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※この先、リアルな表現が含まれています。
死別後間もない方、
私と似たような状況でご主人を亡くされている方は、
フラッシュバックを起こす可能性もありますので読むのをお控えください。

 














『中里さま

私、ご主人様にご利用いただいていた
◯◯ホテル責任者の山田と申します。』


私はダンナが倒れた時のことがどうしても知りたくて、
反対する娘たちにナイショで、
ダンナが宿泊していたホテルにメールで問い合わせをしてしまった。

そして…

その返事がようやく届いた。


この度は誠にご愁傷様です。ご主人様のご冥福を心からお祈りしております。

また、ご返信が遅れたことをお詫び申し上げます。

ご主人様の前日、当日の状況についてご報告申し上げます。

前日(7/4)のチェックイン時(21時過ぎ)のご様子は特にお変わりなくチェックインを担当したスタッフによると、お元気そうで気さくな方だとの印象だったそうです。

館内でのご飲食の記録がございませんので恐らくお食事を召し上がってからチェックインされたものと思われます。

その後も特にお変わりはなくお風呂を楽しまれてお休みになられたようです。

翌朝(7/5)の朝7時過ぎにお部屋から呻き声が聞こえるとのことでスタッフが駆けつけ、お部屋の中で嘔吐をして咳き込んでいる中里様をみつけました。

ご利用の履歴、嘔吐の内容から判断するに当日はまだ何も召し上がっていないようでした

その時の状況は正直申しますとかなり苦しんでいるご様子だったとのことです。

すぐに救急車を呼び、救急車が来るまでの間は背中を叩くなどしながら呼びかけていましたが咳が止まらず苦しげで返事をできる状況ではなかったようです。

5分ほどで救急隊が到着し救急車で運ばれました。その後の状況についてはこちらとしましても把握できておらず、奥様からのお電話で亡くなられたことを知りました。

今回のメールで当ホテルを大変お気に召して頂いていたということを知り、責任者の私をはじめとして従業員一同大変心苦しく思っております。

何か事前の兆候はなかったか、発見時にもっと適切な対応はなかったか、など自問自答し考えることもございます。

また何かお手伝いできることがございましたらご遠慮なくお申し付けください。

最後になりますが改めて哀悼の意を表すとともにご主人様のご冥福をお祈りいたします。


◯◯ホテル 山田』   
※ほぼ原文のまま


メールの途中から涙で文字が歪み読み進めなくなってしまった…

何度も何度も涙を拭いて
何度も何度も最初から読み直す…


「苦しかったんだ…やっぱり…
苦しかったんだ…」


私は独身時代の頃からダンナと30年近く一緒に過ごしてきたけど、
ダンナが吐いたところを一度も見たことがない。

ダンナはどんなに酔って気分が悪くなっても
何故か決して吐かなかった。

そのダンナが吐いていたなんて…
きっと相当苦しかったのだろう…

それに脳出血で吐き気を催すのはかなり深刻な状態らしい。

今までダンナは二度脳出血を起こしてきたけど、その時に吐くことはなかった…

だから…

その時点でもう…

絶望的だったのかもしれない…

泣きながらスマホを握りしめていると、
私の異変に気づいた次女が心配そうに私の顔を覗き込む。


「どうしたの?」

「うん…実はね…」


私は正直にメールのことを話すと、
次女は黙って送られてきたメールを読み始めた。


「パパ…苦しかったんだね…」


次女もメールを読んで泣いていたのかもしれない…

でもそんな様子を直視するのがツラくて、
私はわざと次女から視線を逸らしていた。

長女にも会社から帰宅後、
正直にメールのことを打ち明けたけど、
次女とまるっきり同じ反応だった…


倒れた時のことを知るというのはやっぱり覚悟が要る…

でも…

ダンナは何の覚悟も心構えもないまま突然亡くなり、
最期に言葉を遺すことも
家族にも看取られることも出来ずに逝ってしまった…

だからこそ少しでも
ダンナの最期の様子を知りたかった…

苦しまずに逝けたのだろうか?
ということが一番気がかりだったから事実を知って胸が苦しくなったけど…

それでも…

ダンナの最期の様子を知ることが出来てやっぱり良かったと思っている。

もし…

ダンナがビジネスホテルの個室に泊まっていたら、
きっとダンナは死後に発見されていただろう

でもダンナが好きなカプセルホテルだったからこそすぐに発見してもらうことが出来た。

そして…

そのお陰でダンナはちゃんと病院で亡くなることが出来た。

それに救急車が到着するまでのあいだ、
スタッフの方がダンナの傍にずっと寄り添って介抱してくれていたなんて…


ダンナはたったひとりでこの世を去ったわけじゃなかった…


私たち家族はダンナの臨終に間に合わなくて看取ることが出来なかったけど、
ダンナはひとりではなく人の温もりに支えられながら人生の終幕に向かっていけたのだ…

その事実に…
私はどんなにココロが救われたことか…


ホントに…


ひとりぼっちじゃなくて良かった…


ホテルのスタッフの方には感謝してもしきれない…



ダンナの傍にずっと寄り添っていただき
ホントに…ホントにありがとうございます。
心から感謝いたします。




このメールは今も私のココロの支えになっています…