フレンズオンアイス、8月27日夜公演「Birds,Makeba」。

一度だけ観たこのナンバー、すごいと思いつつ、言語化できないので記事にしていなかったんだけど。


その後、大輔さんが「ファントム」を観劇したという情報が流れてきて、思ったのだ。

そういえばMakebaって、哉中さんと大輔さん、そのどちらかがどちらかをリードするような形になっていなかった、と。そしてそこが魅力だったな、と。




「オペラ座の怪人」を作り上げていく最初の頃。その様子が配信されたのはいつだったっけ?(過去記事見たら10月だった)

配信映像でズエワコーチは「これはダイスケのストーリー」と語った。そして、ファントムは「君を輝かせるから」とクリスティーヌに呼びかける、そんなことを言ってたような。いや、かなり記憶が曖昧なんだけどね。

それを観ながら思ったのだ。

「そうか『オペラ座の怪人』って『マイ・フェア・レディ』なわけか。」

というか祖型のギリシャ神話のピグマリオンかな。理想の女性を彫刻した男が、その彫刻に恋をしてしまう話。こういう話がその後も出てくるというのは、多くの男性には、若い女性を自分の好みに作り上げ、その女性を伴侶にしようとする願望があるのだろうか。「氷艶2019」の原作の「源氏物語」だって源氏と紫の上の関係はその形だし、日本にはその変形の「痴人の愛」という小説もあるし。

ただ、そんな願望って大輔さんにあったっけ?


「氷艶2019月光かりの如く」の光源氏と紫の上はそういう関係には見えなかったし、大輔さん自身にもそういう願望はあまりない気がする。食虫花ならぬ食人花でも、食べる方か食べられる方かといえば後者だと言ってるしね。リードして、道を示して、他者を輝かせる。それは他者を自分の好みの型にはめこみ、相手を自分の世界に取り込んでしまうことでもある。オペラ座のファントムはそういう存在だけど、大輔さんはそういう心理の人だったっけ?

とはいえ、哉中さんをアイスダンス競技の世界に、それも以前より注目を集める状況に導いたのは大輔さんである。そう、プリマドンナたるべくリードしたと言えるわけで、そういう意味では「オペラ座の怪人」が「ダイスケのストーリー」というのはありなんだろう。

ただ、「オペラ座の怪人」の中にある「ピグマリオン」物語的なモチーフは、プログラムにどれくらい持ち込まれるのかしらん?とそのとき思ったのである。ファントムのクリスティーヌをリードする者としての存在感。それはどれくらい演じられるのだろうかと。

それが気になったのは、夏にエキシビジョンナンバーの「Love Goes」を観ていたことも大きかったのかもしれない。こちらは、哉中さんが星を指差して大輔さんに示すような振り付けがある。哉中さんが、一緒にやりませんか、と声をかけて、大輔さんにアイスダンスという新しい世界を提示した、そのエピソードを表したかのように。

こちらでは、哉中さんがリードする姿を示しているのだ。


哉中さんが大輔さんにとっての新しい世界を示し、大輔さんは彼女の手を取って示された世界へ誘った。リードし、リードされる相互性。

「オペラ座の怪人」と「Love Goes」はかなだいのその側面を二つに分けて対の物にしたのかな、などと思ったのである。




でも。

「Birds,Makeba」は、そういう「リードする、される」という感覚がなかった。

二人並行で、それぞれ別々の強い線を持つ、独立した存在感の二人が、ただ絡み合う。

そして、それが良かった。




どちらかが前に立つのではなく、この二人は並んでいる。

いや、状況に応じて、どちらかが前に出たり後に行ったりはこれからもするだろうけれど。

それでも、基本は並行、並走していくのかなと思ったのである。




当たり前のように大輔ファンが多い会場で、公演中やその後に数人のファンと会話した。そうしたら「哉中さん、かわいい〜」と会話した人が皆言うのでびっくりした(主に彼女が出たコラボの「O」の話だったけど)。

哉中さんの存在感は、大輔さんを超えることはありえないけれど(ファンだから)、かなり近づいている。

だからこそ二人のプログラムで並走感が生まれるようになったのかな、などと思ったのである。




(このプログラムも並走感あったけどね。「Makeba」ほどではなかった)