みなさん、こんばんは音譜

 

暑い日が続いていますが、夏バテにご注意ください晴れ

とは言え、冷たいものばかりでも身体によくないのですが…

ついついドトールでアイスカフェラテばかり買ってしまいますあせる

 

さて、もう10年以上前

2004年に日本で公開された映画「ニューオリンズトライアル 」(←リンクあり)

 

私は映画館で観られず、確か2年後くらいにCSで放送してたのを観ました。

それからもう何度目でしょうか。何度観ても飽きないというか、面白い!

またまたCSでオンエアされているのを録画していたので、昨夜観ました。


 

 

物語は、ある朝ニューオリンズの証券会社に男が侵入し銃を乱射し、

なんの関係もない無抵抗な人々を16人も死傷させて

自分も自殺するところから始まります。

コロンバイン高校の銃乱射事件に似ていますね。

(実際にコロンバイン高校の銃乱射事件を彷彿とさせるシーンがあるのですが)

 

被害者の一人、ジェイコブ・ウッドの未亡人は理不尽な夫の死への怒りを、

犯人の使用した銃を製造した会社に向け、民事訴訟を起こします。

原告である未亡人は、ベテラン弁護士ローア(ダスティン・ホフマン)に依頼。

会社側は存亡にかかわるこの裁判を前に伝説の陪審コンサルタント、

フィッチ(ジーン・ハックマン)を巨額の費用を払って雇い入れます。

陪審員の中には謎めいた男ニック(ジョン・キューザック)も含まれ、

陪審員たちを巧みに誘導していきます。

ローアとフィッチの二人にそれぞれ1000万ドルという巨額で、

「陪審員の票を売る」と持ちかけるニックの相棒の女性マーリー(レイチェル・ワイズ

 

法廷の内外で繰り広げられる3人の男性の闘い。

ニックとマーリーの狙いは何かはてなマーク陪審員はどう評決を下すのかはてなマーク

3人の名優たちがそれぞれ名演技を見せ、最後まで目が離せない映画です。

単なる法廷ものとは全く違う視点から描かれており、非常によくできていると思います。

 

特にダスティン・ホフマンとジーン・ハックマンは若いころのルームメイトで、

長年共演したいという夢がやっとこの映画でかなったようです。

(個人的にはダスティン・ホフマンの大ファンですが)

 

まず驚いたのは、陪審員制度において、

堂々と陪審コンサルタントなるものが存在することです。

調べてみると、1970年代から陪審コンサルタントは既に存在していたようです。

そして議論を呼んだOJシンプソン事件。あれも実は陪審コンサルタントを、

OJシンプソンが大金を払って雇っていたために無罪になったのだという説があります。

 

話は逸れましたが、アメリカの裁判では陪審員選びが重要です。

実は陪審員選びで既に勝負の半分は決まりかねないというくらいです。

そのために、陪審コンサルタントなるものが存在するのでしょうが、

この映画ではそのやり方がものすごいのです。

 

裁判所のすぐ近くに対策本部のようなものを設置して、

そこから最新機器を使って陪審員候補者たちの反応などをモニターし、

陪審員のチョイスを弁護士に指示していきます。

 

まるでCIA並みに陪審員候補者たちの身辺調査し、

陪審員の弱みをみつけては、それを武器に追い詰め、票を操作する、

そんな光景に、背筋が寒くなると同時に、

こういう事をして、訴えられたセレブ達からお金を巻き上げるという

陪審コンサルタントが成立しているひどい現実があるということが、

さすがアメリカというべきなのかもしれないですが。

 

私の一番好きなシーンは、銃社会のアメリカで、銃の会社を相手にしたローアが

弱気になって、一瞬陪審員の票を買おうと1000万ドル用意しながら、

ぎりぎりのところで踏みとどまるところです。

 

マーリーからの電話にすっきりした表情で応じるローア。

「驚いたことに1000万ドルは簡単に用意できたよ。いい経験だった。

まるで1000万がはした金のようだ」

「僕はどうしてもこの裁判に勝ちたい、心からね。

でも35年弁護士をしていて、一番大切なのは夜ぐっすり眠れることだ。

・・・金は一銭も支払わないよ」

そう言い切ったシーンです。

マーリーがさらに追い詰め、「それじゃフィッチの勝ちね」と言っても、

「フィッチがなんだ?自分の運に賭けてみるよ」と電話を切るローア。

 

巨大な敵を前にして、喉から手が出るほどほしい陪審員の票。

しかし不正な手段で手に入れれば、一生寝覚めが悪いのも知っているのです。

 

 

裁判の時に大事な証人をフィッチの横槍で失ってしまったローアが、

裁判所のトイレでフィッチとやりあうシーンが蘇ります。

超高級スーツに身を包み、靴も一流品のパリッとしたローアと、

くたっとしたジャケットにパッとしないネクタイのローア。

 

「正義や真実やアメリカの理想など陪審員は何とも思ってない。

彼らはローンを抱えた労働者で、家に戻ってテレビを観たいだけ。

他人の良心に頼った時点で君の負けなのだ」と

陪審員を小馬鹿にした発言をするフィッチに、ローアは、

「今回勝っても、いつか君は負ける。暗闇にただひとり取り残され、

蘇るのは破滅させた相手の記憶だけだ」と反論しますが、

フィッチは「そんなこと何とも思わないね」と言い放ちます。

 

こうした伏線が見事に生きています。

 

そういう夜など考えてもないし、良心よりもお金を取るフィッチ。

そんな夜は耐えられないと思うローア。

 

結局、自分の良心に従って、裏の取引などしないと決意するローア。

彼は最終的に陪審員の良心に頼ることを決めたのです。

 

 

原作は「ザ・ファーム」「ペリカン文書」「評決のとき」などの

ベストセラー作家ジョン・グリシャム

 

映画好きなら結構観ていると思われる名作です。

 

実際に銃とはほぼ無縁の生活を送る私たち日本人としては、

銃の問題はいまいち実感がわかないと思うのですが、

ドラッグの問題とともにアメリカの抱える闇の部分です。

実際に銃乱射事件が何件も起きて、なんの罪もない人の命が奪われています。

 

コロンバイン高校の銃乱射事件の時には、犯人の遺体の検死結果、

抗うつ薬(フルボキサミン)の成分が大量に検出され、

SSRIなどの抗うつ薬24歳以下の若年層に投与すると、

場合によっては攻撃性や衝動性が増す可能性が示唆されており、

この事件でも問題となりました。

 

安易に若年層に抗うつ薬や安定剤を処方するのは私は反対です。

人格の未熟さや、思春期によくある不安定さに対してまで、

いとも簡単に向精神薬を使うことに対して、

処方する側も内服する側も、もっとリスクがあるという意識を持つべきです。

 

またまた話が逸れましたが、

銃の製造会社が悪いのか?それを犯罪に使う人が悪いのか?

アメリカらしい裁判をモチーフに描かれた法廷サスペンスです。

 

Written By まきメンタルクリニック院長 西崎真紀

 

では今日はサイモンとガーファンクルの The Boxer を贈ります音譜