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今日の告別式は、
告別式と初七日の法要を一度で済ませてしまうことにしていた。

ダンナが亡くなってから1週間が過ぎたので、
改めて初七日の法要を執り行うよりも、
今は告別式の時に一度に済ませてしまう人も多いそうだ。

ふと、参列者の席に目をやると、
義母が一番前の親族席に座り首をうなだれている…

告別式が始まる寸前まで泣き崩れていた義母は、
義妹に肩を抱きかかえながら席に着いていた。

元々小柄な義母が更に小さく見える…

時折震える義母の背中を垣間見ながら、
ダンナの実家で義母とダンナが楽しそうに話していた時の様子を思い出す…

ダンナは自分の実家に帰ると人が変わったように優しくなった。

そして義母のことを何より大切にしていた。

早く言えば典型的なマザコン(笑)

義母に優しくするのと同じように私にも優しく出来ないものかねぇ〜なんて、
いつも義実家へ帰るたびに思っていたけど、
ダンナは血の繋がりがない人には優しく出来ないのかもしれない。(苦笑)

でも…

こんなに早くダンナが亡くなってしまうなら、
それで良かったのかもしれない。

実の母には冷徹で嫁に甘々のダンナより、
親を大切に出来る人のほうが私はやっぱりいい。

それに親より先に亡くなるということは最大の親不孝。

ダンナも義父母より先に逝ってしまったことを悔やんでいるに違いない。

だからこそダンナが生きている時、
私よりも義母を大切にしていたという事実が、
これからの義母にとって唯一の救いになるはずだ。

これで良かったんだ…

と、私は改めて思い直した。


告別式がしめやかに執り行われていくなか、
読経をBGMにしていると、
頭の中に様々なダンナとの回想シーンが思い浮かんでくる…

出会ったときのこと…

告白されて付き合い始めたときのこと…

一緒に初めて旅行に行ったときのこと…

プロポーズ、結婚式…

そして長女が生まれ…次女が生まれ…

まるで頭の中に映画館でもあるかのように次々と想い出がスクリーンに映し出されていく… 

『想い出は美しすぎて』という古い唄があったけど、
何故か思い浮かぶのは楽しかったときのことばかり…

私は次第に溢れる涙を抑えることが出来なくなってしまった。

25年で結婚生活を終えることがわかっていたら、
ダンナは不倫をしなかったのだろうか…

せっかくの結婚生活のほとんどを、
ダンナに背中を向けて過ごしてしまった…

そうすることしか出来なかったのだから悔やんでも仕方ないけど、
あの不倫が発覚する前までもしタイムマシーンで戻れたら?…

私たちは良い夫婦になっていたのだろうか?

そんなことばかり考えているうちに告別式も終盤に差し掛かる…

参列者の方もお焼香を終え読経が終わってしまった…


「それでは本日参列されました皆さまに向けて、
喪主よりご挨拶をさせていただきます。」


司会者の方からの声に、
緊張で手が震えながらマイクの前に立つ。


「本日は、ご多忙のなか、夫、賢治の葬儀にご会葬いただき、誠にありがとうございました。」


こうして…


とうとう…


喪主の挨拶が始まった…