和香堂ブログ22 熱中症から身を守るためにできること

 

 大西です。残暑お見舞い申し上げます。

 昨年の夏の暑さは厳しかったですね。そして、今年の夏は昨年を超えているのでは

と思うほどに、すさまじい暑さが続いていますね。皆さん、体調を崩していませんか

 

今年の夏は、熱中症で救急搬送される方のニュースを多く耳にします。私も何度か熱

中症の症状を経験しました。

 

 バスと電車を乗り継いで外出したある日のこと。この日は日差しが目に焼き付くほ

ど強く、体温を超える暑さでした。炎天下で歩いた時間はそれほど長くはありません

でした。目的地到着後は、エアコンのよく効いた涼しい室内で2時間ほど椅子に座っ

ていました。そして家へ帰ろうと椅子から立ち上がった時、右足が動かなくなってし

まいました。ももの筋肉が硬直してしまったのです。痙攣は起きていなかったので、

右足の痛みをかばいながら駅まで歩いて、無事電車で帰宅できました。

 

 熱中症ってこんなにきついんだ、と痛感しました。

 熱中症の応急処置として、私が助けられた対策をご紹介します。

 

 自動販売機で冷たいペットボトルを買い、首に当てたり、腕に挟んだりしながら歩

きました。すぐに、体の芯がすうっと楽になるのを感じました。体表付近に太い血管

があるところを冷やすと、そこを流れる血液が冷やされ、冷やされた血液が全身を循

環して深部体温を下げてくれるのです。人目を気にしなければ、わきの下や鼠径部(

ももの前面の付け根)にペットボトルを当てたいくらいでした。

 

 また、歩きながらウエットティッシュで手のひらや腕、首筋、頬や額などを拭きま

した。すぐに体表の熱が引いていくのを感じ、楽になりました。体表を湿らせると、

その水分が蒸発する時に気化熱として体熱が放散されるので、深部体温を下げるのに

役立つのですね。

 

 ところで、手のひら・足の裏・頬などの皮膚にある血管、動静脈吻合(どうじょう

みゃくふんごう、別名AVA)を知っていますか。

 

体内の血管は一般的に、動脈→細動脈→毛細血管→細静脈→静脈とつながっていきま

す。体に必要な酸素や栄養素などを動脈血から組織に送り、組織で不要になった二酸

化炭素や老廃物などを静脈血に送るのに適した仕組みです。「和香堂ブログ18 鍼

灸マッサージと血液・リンパ液の流れ」でも書かせていただきました。

 

この仕組みと異なり、動静脈吻合は、毛細血管を間に挟まずに、細動脈と細静脈がつ

ながっている部分です。体温調節に有利な仕組みになっています。暑い時には皮膚の

細動脈の血管が拡張して動静脈吻合が開き、より多くの血液が流れます。これにより

皮膚からの体熱の放散が進み、冷やされた血液が細静脈へ流れて全身を巡り、深部体

温を下げるのに役立っているのです。動静脈吻合のある体表を冷たいものや水分など

で冷やすことで、効率的に血液を冷やすことができ、さらに早く深部体温を下げられ

るのです。

 

 熱中症の予防には、水分補給が不可欠ですね。軽い熱中症の段階ではのどの乾きを

感じにくいのだとか。熱中症の症状が出る前に、水分補給を心がけたいものです。冷

たい飲み物の方が体内への吸収がよいのですが、一度に大量に飲んでしまうと胃腸へ

の負担が心配。こまめに少しずつ飲むのが体によさそうですね。

 汗をかくことで塩分・ミネラルも失われがち。水分だけでなく、塩分・ミネラル、

エネルギーになる糖分補給も、忘れず適度に摂取してみてくださいね。

 

 患者のみなさんに、熱中症対策にどんな水分補給をしているか、お聞きしています

。市販の経口補水液がお気に入りの方。麦茶に塩ひとつまみを入れる方。梅干しを漬

けた時にできる梅酢を愛飲している方。みなさん工夫されているようです。

 私は10年以上前に知人に教わった飲み物をずっと、暑さで参った帰宅した時に作

って飲んでいます。レモン果汁+砂糖少々+塩少々。これを水割りし、氷を入れてい

ただきます。とってもすっきり、リフレッシュ。

 

 なお、熱中症の水分補給にカフェインやアルコールを含むものは向きません。カフ

ェインやアルコールには利尿作用があります。飲んだ飲み物の量異常に尿として水分

が排泄されてしまい、返って水分不足に陥ってしまいます。

 

 それにしても、今年の私はどうして何度も熱中症になってしまうんだろう? 昨年

の私は今年ほど暑さに弱くはなかったはず。

 

 熱中症の予防には、暑熱順化(しょねつじゅんか)も重要なのです。

本格的な暑さが来る前に、適度な運動・入浴などで、体を暑さに慣れさせておくと、

暑い時の体熱の放散が早くなり、深部体温が上がりにくくなるのだそうです。昨年5

月の「和香堂ブログ6 訪問マッサージで心も体も前向きに」の冒頭で、暑熱順化の

大切さをお伝えした私自身が、今年は暑熱順化を実践できていませんでした。昨年の

春より明らかに今年の春は運動不足。入浴時間もかなり短縮。暑熱順化の重要性を、

身をもって知りました。今年の経験を教訓に、来年はしっかりと暑熱順化に取り組み

たいです。

 

 暑さを乗り切るには、栄養バランスのよい食事や十分な休養が欠かせません。無理

のない範囲で心がけていきたいものですね。

 

 夏の食事にぜひ取り入れていただきたい、夏野菜。夏野菜を食べることで、夏に体

内で不足しがちなビタミン・ミネラルなどの重要な栄養

素をおいしく補えます。「和香堂ブログ10 意外と助かる夏野菜」で旬の夏野菜の

すばらしさをご紹介しています。

 

 今回は熱中症の予防や対策の方法をあれこれご紹介しました。まだまだ猛暑が続く

ことでしょう。熱中症から身を守るためにできること、実践していただきたいと思い

ます。

 

 猛暑の続くこの時期、多くの患者さんの首・肩・背中などがかちかちに硬くなって

います。熱帯夜で寝苦しいのかな。暑さで体力を消耗しているのかな。心配は尽きま

せん。鍼灸マッサージで少しでも心身の疲れを軽くして、かちかちの筋肉の緊張をほ

ぐして、より快適に日常を過ごしていただければと思います。どうか暑さに気を付けて

ご来院ください。