菖蒲華 〜ハンゲショウ〜 | 嵐好き・まるの ブログ

嵐好き・まるの ブログ

まるです。

Over50の葉担櫻葉erです。
徒然におはなしを書き、投げ込んであります。
基本は読み手。
色々なブログに顔を出しては、叫ばせていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします^ ^

本日より、
夏至も次候。

菖蒲華とかいて、
あやめはなさく
と読む。



本来ならば、
梅雨もなかば。

しとしとと振る雨の風情にひそやかに咲く
菖蒲や、杜若の情緒を楽しむわけだが、
なぜか知らねど、この猛暑。、


6月の里山といえば、
地はぬかるみ、
山あいは、
新緑深く、
これから百花繚乱咲き乱れようとする
色とりどりの花々の準備に入る時期なのだが、
すでに地ひび割れ、
乾燥さえする始末。




田んぼの畦道に咲く、
紫深い文目(あやめ)が、
恨めしそうに少し下向き加減に咲くのも仕方ない風情ではある。



いや。



風情だけではない。
くるくると、
熱風混じりの旋風が吹いたと思ったら。
恨み節の主がそこにいた。




「マサキー。」



あらあら、
ここは翔ちゃんと営む里山の喫茶店。
地の精のジュンが人の姿で現れるなんて珍しい。



「どしたの?ジュン。
珍しい。」



薄々理由は察してはいるが、
知らぬふりして聞いてみる。



ジュンは、
元はと言えば、花の精。
それも、紫の花が眷属だったから、
美しい紫の花が咲き乱れたり、
紫陽花が鮮やかに変化していったりするはずのこの季節に、
こんなに晴天が続くのは文句があるに違いない。




「マサキー。
マサキのせいだろ。
こんなに太陽がぎらつくのは。

あいつをなんとかしろ。

そうじゃないと、
俺の大事な草木や草花が困る。


大体、
マサキだって元はと言えば木の精じゃないか。」



やはり。


俺のパートナーの翔ちゃんは、
火の精。

もうすぐ精霊になって一年と、
やっと力が使えるようになってきたばかりだが。逆にコントロールができない。



空の精である俺が翔ちゃん可愛さに、
甘やかして、
翔ちゃんの力を伸ばせるだけ伸ばしているから、
この猛暑を呼び込んでしまっているのだ。



「たしかに、ちょっと
甘やかしすぎました。


でもさ、
水を司るサトシが、
出てこないのも怠慢ってやつじゃないの?」


本来だったら、
この時期に雨を降らせ、
全てを洗い流し、
清涼な地を作り上げるのは、
サトシの仕事。

サトシが仕事をしていないから、
翔ちゃんが無駄に張り切ってるのと相まって、
この暑さにもなっている。




「サトシは、
カズによると、お休み中だって。

俺が、
カズと起こしに行ってくるから、
安心して。

あと一週間もすれば、
半夏生だしね。」



ああ、早い。
翔ちゃんと初めて会ったあの季節がまたくる。

大水を
注意しなきゃいけないあの季節となるのだ。




「わかった。
今日から、俺が翔ちゃんを静かにさせる。
くふふ。
まかしとけ。」



「よろしく。」


紫の風がひゅるりとふいて、
ジュンがまた、
違う場所へと消えていく。





やっぱりな。



このごろ、
翔ちゃんも、
めちゃくちゃ張り切って、
あっつくなっちゃってたからな。


今日からは、
俺の番。



やさしくあまく翔ちゃんを愛してあげて、
そして、
翔ちゃんの火の力を少し弱めて、
この陽射しをどうにかしよう。



だとしたら、


今日の夜は、
精のつくオクラや、長芋。蜂の子かな?



心の中でこっそり計算して、

この美しい夏の季節を、
大好きな翔ちゃんと過ごせる幸せを噛み締めた。






⭐︎おしまい⭐︎




本日、
菖蒲華。

いつもだったら、
モデルズさんのお話ですが、
半夏生の精霊さんを



読んだことのない方は、
こちらをお読みくださいね。