愛媛新聞 2012.1.1.

(抜粋)


キーン:桜は東北がもっともきれいだと言われますが

私もそう信じるようになりました。

黒い森の中であでやかに咲く東北の桜にこそ

桜の本質を見る気がします。

千本桜より森で光を放つ1本の桜

その姿が東北的にも思えます。


池澤:「深草の野辺の桜し心あらば

今年ばかりは墨染めにさけ」

古今集ですね。大事な人を亡くして悲しいときに、明るい色の桜は

咲いてほしくないという気持ちを自然に投げ掛けている。

それが去年はふさわしいと思っていました。

それでも桜はきれいに派手に咲く。

そして、それでよかったんだと安心もする。

複雑な気持ちでしたね。


キーン:ヨーロッパの人はものがいたずらに変化することを

喜びません。古くはギリシャ時代から「永遠」を意識し

大理石の神殿を建てました。

どれほど時間がたとうと変わらない何かに

希望をたくしたのです。

一方で日本人はものが変わっていくことを受け入れ

場合によっては喜びを感じてきました。