。お話自体には明確な答えや何かすっきりするものが残る様な作品ではなく、今の日本が抱える問題点(まあその描き方がどうなんだという部分はありますが)や、まさにコロナで困っている人がいるということ、そしてその現実を通過した今があるから映画はそこから逃げずに作品を作らなければならないという事をズシンと描いてくれていて良かった。冒頭5分の事故表現にいきなり先制パンチを喰らい最後までクラックラする様な石井監督の自由な作劇にしびれた(石井作品初鑑賞でした。きちんと他のも見ます)。字幕テロップやラストの夕陽の合成表現には大林宣彦の影がチラつき好意的に見るほかなかった。中盤、主人公が居酒屋で7年ぶりに酒を飲み心情吐露をするシーンにはこちらも涙が止まらなかった。ただ時計を見るとそのタイミングで残り1時間、折り返しくらいなので若干の肩透かしをくらった。144分という全体の尺の長さには、いらない表現や削れる所もありだと感じるし少しタイトにできる余地があるのでは無いかと思った。また、息子の中1設定、同級生の演技、いじめの際のセリフ運び、などなど気になる点もわりと多く残った。尾野真千子の熱演が◎。(非常に好きな顔だと気がついた)

 

・佐々木、イン、マイマイン - 3.5/5.0 (DVD/2021.6.13)

監督 脚本:内山拓也。脚本:細川岳。2020年。評判は聞きつつも見逃していた本作をレンタル解禁と共に鑑賞。つい最近「くれなずめ」で何とも言えない顔での演技が見事だった藤原季節が主人公の悠仁を演じた。「佐々木、イン、マイマイン」というタイトルからして藤原が佐々木なのかと思いきや全然違う"佐々木"が出てきて驚く。「あの頃。」や「横道世之介」それこそ「くれなずめ」などにも共通する、"亡くなってしまった友人を取り巻くその当時の環境と自分や仲間たちとの思い出"。そしてそこから見えてくる現実や自分の気持ちなどを描いたある意味での"青春(の終わり)映画"。こういう題材は最近多いし、わりと良作が多いので楽しみにしていましたが今作は個人的には刺さり切らなかったなあというのがまずは感想。とにかく佐々木があんまり好意的なキャラクターに映らなかったのが大きい。中盤のとある展開から、"高校まではフザけた面白い奴だったのに卒業したら人としての道を踏み外し..."的なシリアスな流れを期待したのですがそうはならずお話的なピークがどこにあるのかイマイチ乗り切れなかった。ラストの赤ちゃんを抱えて泣くシーンからクライマックスに行く流れは良かったのですが、その着地が"彼女との別れ"と言うだからなに?案件過ぎてトドメ。手持ちのカメラも何だかずっとグラグラグラグラしていて気になった。結構期待はずれでした。

 

・グーニーズ (原題:The Goonies) - 3.4/5.0 (TV地上波/2021.6.11)

監督:リチャード・ドナー。脚本:クリス・コロンバス。原案、製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ。1985年。面白いとは聞いていたが思っていた以上に子供向けで驚いた。そりゃそうなんですが。お話云々よりも(話自体は別に面白いし良いんじゃないとは思う)何よりもノイズになってしまって気になったのは、どのカットを取っても"セット"にしか観えずどうしても"冒険モノ"と捉える事が出来なかったということ。洞窟とか、ラストのカリブの海賊的な海のシーンとかも実景を使うのは難しいのはもちろん分かるのですがもう少し照明を工夫するなり(さすがに明るすぎるだろと)なんなりでとにかくもう少しだけでもいいから本物っぽく見えるように努力をして欲しかったなあというのが感想。そこが引っかかり楽しめるものも楽しめなかった。「悪魔のいけにえ」で「エレファントマン」で「フリークス」だった。SLOTH LOVE CHUNKS!!

