蛙始鳴(かわずはじめてなく)2023 〜ハンゲショウ〜 | 嵐好き・まるの ブログ

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まるです。

Over50の葉担櫻葉erです。
徒然におはなしを書き、投げ込んであります。
基本は読み手。
色々なブログに顔を出しては、叫ばせていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします^ ^


半夏生という話です。

ずっと、季節の移り変わりごとに、

書かせていただいている話になります。



一昨年の

蛙始鳴 に書いたのはこの話。


蛙始鳴 2021









すごい風だ。

夏の風だ。




熱気を伴った荒れ狂う風が、

俺たちの里山も襲っている。




つい昨日ぐらいまで、

口笛なのかと思うくらい

綺麗な声で鳴いていた鶯も、

今日は鳴かない。



この荒れ狂う風の中、

竹藪かどこかへ体を潜めているのだろう。





「すごいねぇ。」



じいちゃんが遺した藁葺き屋根の家で、

マサキが揺れる木を見て、

なぜか嬉しそうに目を細める。




「すごいったって、

空はお前の配下じゃねえの?」



マサキは、

空を司る。



すごい勢いで流れる雲を見上げながら、

マサキに言うと、




「ううん、風の精はカズだよ?

翔ちゃんも知ってるでしょ。」




穏やかに笑って、

俺をたしなめる。





「だって、カズは。

いつも優しいのに。



こんなに荒れ狂うことって。」




俺が不安気に、

あちらこちらに飛ばされていく洗濯物を眺めれば、



「くふふ。

サトシのことで怒ってんだよ。」




「え?」



当たり前のように答えるマサキの方を見る。



まだまだ、

俺は、火の精になりたてで、

そういう事情にはとんと詳しくない。


何かあるのだろうかと、

マサキの言葉を待てば、

マサキがにっこり笑う。





「昨日は、

端午の節句。

子どもの日でしょ?


サトシの分身でもある鯉のぼりを思いっきり空に靡かせようって、

カズががんばったのにさ。


サトシはありがとうも言わずに、

終わったらさっさと

西の海に釣りに行っちゃったんだよね。


だから、

いま、西の方に低気圧が張り出して、

カズがそれに向けて大荒れに荒れてる。」




くすりと笑うマサキは、

やはり、

この世を司る大きな空の精であり

視野が広い。



俺のように、

ついこないだ人間から、なったものとは年季が違うってやつだ。





「ふふ。

心配しなくて大丈夫だよ。

翔ちゃん。


こんなに、カズが荒れ狂ったら、

ジュンが、大事にしてる草花たちも倒れちゃう。


カズも、

それがわかってるから、

ほどほどにするよ。


それに、

空に浮かんでる雲を通じて、

水龍に、

早く帰ってこないと、

カズが拗ねるよって、

伝言したから大丈夫でしょ。



せっかく、

七十二侯も

蛙始鳴(かわずはじめてなく)になって、

生きとし生けるものが喜んでる季節になったんだからさ。



みんなが楽しく歌ったり、

笑ったりしてもらいたいよね。」




がらん。がらん。がらん。


そんなことを言ってる間にも、

子どもが起き忘れたのであろうブリキのバケツがごろごろと転がっている。



立夏になって、

そこの池で遊びにきて忘れたのだろう。

連休とやらで、

こんなところでも

都会から来た子どもが遊ぶ場所になってるのだ。




「でも、仕方ないね。

このままだと、

水難が起きちゃうか。


子どもたちも守ってあげなくちゃね。


サトシもまだまだ帰らないだろうし。


俺も、ゆっくり翔ちゃんと遊びたいしね。」




マサキが軽く目を瞑ると、

一天俄かに掻き曇り、

何やら怪しくなってくる。






あ。



夕立。




「くふふ。

これで、

雨戸を閉めてもおかしくないし、

風の大きな音もしてるから、

翔ちゃんが、どんなに大きな声を出しても大丈夫だよ。」





マサキががらがらと雨戸を閉める。





真っ暗な空間は 

2人の

2人のためだけの空間となった。



切り取られたその空間で、

マサキは俺を背後から抱きしめた。










⭐︎おしまい⭐︎











こっちの方。

すごく暑いですが、


すごい風です。




西の方に張り出した

低気圧のせいだそうですが、


きっと

かずが智にほっておかれて

怒り狂ってるんだと思います。



暑くなったのは、

火の精である翔ちゃんの

身体が熱ったせい。



また、

これからも

いっぱい熱くしてもらって、

暑くなることでしょう。




天変地異ではないですが、

日本各地。

いろいろなことが起きています。



読んでくださる皆様が、

無事でありますように。

平和でありますように。



この土地より

心よりお祈り申し上げております。







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