ザ・テノール 真実の物語/嘘臭く見えて仕方がない | 調布シネマガジン

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ザ・テノール 真実の物語
韓国のテノール歌手ベー・チェルチョルの奇跡の復活劇を描いた実話ベースの物語。主人公のチェルチョルをユ・ジテが演じ、そのチェルチョルの日本でのマネジメントを務める音楽プロデューサー・沢田幸司を伊勢谷友介が熱演する。共演は『第7鉱区』に出演したチャ・イエリョンや北乃きい。韓国人と日本人がメインキャストではあるが、実際には欧米人俳優やヨーロッパのシーン、日本のシーン、韓国のシーンも有るワールドワイドな作りになっていた。こういった世界を向いた作品が増えてきたことは日本にとって良いことだと思う。
ザ・テノール 真実の物語01
さて、物語のストーリーはおおまかに言えば甲状腺がんの手術で声を失ったチェルチョルが、友であり音楽プロデューサーの沢田の友情や妻の支えで復活をするという流れだ。まあありがちといえばありがちなんだが、実話だというのだから仕方ない。感動の物語なんだろうなと思うんだけれど、俺にはどうにも現実感がなくてイマイチだった。手術の前に医者は「歌と命とどちらが大事かなんだ」というけれど、そりゃ言うまでもなく“歌”だろう。そんなこと本人はもちろん、周囲だって解るに決まってる。
ザ・テノール 真実の物語02
普通の人じゃないんだ。将来を嘱望され、現実にヨーロッパで高評価を受け、未来が開けていたオペラ歌手なんだから。なのに本人が気を失っているうちに手術が終わってるってそんなことありえるのか?第一甲状腺がんなんて一分一秒を争って手術しなければならない病気じゃないだろうに。声を失ったチェルチョルが絶望するのは当然だろう。だけど特にリハビリらしいリハビリのシーンも描かれず、ある日世界的な声帯の権威の手術でとりあえずかすれ声が治りある程度歌えるようになってしまう。
ザ・テノール 真実の物語03
絶望感が深く描かれていたのは確かだけれど、だから余計にこの雑な展開が気になって仕方ない。復活コンサートに出演が決まったその日に実は横隔膜の神経も切断されていて、キチンと歌えないことが判明するんだが、そこでまたチェルチョルは絶望に突き落とされる。復帰コンサートの日に検診を受けてその段階でそんな事実が判明するってのもどうにも腑に落ちない。横隔膜の神経が切断されていることで彼の右の肺は動いていないんだが、そもそも原因は解っていなくても、その状態でも歌おうと決めたんじゃなかったのか。
ザ・テノール 真実の物語04
それともなにか、当日までには治るとでも思っていたのか?本人ご存命故に悪く言いたくないのだが、少なくともこの映画のストーリーは俺には嘘臭く見えて仕方なかった。いや、事実がそうだったとしてももっと丁寧に丹念に細かい事実を積み上げることが製作者に求められているんじゃないだろうか。いわば伝記なのだから、それがご本人に対する敬意ってもんだと思う。ちなみにあんまりなストーリーではあったが役者の演技は良かったと思う。北乃きいの酷すぎる大根芝居以外は。

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ストーリー:アジアのテノール歌手の中で高い評価を受けていた韓国出身のべー・チェチョル(ユ・ジテ)は、ヨーロッパの歌劇場で歌声を響かせていた。そんな折、彼は甲状腺ガンを患い手術をしたものの、声帯と横隔膜の神経を切断したため素晴らしい歌唱力が喪失してしまう。そんなどん底のベー・チェチョルが希望を見いだすきっかけとなったのは、音楽プロデューサーの沢田幸司(伊勢谷友介)との出会いで…。(シネマトゥデイ)