観た映画 2022年3月 | BTJJ

BTJJ

リハビリの為のタイピングブログ

■2022年3月に観た映画

17本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・ベルファスト (原題:Belfast) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/2022.3.29)

監督 脚本:ケネス・ブラナー。2021年。日本公開2022年。公開週に行ったがアカデミーの効果か平日昼間にも関わらず80人以上の大入りで少し驚いた。ケネスブラナーの幼少期の自伝映画という事で、ケネスブラナー自体に思い入れが無いのでどうかなと思っていましたが、ケネスブラナー感は全く出す事なく(名前も違う)、あくまでそれを元に作られたお話という体を取っていたので見易かった。北アイルランドで宗派による内戦がある事も知らなかったので今観る作品としても重くのしかかるものがあり、良い経験だった。が、今作は内紛を描いた訳ではなくあくまで"コドモ・ブラナー"の視点で終始描かれているのでそんな中にも青春はあったし、子供ながらの葛藤もあった、そしてこういう人達が確かにそこには居たのだという事を知られて良かった。そして、それは今、ウクライナを、自分の住む場所を、誰かの身勝手な理由で追い出されてしまっている世界の人たちともリンクする。争いは何も生まない。子供の目線でという事で、パッと思いだされたのが「ジョジョラビット」だ。もちろん作品内容は全然違うが、子供の視点を使って何かを描こうとしている点は非常に似ているなと感じた。そして、「ジョジョラビット」にノレなかった様に、この「ベルファスト」にも個人的にはあまりノレなかった。何なんでしょうか、子供目線にされるとあまり入ってこなくなる。バディ君が可愛かったなあとしか思えない。

 

・SING/シング:ネクストステージ (原題:SING2) - 3.0/5.0 (イオンシネマワンダー/2022.3.28)

監督 脚本:ガース・ジェニングス。2021年。日本公開2022年。アトロクのアレで観る事になり、1作目に続いて連続で鑑賞。結論から言えば、"まあ1作目よりは幾分マシだけで、これって結局大人が観るものではないよね"という感じ。アニメだからどうこうとかではなく、単純にお話や作劇が大人を満足させるには全然足りていないと思う。前作とほとんど同じく登場動物たちが状況を乗り越えてステージに立つお話に理屈や描かなければならない描写が圧倒的に欠けている。敢えて描いていないのかもしれないがこれではやはりいつかだれかが勝ってに色々と解決してくれるとしか思えなかった。キャラクター全員が脚本やお話のためだけに行動している様にしか思えなかった。し、見せ場も取っ散らかって散文している様に感じた。ただ、主人公の行動に関しては前作よりもハッキリと成長を感じられるし、何としても公演を成功させるんだ!という自らの意思を感じることは出来た。きちんとB'zライオンの所にも行ったしね。

 

・SING/シング - 2.7/5.0 (U-NEXT/2022.3.27)

監督 脚本:ガース・ジェニングス。2017年。アトロクのアレで続編である「SING/シング:ネクストステージ」を観る事になったので一応前作を観ておこうと思い鑑賞。全体的に言えば超都合の良い主人公を甘やかせまくり且つ理由もなく勝手に周りが成長していつの間にか感動のクライマックスを迎えているという感じだった。中盤手前にある、ホタルイカ(?)のガラス張りのステージが映像美的なもののピークだったかなという感じで後はテンション下がってしまった。登場動物たちがそれぞれの葛藤や苦悩を乗り越えてステージに立つお話自体は素敵だなと思いますが、どうしてもそこに理屈や描かなければならない描写が欠けている気がして全くもってノレなかった。そして主人公はあたふたと自己中に振る舞うだけで何一つとして成長や何かのタメになっていないのはいかがなものかと思う。

 

・ハイヒール (原題:HIGH HEELS) - 3.2/5.0 (U-NEXT/2022.3.27)

監督 脚本:ペドロ・アルモドバル。1991年。前日に「ジュリエッタ」を観て満足していたのでアルモドバル連続じゃ!と思い鑑賞。しかしながらこちらは結構な薄味。アルモドバル作品に辻褄や都合の良さなど気にしては居ないのですが、それとしてもさすがに都合が良過ぎて話にあまりノレなかった。ラストカットの半地下からのハイヒールがやりたかったんだろうなあというぼんやりとした感想だけが残ってしまった。視聴環境が悪かったかな。

 

・悲しい色やねん - 3.3/5.0 (Blu-ray/2022.3.26)

