密やかな想い番外編~メリークリスマス&ハッピーバースデー(3)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「あ~~…すっかり夜になっちゃったな。」



 インタビューを終えて、私はラブミー部室へと戻ってきた。外を見てみると、太陽も沈んでしまって、代わりにぽっかりと浮かぶ月が見えた。



「…………。」



 しばらく月を眺めた後、私は机の上に置いた雑誌に視線を移す。

 世の女性…特に20代から30代の女性に爆発的な勢いで売れているというその雑誌の表紙を飾るのは…芸能界1イイ男で、今年も結局『抱かれたい男№1』に選ばれてしまった、先輩俳優。

 切れ長の瞳が射すくめるように…視線の先にいる人物を捉えて離さないように…熱い視線を送っている。



*****



「はぁ~~~。イイ男よねぇ、蓮……」

「ほ~~んと。ドコの角度から見てもケチつけられないものね。もう、完璧。」

「ねぇ!?こんな人が選ぶ女の人って、どういう人なんだろうねぇ?」



 雑誌取材の数時間前。ふらりと時間潰しに立ちよった書店。大量に陳列された雑誌の一番目立つところに、熱い視線を送る先輩俳優の載った雑誌があった。

 その雑誌の前には、20代後半くらいだろう、若い女性が2人いた。

 

 綺麗なお姉さんだな、と思った。一般のOLさんでも、私と比べたらとってもオシャレで綺麗な人が多い。



「でも、なんか最近さ、恋愛系が絡む時の蓮のインタビューって、具体的になってきている気、しない?」

「あ~、するする。この雑誌のさ、インタビュー内容のクリスマスデートプランだってなんか具体的っていうか…大人の女性をエスコートする蓮が想像できるっていうの?」

「ね~~!!??あ~、彼女とかいるのかな?いないわけないよねぇ、あれだけのイイ男だもん。きっと蓮にお似合いの、超美人なんだろうなぁ。」

「意外と外国の人かもよ?金髪碧眼。」

「あ、ありうるねっ!!だって蓮ってば、そういうモデルとのセクシーショット、いっぱい撮っているもん!!」



*****



「……大人の女性、かぁ~~~……」



 二人のお姉さん方の話を聞いて、買うつもりもなかった雑誌を思わず購入してしまった。それは、今年も芸能界1イイ男、抱かれたい男№1に選ばれた敦賀さんの特集記事が組まれた内容になっていた。

 普段通り、穏やかに微笑む敦賀さんから、撮影前の集中している時の敦賀さん…。それから、その…いわゆる、夜の帝王風味の敦賀さんから…時々、見せてくれる神々スマイルを浮かべる、敦賀さん。

 たくさんの敦賀さんの写真が大半を占めるその雑誌をペラペラとめくりながら、改めて思う。



「ほ~~んと、どっから見てもケチつけようのないお姿よね。」



 神様はきっと、丹精こめてこの方を作り上げたのだろう。この世で何よりも綺麗なモノを集めてきて、神様は彼を作って地上へ遣わしたのだ。…世界中の人々を、虜にする…誰よりも輝く存在になるように。

 

―――…好きだよ、君が。―――



「…………。」



 耳に響くのは、先輩俳優の甘い声。あの、敦賀さんに不覚にも私の気持ちを伝えてしまうこととなった運命の日以来、ことあるごとに耳元で囁かれる…愛の、言葉。



 その愛に、応えられる人間になりたいと、心の底から思っている。…誰よりも輝く人の隣に立てるように、私に出来うる限りの努力もしているつもりだ。だから、幸運にも与えられるお仕事は全力で取り組んでいるし、自分を磨くための努力だって、…その…お金が許す限り、しているわ。



 それでも……



「……私に、高級ホテルでのディナーなんて……似合わなすぎる……。」



 雑誌で語られていたデートプランは、どこまでもオシャレで、豪華で、大人の雰囲気満載で。他人事として聞くには純粋に憧れることができるもの。



 でも、それが敦賀さんはともかく…相手が所帯くさい私じゃ、似合う代物なわけがない。



「…このワンピースだって……」



 袖を通した時に感じたのは、素直な喜びだけじゃなくって。…何か、悪いことをしているような…妙な、罪悪感。



 私は、「ふぅ~~~っ」と溜息をつくと、熱い視線を向ける雑誌の中の『彼』を見つめる。…その目の先には、一体何が映っているのだろう?



「…………。」



 完璧な男性には、完璧な女性しか、隣に立てない。…いくら、私が彼を好きでも…。っその、か、彼が、わっ、私を、好きでいてくれたとしても……!!…世間が、許してくれないもの。



―――好きだよ、君が…―――



 何度も聞いた、彼の甘くて熱い声。…その声が、少し遠くに聞こえた気がした。

 

「……やっぱり、釣り合わないですよ。……敦賀さん。」



 あなたを恋しく思う瞬間は、日を増すごとに増えている。あなたが愛の言葉を囁けば囁くほど、それに肯きたくなる私がいる。…それでも。

 やっぱり、今の私じゃダメなんです。だって、あなたはこんなにも……雲の上の人なのに。







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