朝日新聞 2012.1.11
沢木耕太郎
略
最後の最後まで物語が
どこに向かおうとしているのかわからない。
しかしだからといって退屈するということはない。
1つ1つのシーンに、あたかも事実にささえられたような
リアリティーがあるからだ。
わからないまま最後まで行き、
1発の銃声で終わる。
そのとき、2時間にわたって溜め込まれていた
「わからない」という無方向感が
一挙に前の時間に向かって逆流し、
物語を手繰り寄せる。
これが第1作という監督のデヴィッド・ミショッドの
その手際よさは鮮やかである。