以前、大阪市内のある介護施設様とご一緒して、認知症における色彩効果の共同研究をしました。
発案から終了まで2年ほどかけたお取り組みで、コミュニケーションが難しくなってきている認知症の利用者様に対し、居室や寝具、身の回り品の色を変えることで、周辺症状の改善が見られるかということを調査しました。
後見人の方にもご協力いただいて、まずは情報収集からスタートしました。
アンケートとヒアリングでから利用者様の情報を集め、利用者様にもヒアリングをさせていただきました。
ですが、コミュニケーションがうまくいきません。
そして色彩のテストを何パターンか受けていただきました。
事前に医療機関にも行っていただき、いくつかの検査を受けて色の識別力等も確認をしていただきました。
これらの材料を元に、認知症の周辺症状が快方に向かうには、どこにどのような色彩を用いると良いか、長期にわたり計画を立てて実行しました。
認知症の周辺症状は人によって異なります。その方のどんな状況をどのように快方向へ向かわせるとQOLが高まるのか、施設のご担当者様や所長様と一緒になって相談しながら進めていきました。
そして具体的な色彩変更計画を立て、衣服や身の回り品、寝具や室内インテリアを、期間を区切って色変更していきました。
最終的には工事も入れて、壁と天井も張り替えました。
この取り組みにおいて、担当した私たちも様々な学びと発見があり、コミュニケーションが難しい状態でも色彩から人の状態のヒントを得られることや、行動の変化を促進ができることなど、直に確認できたことが大きな財産になりました。
どうしてこういったことが起こるかと言うと、色彩が心身に働きかけるからです。
そこには科学的なメカニズムがあり、私たちのような色彩の専門職は、そのメカニズムを空間作りや商品作りなどで活用します。
消化機能を高めたい
会話量を増やしたい
入眠を早くしたい
体を柔らかくしたい
イライラを鎮めたい
お薬でも魔法でもないけれど、色彩にはこういったことを促進する働きがあります。
本当に冷え性で悩んでいる人は、下着の色を発色の強い暖色にしてください。
こういったお話をすることもあります。
色の心身に与える影響は、なんとなく気分的なものではなく、電磁波の波長や生理作用、脳科学が関連する科学的なものです。
ファッションやデザイン、アートや美容など、華やかなイメージも強い色彩ですが、医療や福祉、介護保育の分野との親和性も高く、効果的に取り入れることで対象者の方の日常がより快適になることが少なくありません。
そんな色彩の働きが、もっと多くの人に届けばいいなと思って、そんなお話ができる同業者さんを育成していっています。