君の風景は僕の風景 Landscape.29 | 嵐-大宮妄想小説-大宮に恋して。

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君の風景は僕の風景 Landscape.29



重苦しい空気が待ってるかと思ったし、最悪怒られる事すら覚悟してたのに、、、

「ほら、食えるなら食えよ。俺も腹減った」

部屋に入ってくるなり両手いっぱいのビニール袋を手際良くホテルの簡易冷蔵庫に直した智はベッドに座る俺にパンを差し出すと、ドサっとソファーに座り、同じくパンをいい音を立てて食べ出した。


「お前、それ好きだろ。体調が悪い時でも食ってたし」

惣菜パンを手に持ち、いい音がする方を見ると、もぐもぐとパンを口に入れたまま智は顎をクイクイとし、早く食うように促す。あの時は食べれなかった大好物の惣菜パンを見て俺の身体は馬鹿正直に反応し、音を鳴らした。


「どうせロクなもの食ってないんだろ。食わねえと治る風邪も治らねえよ」

そのお腹の音を聞いて表情を緩めた智の顔は本当にあの頃と変わらなくて、俺はゆっくりと袋を開けると惣菜パンを口にした。


「おい、…………し」

「相変わらず安上がりなやつ(笑)それ食ったら寝ろよ」

そう言いながら智は自分のパンを食べ終わった後大きく背伸びをし、ソファーに身体を凭れ、窓の外を見た。その瞳ははるか

………………遠くて。


「ねえ、智」

「ん、」

「怒っても、いいんだよ、俺の事」

「今の俺にはお前を怒る権利なんてねえし、むしろ怒られなきゃならねえのは、俺だよ。俺が日本に帰ってこなければお前は今の幸せのまま過ごせた筈、だから、俺だよ、本当に悪いのは」


ソファーから立ち上がり、まだ食べている俺のベッドの端に智は腰を下ろすと、俺の口周りについただろうマヨネーズをそっと拭い舐めた後、少し汗ばんだ俺の髪の毛をクシャリと。


 悪いのは

全部、すべて

 俺なんだよ。


反論しようとパンを飲み込んだ瞬間、その反論を塞ぐように俺の唇にはふわりの温もりが堕ちて、


「おまえを結果的に置き去りという形で裏切った俺が言う事じゃないかもしれないけれど、あの後、ものすごく若すぎた自分の考えて全てに後悔したよ。離すべきじゃなかったっ、……て、な。考えすぎて、どうしようもなくて、日本に戻ろうとすら思った。だって俺は、お前の事を嫌いになって離れたわけじゃなく、寧ろ、………って、何を言っても言い訳になるからもう言わねえけど、これだけは言える。今でも、あの頃と変わらず、俺はお前の事が、、、、」


PRRRRR

PRRRRR

タイミング悪く鳴った携帯を俺は電源ごとオフにした。電話の相手なんてわかってる、しっかりと話さなきゃならない事だってわかってる、だけど今は智の言いかけた言葉の最後が聞きたくて、そっとその携帯を裏返して智を見つめたら、智はふぅと小さく息を吐き、聞こえるか聞こえないか、とても小さな声だったけど、その言葉に俺は一瞬にして

………………涙した。


 今でも、好きだよ、カズ