 

・アオラレ (原題:Unhinged) - 3.7/5.0 (中川コロナシネマワールド/2021.6.7)

監督:デリック・ボルテ。脚本:カール・エルスワース。2020年。日本公開2021年。告知の時点で出オチ感がすごいですが、SNSなど意外と好評の様だったので劇場鑑賞。観客は5人。ラッセル・クロウが煽り運転&異状殺人者を演じた。所謂シリアルキラーもののパニック映画且つカーアクションジャンル映画だろうなと思ってましたが、大筋はそんな感じでしたが全体的にスリラーっぽい仕上がりに。「ヒッチャー」や「デスプループinグラインドハウス」的な路上で関わった異常者に死ぬまで追いかけられる系の作品。結構よく出来ていて、車のデカさが怖さに繋がっていたり、運転していてイヤな瞬間を的確に捉えてあるあるモノとしても昇華しているなあと思った。ツッコミどころはまあありますがご愛敬の範囲という事で。尺も90分とタイトで最高。ラッセル・クロウのデカさがマジで怖い。普通に楽しめた。スピルバーグの「激突!」が近いとの様な事も何かで観たので未観なので近いうちに観てみようと思う。しかしながら、皆まで言うなかも知れませんがこの邦題はどうなのよ。と一応書いておきます。

 

・死霊のはらわた II (原題:EVIL DEAD 2-DEAD BY DAWN) - (U-NEXT/2021.6.6)

監督:サム・ライミ。脚本:サム・ライミ。スコット・スピーゲル。1987年。見直し鑑賞。というか、観てないつもりで見始めていつまで経っても"なんか観たことあるなあ~"と思いながら最後まで観て、チェックをつけようと思いFilmarks開いたらもう見てた事に気付くという。初めて観た時よりも描写や表現に対して好感を持って見る事が出来たが、改めて観てもけっこう人形劇感がすごいなと。

 

・ブルーバレンタイン (原題:Blue Valentine) - 3.7/5.0 (DVD/2021.6.3)

監督:デレク・シアンフランス。脚本:デレク・シアンフランス。ジョーイ・カーティス。カミ・デラヴィン。2011年。"夫婦倦怠モノ"の名作として有名なこちらを鑑賞。結婚後、出会い、別れ、結婚直前、などの主人公2人にとっての重要なシーンを時系列が入り組んで編集され且つ同時並行的にも魅せていくというトリッキーな作劇。色味や画面のエフェクト、画面サイズなども次々と変わり、画としても意味を持たせて構築していく画面が非常に映画的で良かった。ただ、ストーリー的には主人公2人の夫婦の仲が既にかなり冷え切っている状態から始まり、何故そうなったのかというのがあまり明示されないまま作品が進んでいくので(既にもうあったものとして描くのではなく)もう少しだけでいいのでその辺りを語ってくれた方が感情移入出来るのになあと思いながら観た。もちろん理由はきちんとあるんだろうし、それなりの描写がされてない訳ではないのですが、控えめな薄味指向で魅せていくのでかなりアダルトな味わいだった。そして何よりもラストシーンの切なさ。花火と混じるエンドロールと二人の思い出。これ以上ないくらいにえぐってくるので食らう人は死ぬんじゃないかなと。特にラストカットの構図と切なさは屈指の名シーンと言ってもいいと思います。

 

・ファーザー (原題:The Father) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.6.1)

監督 原作:フローリアン・ゼレール。脚本:フローリアン・ゼレール。クリストファー・ハンプトン。2020年。今作にて主演のアンソニー・ホプキンスがアカデミー主演男優賞を受賞。脚色賞。認知症になった父の、その本人の目線で魅せる体験型サスペンススリラー。個人的に認知症や介護職に係る事が多い日頃を過ごしているので、劇中に描かれる認知症描写などは説得力がありグッと引き込まれて観る事が出来た。が、ポスタービジュアルに騙されて"さあ感動の実話ドラマを観るぞ"くらいのテンションで臨んでしまったので、最初の方はどうしても"知っている"話感が否めなく、これはちょっと違う観方をしないといけないやつだと、修正するのに時間がかかってしまった。認知症ライドものとしての傑作なのは間違いないと思うので再度改めてきちんと描写について考えながら観たいと思う。終盤手前の一気にグッとサスペンス色を帯びていくシークエンスが良かった。あのくらいのテンションで終始しても良かったんじゃないかなあと今は思う。