こんにちは、アリーシャです。

 

先日読書録にあげた『夏物語』by川上未映子があまりにも刺激的で、子どもを産むこと、そして、自分自身もなぜ子どもを産もうと思ったのかについて、頭の中でグルグルと考えることが止まらなくなってしまいました。

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まず最初に、私が娘に自分に出来るだけのことをしてあげたいと思うのは、私のような人間の子どもとして産んでしまったことに対する贖罪なのかもしれない、ということにこの本を読んで気がついた。

 

私はずっと私のような遺伝的にも外見的にも性格的も有利とは言いかねる資質をもった母親をもった娘に対してすまない、という思いを抱えてきたのだと思う。だから、私の贖罪として、生きていくのに不利な私の遺伝子をついでしまった娘ができるだけ生きやすくなるよう武器を与えたいと思った。私にできることをして能力を底上げしてあげたいと思った。だからこその教育ママ化だったのだと思う。

 

私たちはなぜこんなにも子育てが大変な現代においてそれでも子どもを持とうとするのだろう?

その決断を私はできたのだろう?

再度考えてみた。

 

10代の頃の私はコンプレックスの固まりだったし、実母に「あんたなんか産まなきゃ良かった。できたから仕方なく産んだ」と言われたことをずっと根に持っていた。母に「好きで産まれてきたわけじゃない。誰も産んでなんて頼んでない!」と言い返したのを覚えている。ずっと、自分のような人間をこの世に産み出してはならない、だから子どもは持たないことにしようと思っていた。

 

その反面、私は昔から大の子ども好きで、近所の公園で近隣の小さい子達と遊んであげてはお母さん達から有難がられていた。保育士か幼稚園の先生になりたいと思ったこともあった。

 

子どもは好きだけれど自分の遺伝子を継ぐ子どもは可哀想だから産んではいけないと思っていた。その事を考えると涙が出ることもあった。

 

そんな私がなぜ母親になったのか?なれたのか?それは親友の妊娠がきっかけだった。高校生の時、私と同じように母親との関係に悩む友人と、自分と同じ辛い思いをさせたくないから子どもは産みたくないよね、というようなことを言い合っていた覚えがあるのだが、その友人が30歳を越えたしばらくしたある日会ったら妊娠していた。

 

その後、彼女は結婚し、おおきくなりつつあるお腹を抱えながらの結婚式ではとても幸せそうな姿を私に見せてくれた。

 

当時新婚だった私は友人の幸せそうな妊婦姿をみてなんだか猛烈に自分も子どもが欲しいと思った。子どもを産むことへの勇気のようなものを彼女の姿からもらったのかもしれない。そして、子どもを持つことに消極的だった夫に子どもが欲しいと言ってみた。そして、友人の結婚式から4ヶ月後、私はめでたくも妊娠した。親友の娘と私の娘は半年の差で産まれた。ウソのような本当の話だ。

 

後から、当時私は32歳で、33歳から女性の妊娠率は下がるらしく、生殖本能や女性ホルモン的には妊娠適齢期だったのだと知った。結局、私は生殖本能に突き動かされただけだったのか?

 

それにしても、あらゆる条件とタイミングが不思議と重なっておこった奇跡のような妊娠だったと思う。

私が心から子どもが欲しいと思ったのは後にも先にもあの秋だけで、産む前から私はきっとこれが人生で最初で最後の出産になるだろうと感じていた。

 

だから、娘が産まれることは運命、必然だったのだと思う。そして、娘を産んだ後、この子を世に送り出すために私は産まれたきたのかもしれないと思うようになった。それくらい、娘の存在は私の人生で大切なものとなった。

 

自分が生きる意味なんて探しても簡単に見つからない。出産は自分だけの経験であり、他の誰にも置き換えられない。赤子は全身で母親を必要としてくれる。

出産と赤子の世話をつきっきりでするほど、自分の存在意義を与えくれる体験はなかなかないと思う。

それに出産直後に感じた、愛情ホルモンといわれるオキシントン大放出からなる多幸感は人生で最高のものだった。あんなに、幸せで身体中から愛情があふれた瞬間は私の人生で後にも先にもない。オキシントンの仕業なのだろうが、あれは強烈な脳内麻薬体験だった。

 

私たちの身体には生殖を促すための様々な報酬がセットされている。だから、理性と打算で考えたらできないこんなに大変で辛い出産・育児を女性は続けてきたのだろう。

 

今でも娘を出産した夜、産まれて間もない娘を胸に抱いて、この世にこんなに愛おしい存在があるのか?と驚きながらこの子を守るためならどんなことでもしようと誓った瞬間をくっきりと覚えている。

 

【川上未映子の小説】

 

芥川賞受賞作

 

今回読んだ衝撃の長編小説

 

先月読んだ恋愛小説