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お通夜が終わった時点で疲労困憊…
メンタルも限界まで達してしまい明日の告別式の余力もない…
青色吐息状態でようやく私は帰宅した。
帰宅してもやらなくてはいけないことがまだまだある。
明日の準備はもちろん、
告別式の締めくくりである喪主の挨拶の原稿を書き終えなくてはいけない。
昨晩、喪主の挨拶のネタを探していたら借用書を見つけてしまい、
すっかり原稿どころではなくなってしまったので、
なんとしてでも今晩中に書き上げないといけない。
「早くお皿洗っちゃいなさいよ!」
朝慌てて家を出たので、
朝食で使った食器が洗えないままシンクに放置されている。
「もうお風呂に入らないと明日は今日より早く家を出ないといけないんだから。」
「明日の準備は大丈夫なの?」
「今からでもこれだけ洗濯しちゃいなさい!」
明日の告別式のために今晩も母が家に泊まっている。
「わかってるから、そう次々言わないでよ!」
口やかましい母の言葉が耳障りで、
ついイラつきながらそう言ってしまった。
「まったく!この家はいつも汚いわね!」
神経質な母とマイペースな私…
元々が気が合わないうえに母は毒親だったので、
何かにつけて私のやることが気にくわないことが多い。
数日前に突然ダンナが亡くなってから、
私は食欲もなく眠れない状態のなか葬儀の準備に追われ家事なんて後回し。
部屋を見渡すと確かに散らかっている。
でも、ぜんぜん片付ける気力も時間もなかった。
母はいつもの調子で文句を言いながら雑に取り込まれた洗濯物を畳み始める。
「あんたは昔っから要領が悪いのよ。
だいたいね………」
クドクドクドクド
ガミガミガミガミ
お約束のお説教が続く…
疲れすぎてて反論する気力もない…
もう…どうでもいい
なんとでも好きに言えばいい…
というより、
娘がここまで憔悴しきっているというのに、
どうしてそう次から次へと手榴弾を投げ込んでくるのだろう?
なんで昔から優しい言葉をかけて欲しいときに、
いつも母は怒るのだろう?
「バァバ!
ママはパパが突然亡くなってどれだけ大変な思いのなかにいると思うの?」
突然、たまりかねた長女が母に向かって声を荒げた。
「ママはね、ずっと寝てないんだよ!
それなのに今日のお通夜だって喪主だから最後まで頑張ったんだよ!
なんでバァバはいつもママにそんな言い方しか出来ないの?」
母は呆気にとられて洗濯物を畳む手が止まったまま、
目の前に立ちはだかっている長女を見上げている。
「少しはママに優しくしてあげなよ!
こんなときなんだからさ!」
キッチンでお皿を洗っていた私は思わず手が止まった。
「部屋が汚いからそのまま言っただけでしょ!」
バツが悪くなった母は急に立ち上がってお風呂場に行ってしまった。
「ママ、気にしないほうがいいよ!
バァバはいつも思いやりがないんだから。」
そんな長女の言葉に鼻の奥がツーンとする。
いつのまにか長女はすっかり大人になっていた。
逞しく成長した長女を目の当たりにして、
私はココロの緊張が少しほぐれていくのを感じていた。