認知症が治療可能に? | ホームホスピス われもこう

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熊本にある介護施設「ホームホスピス われもこう」のブログです。

認知症が近い将来、治療可能になるかもしれません。

 

認知症は大きな視点から見れば、人間のからだの老化の一環です。足腰の筋肉、骨、その他様々な臓器が老化で思い通りに働かなくなるように、脳が本来の働きをすることができなくなっていく障害です。人によってそれの有無・遅速に差があるわけです。これを障害というべきか、老化というべきかは見方の違い、視点の違いです。

 

脳以外のからだの組織は、古い細胞が死んで絶えず新しい細胞が再生し、新陳代謝を繰り返します。乳幼児ほどその新陳代謝が盛んなことは誰もが知るところです。これに対して脳の細胞は一度壊れたら再生しない、というのが定説でした。

 

ところが、この定説をくつがえす証拠、つまり神経(細胞)が新たに生まれす(新生)の可能性を示唆するような証拠が、近年少しずつ示されるようになってきています。その証拠は、大脳辺縁系に属する古い大脳皮質(古皮質)というところで見つかってきています。

 

この部分は海馬と呼ばれており、脳の塊全体の中では奥の深いところにあります。その形がギリシャ神話に出てくる海の怪獣、海馬(セイウチ、トドの別称でもあります)の下半身の形に似ているところから、「海馬」と名付けられています。

 

海馬は情動とそれに続く行動と関係していて、ここに何らかの障害、外的なショックや過度の心理的ストレスで一時的な機能不全が生じたりすると、情動や行動を自らコントロールすることが困難になります。

 

海馬はこのような働きに関係するとともに、短期記憶の機能(はたらき)も担っていて、短期記憶の障害が特に顕著である認知症と深く関わっているらしいのです。高齢者の行動を観察していて、今夕食を食べたばかりなのに、食べたことをすっかり忘れて「まだ食べていない」という発言がくり返しある場合、この短期記憶の障害が生じていることが疑われるのです。ノートパソコンでいう「メモリ」(作業のための一時的記憶領域=ひとまとまりの作業が終わって電源を切れば、記憶は消失します。)に例えられるのがこの海馬という部分でしょう。

 

さて、定説をくつがえす証拠が海馬で見つかっているという専門家らの報告に沿うさらなる証拠が多数見つかるようになり、神経(細胞)の新生のメカニズムが明らかにする研究が進めば、認知症の主障害である記憶障害に対する新しい効果的な治療法の開発が進み、神経(細胞)の新生技術による認知症の治療は夢ではなく、現実のものになってきます。

 早くその日が来ることを祈ります。

                                  (南風)