醤油蔵でうたた寝 | ホームホスピス われもこう

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熊本にある介護施設「ホームホスピス われもこう」のブログです。


 今日は金曜日。明日は土曜日。われもこうで仕事をして、12時になったので昼ごはんを食べに車で出かけました。いつもは弁当ですが今日は外食。軽く昼食を済ませたあと、いつもの癖でちょっと道草を。熊本市の西方、小島(おしま)というところに立ち寄りました。訪ねるのは初めてです。

 そのあたりに明治天皇行在所(あんざいしょ)とやらが近くにあり、明治のはじめ頃、この小さな元港町に軍艦二隻を伴って立ち寄られたそうです。その宿泊施設が行在所で、今も保存されています。

 この行在所とはちょうど川を挟んで反対側に、面白そうな路地がチラと見えたので、小橋を渡り、ひさしが重なり合いそうな狭い通路を右に左にと進むと、大きな古びた建物が目の前にいきなり迫ってきました。

 男の人や女の人が忙しそうに働いています。右手の建物にぽっかりと大きな口が空いていたので、立入禁止とは書いてなかったので入りました。すると奥の方で女の人が二人、忙しそうにいろいろな物を台の上に配列しています。尋ねると、近々にイベントを行うのでその準備だとおっしゃいます。

 立ち話をしおわってからふと横を見やると「カフェ」という字が目に入ってきました。近づいて行くと、だだっ広い部屋らしい空間の中から青い服を着た女の人が、引き戸を開けて首をひょこっと突き出してきたので、「ここは入っていいところですか」、と聞いてみました。何やら奥の方で女の人が途切れなく話すような声。

 「どうぞ」と促されてなかに入ると、二人の女性が飲み物を前にして話し込んでいる様子。右奥の座り心地の良さそうなソファに席を取りました。内部は窓のない板壁。天井はやけに高く、柱むき出しの吹き抜け。壁側の木製の書架に置かれた一冊の写真集に目が止まり、席まで持ってきました。

 ページをパラパラとめくっていると、先ほどの青い服の女の人が、私のそばに膝まづいて、「何になさいますか」と注文を取りに来ました。ジャズの曲が静かに流れています。メニューはいろいろ。醤油味のケーキとかもあります。醤油味のソフトクリームも。なんと風変わりなメニュー、あっけにとられてしまいそうです。そう、ここは醤油の醸造蔵なのです。この建物全体はなお現役で、今も日々醤油造りが行われているらしいのです。それにしてもいやに落ち着く雰囲気。

 コーヒーを飲みながら、ジャズを聴く、まるで異次元空間。眠気覚ましのはずのコーヒーの効果もなく、急に睡魔がおそってきて、写真集を抱きかかえたまま心地よいソファで思わず眠り込んでしまいました。小一時間ほどで目が覚めると、先ほどの女性二人の客は、まだ延々と話し込んでいました。よく話が続くもんです。

 実際は短い時間でしたが、なんとも、なんとも不思議なひとときでした。浜田屋、HAMADAYAさん、また来ます。いただいたパンフレットには、「浜田屋は変わり続けます。そして浜田屋はずっと変わりません。」そうだ、そうだ、万事そうでないといけない、陰ながら応援しますよ。うたた寝までさせていただいてありがとう、浜田屋さん。
    (南風)