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「パパ、おはよう!」


朝起きると祭壇のダンナの遺影にそう声をかける。

水を替え、お線香に火をつけ手を合わせる。

祭壇にダンナの遺骨が置かれてから、
それが私の朝の習慣になった。


「今日も暑くなるのかな?」


間もなく四十九日…

四十九日には納骨をするため、
ダンナの遺骨が自宅に居るのもあとわずか…

そう思うとなんだか少し寂しい気持ちになる

遺骨には魂が無くただの抜け殻というようなことを聞いたことがあるけど、
それでも私は毎日ダンナの遺骨と遺影に向かって話しかけていた。


ある日の朝…


私はいつものようにお線香に火をつけ手を合わせる。

長女はとっくに出勤したけど、
次女は学校が夏休みに入ってからいつまでたっても起きて来ない。

まぁ〜大変な事があったあとだし、
朝寝坊したいならとことんするのも良しと、
私は特別次女にうるさく言うような事はしなかった。


「おはよー」


手を合わせ終わると次女が珍しく、
まだ眠そうな目をこすりながら部屋から出てきた。


「こんなに早く起きるなんて珍しいねー
どうしたの?」


起きてきたもののぼんやりしながら壁にもたれ掛かり体育座りをしている次女。


「パパの夢みたよ」

「パパの夢?」


洗濯機を回しに行こうと立ち上がった私は、
次女の話しの続きが気になって祭壇の前に座り直した。


「どんな夢?」

「ただいまーってパパが帰ってきて、
パパは柩の中で着ていたスーツにネクタイで…」

「それで?」

「私とママとお姉ちゃんが玄関先でパパに向かって、どうして死んじゃったの?って言ってた」

「うん…それでパパはなんて言ったの?」

「ごめん…ごめん…って、
そう言いながらパパは自分の部屋に入っていって…
私とママが部屋に座っているパパの手を掴みながら、
なんで死んじゃったの?って…」


そこまで話すと
次女の顔がどんどん歪んでいった…


「パパの手が…
掴んだパパの手が凄く冷たくて…
それで…パパ…
やっぱり死んじゃったんだなって…」


次女の目からはみるみる涙が溢れてくる…


「パパは…何を言ってもごめん…
ホントにごめんねって…
それしか言わなくて…」


次女の嗚咽が号泣に変わったころ、
私はたまらなくなって次女を抱きしめた。


「うんうん…そっか…
きっとパパは◯◯(次女)のことが一番心配で謝りにきたんだよ。
そんな夢みたら哀しくなっちゃったよね…」


声をあげながら泣く次女をギュッと抱きしめながら私もいつのまにか泣いていた…

次女はダンナが亡くなった直後も不思議な体験をしている。

ダンナはきっと一番次女のことが心配で、
そして無念だったに違いない…

次女の夢にダンナが現れたのは、
そんなダンナの想いからなのだろう…

今この瞬間…

きっとダンナも天国で一緒に泣いている…

天国からの涙は…


17歳の次女にとって…


あまりにもツラすぎた…