さて、一つ前に取り上げたネット記事だが、世界選手権にも触れている。



<引用>
 2019年と2023年の世界選手権は、どちらも埼玉県のさいたまスーパーアリーナで開催された。羽生が出場した2019年の世界選手権は、チケット収入だけで約15億円を稼いだのに対し、彼の引退後に行われた2023年は、10億円にも届かなかった。
<引用終わり>

これ自体は日本スケート連盟のサイトで確認できる。https://www.skatingjapan.or.jp/jsf/の財務および事業のところにある「〇〇年度事業報告並びに決算書類」のリンクをたどればいいのだ。

で、確認すると2019世界選手権入場料収入は1,497,406,474円(平成30年度事業報告)。2023世界選手権は993,907,800円(令和4年度事業報告)。

確かに記事の内容は間違ってはいない(あ、でも10億に届いていないというのなら、2019年も15億には届いていないけどねw)。





しかし、である。一つ見落としがある。
実は、2019世界選手権では、集客の面で2023年より有利な要素が一つある。
以前、別記事に書いたことがあるけれど、競技とエキシビジョンを含めて5日間の開催期間中、2019年には祝日が一日あるのだ。



平日と休日では、当然集客は変わる。休みの日の方が会場に行こうとする人は多いだろうし、休み前の夜も翌日休みだからと動く人が出る。つまり、2019年は羽生くん出場という要素だけで入場者が増えたわけではない可能性がある。(あ、むろん羽生くん人気自体を否定してはいない。他の要素「も」あるというだけのことだ。)

と、いうことで、「やっぱり二つのデータでは足りないな。もう一つ欲しいな。」と思って2014世界選手権の入場料収入を調べようと思ったのだが、ここでつまづいた。
平成25年度事業報告には、「各大会ごとの入場者収入」について書かれたものがないのだ!(前記事のデータが2015年から始まっているのはそれが理由である。)
む、無念…。



で、とりあえず参考になるデータはないかと探して、「特別事業収益」の項を比較してみることにした。

まずは表。


次はグラフ。


2023世界選手権は2014年(開催期間中に祝日がない)と比べても収益が少ない。こちらの方は確かに課題と言っていいかもしれない。

ちなみに2014年の集客のメインは羽生選手ではなく浅田真央選手だろう。
そして男子シングルに限って言えば、欠場した高橋大輔選手の方が集客のメインだったはずだ。
この時期から私はネットで情報を集め出している。怪我ということでチケット放出を考える人たちが出てきて「できれば小塚選手のファンにチケットを渡したい」という動きがあったこととかをリアルタイムで見ている。(あくまでネットでだけどね。リアルで会っている大輔ファンはまだ一人もいない頃の話。)
で、チケットを欲しい羽生ファンが、「小塚ファンに」という言葉に嘆いている様子とかも見かけた。つまり、そのときはまだチケットを手にしていない羽生ファンが多かったのだ。
その後のアイスショーのテレビ番組の構成などでも、高橋大輔選手を押し出した動きがあったのも見ているしね。つまりこのときはまだ、羽生ファンはそれほど多くなかったというか、少なくともチケット獲得の動きはまだ弱かったのだ。

まあ何が言いたいかと言うと、とりあえず2014年くらいの集客を目指していくのが自然だし、無理がないだろうということである。2014は祝日ない大会だったからね。


そしてそのためにはおそらく「他種目が盛り上がる」ことが大事だと思う。

男子は昌磨くんの人気は確実にあるし、若手の選手も伸びてきている。しかし男子が頑張っても、ファンがみな五日間通し券を購入するわけではない以上、別種目のチケットは残る。男子シングルの演技がない日にチケットを購入する人間がいた方が効率がいい。


羽生ロス(があるとして)を埋めるのは、別に男子シングル選手である必要はないのだ。というか、それ以外のカテゴリの選手が出てくることが望ましいのだ。
と、いったことを考えてしまった。




ところで、最後にちょっとばかり憶測をたくましくした話を一つ。
思ったのだ。

2019年と2023年の違いは、2023世界選手権では外国にチケットを売っていないからではないかと。いや根拠がある話じゃない。ただ思ったのだ。なんで2023年の入場者収入、末尾が「00」なんだ?と。



国内戦の全日本選手権の入場料収入は末尾「000」ばかりである。これはチケット代は普通、千円単位にするからである。

一方、ドルでチケットを売った場合、為替レートに従って円換算したら、0以外の数字になる可能性が高い。


つまり2023世界選手権の入場料収入は、「外国で販売した分を含めたが、たまたま入場料収入の末尾が00になった。」のと「日本円のみの取引だったから末尾が00になった」のと、二つの可能性が考えられるのだ。
(「000」じゃないのが気になるが…チケットの払い戻し関連で百円単位が出てきたのかもしれない。)

まあ何がいいたいかというと。

「わざわざ外国から来るのなら、五日間通し券買う人多いんじゃないかな。」ということである。つまり、2019世界選手権の入場料収入がいい理由の一つは「外国人ファンが多く来ていたから。そして外国人は通し券を買う割合が高かったから。」というのも大きい気がするのだ。


私は2019世界選手権のアイスダンスリズムダンスを見ている。下位グループの演技のとき、日本カップル以外で観客の声援が大きかったカップルは中国のカップルだった。掲げられたバナーも結構多かった(しかも国旗ではないのだ、これが)。中国人なら羽生くんのファンでしょ、と思うだろうけど…割と中年男性もいたのよね。

団体旅行っぽい雰囲気で世界選手権を見るツアーでもあったの?という印象だった。

一方、2023世界選手権では、あまり外国人と思える人を見かけなかったんだよね。



2019年の外国人観客は五日間通し券の割合が高かった?というのは単なる憶測である。

ただ、入場料収入を増やす手段としては、東アジアの人達に通し券を売って来てもらうという手があるな、と思ったのだ。日本人がそれほど興味を持たない平日の種目でも「時間開いているから見るか」となる可能性がある。というか見なくても、五日間通し券が売れれば収入としてはそれでいいわけだしね。





個人的には、外国人がいなくても2023世界選手権楽しかったからどっちでもいいんだけどね。そこは日本スケート連盟が考えることではある。