さらに、動脈からAVAに入ってそこを通過した血流は、静脈を通る間にも腕全体から熱を逃がすなどしながら心臓に戻り、体温を調節していることも分かっています。

 暑い時は皮膚表面に近い静脈を通って積極的に熱を逃がしながら戻り、寒い時には動脈と接する深部にある静脈を通ることで動脈の熱をもらい、温まった血液が心臓に戻る…うまく体温を調節する仕組みです。

 AVAは全身の体温調節のバランスの中で、快適な温度より暑ければ開き、寒ければ閉じる…我々の無意識の内で微妙な感覚を感じ取り、体温を緻密にコントロールしているのです。

 ですから、AVAの働きをうまく活用してその収縮を抑えるようにすれば、冷えを効果的に防ぐことができます。あくまでも全身の体温調節のトータルバランスの中で開閉するAVAは、手先などを部分的に温めても開かないので、全身の体温をいかに効率よく上げるかを考える必要があります。

 皮膚には冷たさを感じる「冷点」がありますが…

AVA 血流量増加が上肢全体からの熱放散量亢進に寄与するメカニズム

(Hirata et al., 1989a;Hirata et al., 1990 より改編)

続く…