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『今日でダンナは荼毘に付されてしまうんだ…』
そんな事をぼんやり考えながら、
ハンガーにかかっている喪服を手に取る。
昨日のお通夜ですっかりお線香の匂いが染みついてしまった喪服…
この喪服にまた袖を通すのかと、
そう考えただけで気持ちがずっしり沈んでいく。
「テレビの音、もっと大きくしてよ!」
つい1週間前まで、
ダンナはこのリビングで寝っ転がりながらテレビを観ていた…
「おーい!歯磨き粉取って〜!」
そして…
先週のこの時間には、
出勤前にシャワーを浴びるダンナの大声が廊下に響いていた…
1週間前まで…
たったの1週間前までダンナは確実に生きていたのに、
今日の夕方にはその肉体も消えてしまうなんて…
そろそろ替え時の毛が開いてきた歯ブラシ…
少ない髪の毛を一生懸命逆立てていたヘアジェル…
何故か内側ばかり底が磨り減っているお気に入りのスニーカー…
全部1週間前と何も変わっていないのに、
残像だけが残り持ち主が忽然と消えてしまった…
居て当たり前だった人が突然、
しかもこんなに呆気なく居なくなってしまう…
それって…
一体どういうことなのだろう…
私は未だ自分の身に起こってることが全く信じられなかった。
「豪太おじちゃん、そろそろ迎えに来るよ」
次女の呼びかけで我に返り、
昨日の朝と同じようにバタバタ荷物をまとめ始める。
「今日も一日がんばろうね!!」
娘たちにそう声をかけ、
私たちは慌ただしく家をあとにした。
斎場に到着すると、
斎場内に宿泊していた義父母や親戚の方たちは既に支度が終わって部屋で荷物の整理をしている。
「今日もよろしくお願いします。」
そう義父母に挨拶すると義母の様子が変だ。
「朝起きて、賢治に話しかけてみたんだけど…
起きなくてね…
やっぱり死んじゃったんだね…」
葬儀会場の隣の部屋に宿泊していた義父母は朝起きるとすぐにダンナに会いにいったらしい。
昨日と変わらず柩の中で眠る息子…
そんな息子と改めて対面した義母は、
やり切れなさから涙を止めることが出来なくなってしまったようだ。
義妹がその様子に気づき、
義母をそっと部屋の外に連れ出す。
義母のことが心配でたまらなかったけど、
告別式の時間が近づき私は参列者の対応に追われ始める。
私は後ろ髪を引かれる思いで義母の背中を見送るしかなかった。
こうしてたくさんの哀しみに包まれながら…
告別式は開式された…
※先ほど間違えてこの記事をアメンバー限定記事で投稿してしまいました
お知らせがいってしまった方、申し訳ありませんでした