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「本日は、ご多忙のなか、夫、賢治の葬儀にご会葬いただき、誠にありがとうございました。」
喪主の挨拶が始まった。
緊張で手が震え声が上ずる…
「お陰様をもちまして、
亡き夫の葬儀も滞りなく済み出棺のはこびとなりました。
夫・賢治は7月5日の朝、
出張先で体調不良に陥り緊急搬送されましたが、
手当の甲斐もなく、
午前9時56分…息を引き取りました。
三度目の脳出血でした。
夫は2012年の冬に初めて脳出血を起こし入院しましたが、
その後、後遺症もなく奇跡的に回復。
ですが、その2年後の2014年冬に二度目の脳出血を発症。
その際にも極僅かな後遺症のみで奇跡的な回復を見せ、
二度目ということもあり、
今まで以上に夫は自分なりに健康に留意した日々を過ごしておりました。
今回、三度(みたび)の脳出血に倒れ、
更なる奇跡を願いましたが、
その願いは叶わず53歳という短い生涯に幕を下ろしてしまいました。
戦国武将が大好きで歴史おたくでもあった夫にとって、
◯◯城はお気に入りのお城のひとつでもありましたが、
奇しくも夫が搬送された病院は◯◯城のすぐ目の前。
志半ばでの絶命は夫も無念である事に違いありませんが、
大好きな◯◯城の側で生涯を終えるという実に夫らしい最期は、
至極幸せだったのではないかと思っております。
これからは夫が遺してくれた、
夫が確かに生き抜いたという証でもある最愛の娘たちふたりと共に手を取り合い、助け合い、
夫のぶんまで悔いのない人生を歩んで参りたいと思っております。
どうぞ皆さま、
今後とも私ども母娘にご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。」
途中、涙が溢れて読み飛ばしてしまったところがあったり、
最後のほうはほぼアドリブでメチャメチャになってしまったけど、
なんとか最後まで無事に挨拶をし終えることが出来た。
「それでは間も無く出棺のお時間でございます。
どうぞ皆さま、故人さまに献花をお願い致します。」
出棺に向けて参列者に花が配られ、
柩の中で眠るダンナの顔の周りが色とりどりの花で囲まれ始めた。
「賢ちゃん…安らかにね…」
「ゆっくり休めよ!」
「こんなに早く逝きやがって!
天国でじぃちゃんに叱られてこいよ!」
参列者それぞれの想いと花で柩の中が埋め尽くされ、
柩の中のダンナの顔が心なしか和らぎ微笑んでいるように見える。
最後に義妹、姪っ子と甥っ子からの手紙…
そして私と娘たちの手紙をダンナの顔の傍に置く…
「パパ…天国に行ったら読んでね…」
「パパありがとう!大好きだよ!」
「パパお疲れさまでした…
どうか…ゆっくり休んでね…」
娘と共に花で囲まれたダンナに…
そう言葉を贈った…
そして…
次女が書いたこの掛け軸…
『大器晩成』
ダンナの口グセがこの『大器晩成』だった。
ダンナが仕事に行き詰っていた時、
書道コンクールに提出する課題を考えていた次女に、
ダンナが書いて欲しいと頼んで書いたのがこの掛け軸。
コンクールでは入賞出来なかったけど、
ダンナはこの掛け軸をとても気に入っていて自分の部屋に飾って毎日眺めていた。
「俺は大器晩成だから!」
それが口グセだったけど…
残念だったね…パパ…
そして柩の蓋は閉じられた…
※最後までお読みいただきありがとうございます
喪主の挨拶ですが、中略はあるもののほぼ原文のままです。
疲労で思考が回らない中書いていたので原稿はグチャグチャ
書き残しておきたくてブログの場をお借りしました。