ウチの家電話はいつも留守電にしっぱなしだ。
今ではほとんどスマホにしか電話がかかって来ないし、
たまに家電話に出るとセールスばかり。
本当に用事があるのだったら留守電にメッセージを残すはず。
だから在宅中に電話がかかってきても留守電に切り替わるまでコールが鳴っても受話器を取ることもない。

2017年7月5日、朝の9時前…
その日はやけにしつこく家電話が何度も鳴った。
電話がかかってくる度に留守電に切り替わり、
切り替わるとプツっと切れてしまう。

出勤前の私はうるさく鳴る電話のことなどさほど気にもとめず、

今日はやけにしつこいなぁ〜!!
どーせまた朝から銀行のセールス電話だろうぐらいにしか思っていなかった。

慌ただしく化粧を済ませ、
充電器からスマホを引き抜くと画面にLINEの通知が1通届いていた。


「きっとダンナからだな」


その日の朝7時過ぎ…
私は出張に行っているダンナにLINEを送っていた。


「印鑑持っていった?」


いつもならそんなに朝早い時間にダンナへLINEを送ることはまずない。
どうしても必要な用件でもなかったし、
短気なダンナは朝の忙しいときにそんなLINEをしてくるな!なんて、
またすぐにカッカするに違いないから。

結局探していた印鑑が見つかり、


「お騒がせしました。見つかりました。」


と、最初にLINEを送ってから30分後ぐらいにもう一度ダンナにLINEをしたけど、
最初に私が送ったLINEはまだ読まれていなかった。

マメなダンナはいつもLINEがすぐ既読になる。
あまり放置をされたことがない。
もちろん仕事中なら放置もあるけどまだ朝の7時。


「シャワーでも浴びてるのかな?」


と、なんとなく引っかかるものを感じたけど、
朝の慌ただしさと共に疑問符もいつのまにか消えてしまっていた。

いつもの朝といっしょ…
何も変わりない…

代わり映えのないテレビのワイドショーには、
見慣れたアナウンサーがにこやかにゲストと談笑していた。
テレビ画面のデジタル時計も急かすように数字が変わる。


「早くしないと!LINEは電車に乗ってから読めばいいか」


そのままスマホをバッグに放り込み蒸せるような暑さの中、
私は駅に向かって自転車をこぎはじめた。