監督 脚本:森田芳光。1988年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。10本目。森田監督フィルモグラフィ上唯一のヤクザ映画。なのですが、もちろん所謂ヤクザ映画にはなっておらず、主人公のトオルは組長の息子だがカタギで居たいがゆえに四苦八苦するというお話。いつもの暴れっぷりに比べると少しソフトな気もしますが、銃弾によって飛び散るドス黒い大量の血や、ライバル組の組長はいつまで経っても立ち上がらないし(遂には死ぬときでさえも座ったまま!)、藤谷美和子のプッツン演技(佐藤優樹にしか見えませんでしたね)等、挙げだしたら出ては来るのですがそれでもいつもよりは大人しめかなと。観終わった後に教科書『森田芳光全映画』を読むと、森田監督自身この作品のシナリオを作る事に相当苦労したようで、そのせいかやはり中盤はダレたし正直眠くなったのも事実。お話として成功しているとは思えませんが、藤谷美和子の噴水からの即殴打シーンや、ラストの仲村トオルの顔面締めなど印象的なシーンは多く残っている。

 

・ジュリエッタ (原題:Julieta) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2022.3.26)

監督 脚本:ペドロ・アルモドバル。2016年。久しぶりにアルモドバル作品を。好き認定の入っている作家の過去作品は見ていくといつか全て観終わってしまうという当たり前体操があるのでジワジワと観進めているのですが、U-NEXTでの配信が今月末までという事で鑑賞。アルモドバル作品にしては、ストレートなというか割と普通目なお話(ただゲイとかヤク中とか異母兄弟とかそういうのが出てこないだけかもしれないが)。母と娘、同性同士にしか感じる事が出来ないおかしなバランスがここにも観てとれる。娘を失ったのは自業自得かもしれないが、最後の最後に自らの過ちを自身の息子を失う事で気付く事が出来た娘にも、良かったねえ、という気持ち。変な話では無いのにどこをどう切り取ってもペドロ・アルモドバルな仕上がりがとても良かった。この人の映画を観る度、本当に優しい人だんだなと思う。

 

・猫は逃げた - 3.6/5.0 (センチュリーシネマ/2022.3.22)

監督:今泉力哉。脚本:城定秀夫。2022年。城定秀夫と今泉力哉という今人気の作家をなんとスワップして映画を2本作ってしまおうというそれだけでも面白いこちらの企画、先月鑑賞の「愛なのに」と2本セット。後攻は今泉監督。双方の作品にどういう違いがあるのか(というか製作費自体に結構差があるのか?)ちょっとよく分かりませんが「愛なのに」と比べると地味目なキャスティングな今作。主人公夫婦とその不倫相手X2と猫が織りなす気まずいコメディ。終わってみて思うのは前半が結構退屈だったなという事。城定監督のシナリオなのでどうしてもそうなるのかもしれませんが、やはり少し小粒な話になってしまったかなという感じ。ショットや雰囲気は今泉作品丸出しだったので変なバランスの映画だなあと思いますし、やっぱり今泉作品は本人脚本が良いんだろうなあと改めて。そして城定監督の職人っぷりがより露になったかなとも思います。個人的には城定監督の方が映画のつくり自体は好みだったりする。しかしながら、終盤の4人集合での修羅場からのネコが見つかって良かったねの流れはとても良かった。劇中、猫に"パパとママとどっちがいいの?"と聞くシーンがあるが、"どちらも必要なんだよ"と猫の代わりに返事をしたくなった。2作とも面白い企画だった。

 

・クリーピー 偽りの隣人 - 3.3/5.0 (U-NEXT/2022.3.20)
監督 脚本:黒沢清。脚本:池田千尋。原作:前川裕。2016年。これまた久しぶりに黒沢清映画を。評判の高い今作、自分自身も観ながら序盤とかは結構怖かったし、中盤も緊張感がダレずに怖かった、(全体的には怖かったし面白かった(ライティングや表情演出ややばい家感とか)し、さすがだなあと思いながら観たので良い部分は別に並べて書きませんんが)のにも関わらず、終盤の所謂"事件の主現場"である香川照之演じるサイコパスの住処かつ犯行現場があまりのチャチさと現実離れ感で一気に萎えてしまった。あんないかにも"ヤバイ部屋ですよ~"という感じにせずに普通の和室とかの方がより怖いのになあと思っていましたが、ネット上の評論などによればあの部屋は"表現主義"という事らしく、香川の内面のやばさを本当の意味で浮き彫りにさせているという観方もあるらしく、なるほどねえとは思った。だからこそああいう部屋でなければならなかったのかなと。それでも萎えた事には変わりがないわけで。あれさえなければ最後の最後まで笑えるし怖いしでかなり面白かったのになあと残念に思う。そう思うと森田芳光「黒い家」とかで鬼オバサンの暗い部屋の中でバイブが震えてるとかの方がマジで怖かったし、やっぱりそういうヤバさ演出の方が自分は好きだなあと思った。思わせぶりなショットや暗すぎる画面なども含め、いかにも黒沢清映画!という趣きでとても良かったのですが、あの部屋に納得がいかずこの点数に。

