満月がおちる夢を見た | 戯言騙り

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ひとり言おきば
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満月がおちる夢を見た。
目覚めたとき周囲はまだ真夜中で、私の様子に気づいた君は「どした?」って少し目をこすりながら尋ねてくれた。
なんでもないよ、というのが私は精一杯で、そんな夢をみたなんて、私を察して目覚めてくれた君には言えなかった。
部屋には白々と月明りが差し込んでいて、君の白い胸板とくしゃくしゃとした髪を可視化していた。
君の胸の中に溺れてしまいたい。厚い胸板に、逞しい二の腕に包まれて、優しく頭を髪を撫でられて、無償の肯定の中で密やかな眠りにつきたい。何にも責められず、退けられず、ただそのままを続けてくれる認識の内で。
得も言われぬ恐怖が意識に侵入を試みてくるので、私は自己防衛のために君の腕のなかにうずもれた。
どうかこの呼吸を許してほしい。何者にもなれないこの存在を、視界の端で呼吸させてほしい。