関東二日目の午後。




駅を降りて治療院まで徒歩5分の間に


いくつものリラクゼーション店や治療院が立ち並ぶ。


都会はどこも激戦区だな。




関係ないけど美容室もそれこそ2軒おきくらいにあった。






結構詳しい問診票に答える。


一応、前もって今のところ関東で就職する予定はないが、


就職活動の一環として地方から訪れていることを伝えていたので


院長らしき女性が対応してくれたが、




「昨日から来ていて、昨日一つ、今日午前中に一つ行って


最後にここです。」




というような話をするといきなり、




「え?受け過ぎじゃない?」




悪気はないのかもしれないけれど、ちょっとこばかにしたような感じの返事。


遠方から訪ねてきた学生に対するあたたかい雰囲気はまったく感じられない。






別に温かく迎えてほしい、というのではない。


あくまでも、「私が経営するなら」という視点で相手の対応を判断しているのだ。






もし私が逆の立場なら、「今のところ就職するつもりはない」ということであっても


人生は一期一会、どう転がるかわからない。


ここでの自分との出会いで相手は先の人生を考え直すかもしれないし、


地元でなくてもこちらの知り合いがいるとすれば


「あそこよかったよ」


と紹介してくれるかもしれない。


ましてや自分が求人票を出している専門学校からの訪問者なのだから、


学校へ帰ってほかの学生に紹介してくれて、


いい人材が見つかるきっかけになるかもしれない。





そういう前提で言葉一つ、施術一つ、すべてに気を配ると思う。






性格的なものかもしれないが、問診時の応対からすでにこちらの気分は下がり気味で、


しかも中年のそこそこきれいだけど、どこか冷たい、こわい雰囲気のする女性院長の前に、


私は委縮してしまい、話しかけにくい、笑顔のない状態になってしまっていた。








ここでは「鍼60分コース」というのでお願いしていたが、


関東に来てから生理になったこともあってずっとお腹の調子が悪く、


主訴は腹痛と顎関節症ということで診てもらうことになった。




それぞれマッサージのコース、オイルマッサージのコースと分かれていたので


60分間も鍼ってどんなふうにするのかな、と思っていたのだが、


実際にははじめにマッサージをし、次に鍼、そしてジアテルミーという温熱器具を使ってあたため、


最後にまたマッサージで終わった。






が、正直言ってこの1時間はずっと拷問のようで、


私は心の中でずっと「もう、やめてーーーー!!!


お金はあげるから解放してーーーー!!」


と叫び続けていた。


今までいろいろなマッサージや治療を受けてきたけど、


こんなにも苦痛だったのはあの気孔の先生以来。


気孔の先生は痛いけどたった2回でひどい腰痛が治ったし


人柄は嫌じゃないし値段も良心的だったのでまぁよかったけど。






まず、こちらがマッサージや鍼に強いか弱いか、


先生の刺激が強すぎないかどうか尋ねることを全くせず、


これでもか、っていうくらい強い刺激を与えてくる。


確かに私は体のつくり的に強そうだけど、


気持ちよくない痛いだけの刺激は、嫌いだ。


揉み返しが来ることもあるし。




マッサージは痛すぎて体がこわばり、


体はずっと冷や汗タラタラ。


下肢外側はもともとさわられるのが苦手で


こそばかったり筋肉がつぶれてあとで筋肉痛になったりする。


しかしなかなか口で言えず(上記のような雰囲気だったので)


それでも体が嫌って反応してしまい、施術してたらそれに気付かないことはないだろうに、


先生が手を弱めたり、私に加減を聞いてくることは一度もなかった。






最悪なのが鍼。




この先生はすべて単刺だけど深刺しして一瞬神経にあててぴりっと来させるやり方で、


腰、殿部、肩、すべてにあのいやなぴりっと感をやられた。


私はあれが苦手なのだ。




極めつけは右の三陰交だか復溜だかに深刺ししたとき、


一気に足の裏にビリビリビリビリーーーっとものすごい電流が流れて


足がばしっと底屈し、


さすがの私も




「いたっ!!!いたたたたたたた!」




と叫んでしまった。




それでも先生は…無言。








無言?!








すみません、とか、せめて、きました?とか、


何か言いようがあるだろ?




で、一人でぶつぶつと「やっちゃった…」みたいなことを言ってたような。




はぁああああああ?!




今の完全に失敗でしょ。


やりすぎちゃったんでしょ。




もうそれから一層こわくてこわくて。


さすがに左足の時は






「すみません、ちょっと控えめにしてもらえますか?」




と言ったら大丈夫だったけど。


ほんとにありえなかった。






さらにジアテルミー。


そもそも、わざわざ「鍼60分コース」にしてるのに


そういう違うことをするなら、一言断るか、百歩譲って


やる前に説明すべき


いきなりお尻を(それも生理中って言ってるのに)ぺろんってめくられて


力任せにごしごしこすられて。


痛いのなんのって。


やさしさが全然感じられない。


なんかものみたいに扱われてる感じがジアテルミーの先から伝わってきた。


私はジアテルミーなるものを使ったことがないから


こういうものなのかもしれないけど、


あそこまでごしごししなくても、もう少しやりようがあるんじゃないか。


なんかもう、悪意すら感じられた。






合間に少し話を聞いたら訪問が多いらしく結構な人数(20人?30人?忘れたけど)のスタッフが


自転車で訪問マッサージに出ていると言っていた。


訪問マッサージは多分まだまだ需要に対して供給がおいついてないから


やっていけてるのだろうけど、


この先生のこういう治療をわざわざ受けに来る患者っていうのは


一体どれだけドMか、または不感症?と思わざるをえなかった。


もしくは、やっぱり女的に私のことが気に食わなくて、


わざとあんな痛い治療したのかなぁ…






ただ、そこまで苦しいことをされたが、


確かに症状は改善された?(治療がきつすぎて、その反動かも)のと、


揉み返しは来なかったので、腕はあるのかもしれない。




けれど、私は二度とご免だ。




この経験は本当につらかったけれど、


かえって自分の方向性がはっきりしてきた。