 

・ソニはご機嫌ななめ (原題:우리 선희) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2022.3.20)

監督 脚本:ホン・サンス。2013年。久しぶりにホンサンス作品を。邦題が「ソニはご機嫌ななめ」に対して、原題や洋題は「私たちのソニ」という様なタイトルがつけられており、鑑賞後に"これはあまり良くない邦題なのでは..."とちょっと考えた。確かに劇中のソニは自由奔放かつ分かっていながら男を誘惑する様なそんな部分があるのだがこの邦題ではソニがただただ一方的にワガママで嫌な女に感じる様にあくまで宣伝担当の"男"が付けた愛が無くズレたタイトルになってしまっている気がする。もちろん本作は邦題の様な部分を描いてもいるがソニに翻弄される3人のバカな男たちを描いてもいると思うからだ。モテない虚しい男3人の最後の背中のショットを観ればそれを雄弁にそして半笑いで語っている事は私の様な映画リテラシーの観客にも読み取る事は出来るのに。「街の上で」ばりに最後勢ぞろいする感じが異様に笑えて面白かった。男はいつだってバカだし、ソニの様な関わらない方が良いタイプの女も、間違いなく居る。

 

・親密さ - 4.4/5.0 (シネマスコーレ/2022.3.19)

監督 脚本:濱口竜介。2013年。全作品上映企画。劇映画だったはずの部分はドキュメンタリーになり、演劇だったはずの部分が劇映画になるという捻れた構成に驚く。そしてその全てを掬い上げるラストシーンはとても美しい。4時間半を完走した先にある満足感を含め長い映画は面白い。客入りも良かった。日にちも経ってしまったし、どこから書いていいのか全く見当もつかないのでこのままにしておく。4月には日本映画専門チャンネルで「親密さ」と「ハッピーアワー」の放送があるのでまたいつの日か見返すときのためにしっかりと録画しておこうと思う。

 

・PASSION - 3.7/5.0 (シネマスコーレ/2022.3.17)

監督 脚本:濱口竜介。2008年。シネマスコーレにて『濱口竜介特集上映 言葉と乗り物』が上映中ということで、「偶然と想像」「寝ても覚めても」に続き色々と観てみたいと思い鑑賞。3時間だったり、4時間半、5時間半と長尺の作品が多いイメージの濱口監督ですが今作は120分で収まる一般的(?)なサイズ。ですが勿論作風は変わらず約2時間の間圧倒的な言葉の応酬が続く。初期の作品なので(濱口さんこの時30歳!)わりと散らかってる感も否めないけれど、大学院の卒業制作でこれってちょっとやっぱりモノが違うなと感じざるを得ない。脚本もさすがの出来ではありましたが全体的に画面が弱いというのは否めないかなと。こういう作品を観て、自分が映画に何を求めているのかを改めて確認する事が出来た様な気がする。楽しんで観られたことには違いないのですが。

 

・子供はわかってあげない - 4.0/5.0 (U-NEXT/2022.3.13)

監督 脚本:沖田修一。脚本:ふじきみつ彦。原作:田島列島。2021年。「横道世之介」「南国料理人」の沖田監督の現状最新作。昨年公開で評判も高く楽しみにしていたのですが何故かタイミングが全く合わず、結局劇場で観る事は出来なかった今作。U-NEXTに上がっていたのでようやく鑑賞。今回も138分と長尺で、この監督の特徴ではあるのですがやっぱり若干長いなとは感じる。とは言え、こちとらファンですのであまり気にはならないのですがもう少しタイトにまとめ上げる事が出来れば大きなヒット作を生み出せる様な気がしなくもない。で今作。まず持った印象としては"かなり笑かしに来てんなあ"というのが第一。元々コメディ調が多かったですが今回はこれでもかとばかりに"ちょっとした"ギャグのオンパレード。正直スベっているものもありますがわりと好意的に楽しめた。何となく森田芳光作品の様な過剰さを感じた(沖田作品の方がお上品な笑いなのですが)。前作「おらおらでひとりいぐも」に引き続いてオープニングシークエンスはアニメ。どういう拘りなのか、これほんと一瞬違うの観ちゃったかなと思う。ただ、今回に関しては劇中でのアニメ作品『魔法左官少女バッファローKOTEKO』が本編のキーとしてしっかりと絡んでくるのが大きな違いか。より機能的になっていて良いなと思った。オネエ役で出て来る千葉雄大が結構好きかもなと思った(彼の出演作は初めて観ました)。作劇は非常に丁寧で沖田作品特有のムードがやはり安定感を持ってよかった。景色の良いロケーションで全編撮影されているが、画的なショットの凄みみたいなものがあまり感じられなかったのが少し残念ではあったがそれでもやっぱり面白く、観て良かったなと思える作品であった。

 

・ゴーストランドの惨劇 (原題:Incident in a Ghostland) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2022.3.13)

監督 脚本:パスカル・ロジェ。2019年。三宅隆太監督のおすすめか何かで知ったのか忘れましたがチェックしてあったこちら、U-NEXTでの配信期限が迫っていた事も手伝って鑑賞。91分の尺でしっかりとジャンル映画としての機能や楽しみの部分を爆発させており、久々に気楽に楽しめるコンパクトな作品を観たなと何だか得した気分になった。基本はスリラーというかホラーというかそんな感じで、物語は進行。勿論ツッコミどころはありますが、物語内リアリティが微妙に保たれているのであまり気にはならなかった(というか作り的にそんなの気にしてもしょうがないように作ってある)。面白かった。

 

・MEMORIA メモリア (原題:Memoria) - 3.0/5.0 (伏見ミリオン座/2022.3.9)

監督 脚本:アピチャッポン・ウィーラセタクン。2022年。初アピチャッポン作品。知人が観て面白そうだなと思い鑑賞。が、、、正直ちょっと睡眠不足な状態で観てしまったからか3分の1は寝てしまったように思う。し、マジで全然分からなかった(それはそうなのですが)。知人のコメントにも"眠かった"とは書いてあったので警戒はしていたのですが、案の定。超絶無音の長回しの多用ですごいアハ体験的な映像郡だった。自分の映画リテラシーで挑むのは無謀なアート作品でした。でも、もう一度でもいいからちゃんと観たいですね。

 

・寝ても覚めても- 3.6/5.0 (U-NEXT/2022.3.6/U-NEXT)

監督 脚本:濱口竜介。脚本:田中幸子。原作:柴崎友香。2018年。「偶然と想像」に続き濱口竜介作品を。これを見てからだと「偶然~」がいかにエンタメ作としても良く出来ているのか、そして単純に話として面白いかがよく分かった。今作に関しては、主演の唐田えりかの行動に全くもって共感や養護する部分が無くそういった部分ではノリ難かった。東出昌大のイカレっぷりは結構良かったし普通に面白かった。が全体的にやはり少し長いかなと思ってしまった。119分。中盤手前に3.11東日本大震災が描かれ、"あ、ここからはそういう話になるんだ"と思ったのも束の間全然違う方向へと話が向かっていくのがちょっとどうかなと思った。それなら描く必要があったのか?と。ただ、その瞬間の地震の描写には目を見張るものがあり、今作の様な地震描写は初めて観たしめちゃくちゃリアルに感じられてちょっと怖かった。これは凄いなと感じた。あとはラスト付近で、猫は捨ててないのが安心しましたね、と。

 

・そろばんずく - 3.3/5.0 (wowow/2022.3.5)

監督 脚本:森田芳光。1986年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。9本目。とんねるずと安田成美主演の広告代理店コメディ。これが本当に無茶苦茶だった。ファーストカットからビックリするし、基本的に109分全てふざけ続けており、ちょっとめまいがしそうな程。途中から面白いのか面白くないのかももはや分からなくなってくる程の圧倒的なビックリ体験だった。どうであれ、こんな映画観た事ないと思えることは非常に重要な事だよなあと思う。またいつか見返してみたいと思う。掟ポルシェそっくりな小林薫が印象的だった。

 

・ウエスト サイド ストーリー (原題:West Side Story) - 3.9/5.0 (109シネマズ名古屋/IMAX/2022.3.1/)

監督 :スティーヴン・スピルバーグ。脚本:トニー・クシュナー。原作:アーサー・ローレンツ。2022年。あまり観るつもりは無かったのですが、これは観てよかったなあと心底思った。し、古典的な作劇やお話が持つ構造の強さみたいなものを改めて感じる事が出来た。映画としてもずっと緊張感ある画面でかっこ良かったし(特にオープニングの一連のシークエンスは本当にかっこよかった)、きちんと練られたショットの連続にはシビれるものがあった。分断や争いは本当に悲劇しか生まないと思うし、それは繰り返してはならないと強く思った。時世ともリンクしてしまい、良いのか悪いのかだと思いますが、この2022年3月のタイミングで観る事が出来て良かった。