この本を先週に読みました。
J.S.バッハを知るために、多少寄り道しながら(迷走?)西洋中世の世界の本をいろいろ読んでいます。大学受験は「日本史」を取りました。高校時代の歴史の先生は大学のオーバードクターのようなアルバイト先生で、授業は黒板に延々と説明を書くだけで全然つまらなかったので、よくそ~と教室を抜け出して(または代返をたのんで)図書館で他の本を読んだり寝ていたりしていた(私の高校は放任主義で授業中に図書館にいても何も言われなかった)。
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それでも単位はとれたのが不思議です。おかげで私の現在の世界史の知識は中学程度なのです。それで、このような本は私にとって(とても)新鮮で面白い。

●中世の光と影(上)/堀米 庸三 / 講談社学術文庫中世
著者の堀米 庸三(1913年-1975年)さんは、山形県出身の東大教授で西洋歴史家らしい。この本は専門書というよりは、すこし自由な紀行文的なもので、何も知らない私でも読みやすい。ただ、もっと知識があればさらに面白いだろう。一度、絶版となり最近復刻したもので、パラパラと中を見て面白そうだったので購入しましたが、実際面白かった。

簡単な私の感想など
●堀米さんはなかなかすごい人のようだ。読み進めるうちに「歴史を見る目」というのが豊富な知識を裏付けとしてじわじわと感じられてくる。「歴史の変化は、当時の人々にはまったく気がつかないような些細な出来事が、長い時代を経てつながり顕れてくる」という(書いてしまうと当たり前のこと)がよくわかる。大きな出来事をなぞるような中学レベルの教科書ではどうしても抜けてしまう歴史的つながり(それを歴史的弁証法と言うのかもしれないが)が見えてくる。
●堀米さんは、中世(西ローマ帝国の滅亡の476年から東ローマ帝国の滅亡の1453年)とは「古代ギリシア・ローマ、キリスト教、ゲルマン民族の3つが融合してヨーロッパが構成された時代」とととらえているようだ。この本を読んで、遅ればせながらフン族の大移動からゲルマン人の大移動、十字軍遠征とその功罪、繰り返されるキリスト教権と王権との覇権争い、そしての中世の秋、フランス等の封建王権の中央集権化のはざまで一時的に栄えた(あだ花のような)イタリアルネッサンス、100年戦争と黒死病、そしてスペインからのイスラム勢力の駆逐(とコロンブスのアメリカの発見大航海時代の始まり)が多少つながって見えてくる。
●この本の書評には、「さまざまな紆余曲折を経て、「ヨーロッパ」は12世紀に確立する。ここに東ローマとは全く別個の構造と理念を持つ世界が成立した。」と書いてある。さすがに私の感想よりわかりやすい。

●中世の光と影(下)/堀米 庸三 / 講談社学術文庫
中世2
本の構成は下記です。
10章 神のものかシーザーのものか
11章 十字軍とその時代
12章 十字軍とその時代
13章 正義と異端
14章 十二、三世紀のヨーロッパ諸国
15章 都市と城と学生
16章 ロマネスクとゴシック
17章 中世の秋

私の簡単な感想
●ルネッサンスは、フランスやドイツの皇帝の力がまだ拡大しないほんの一時期に栄えたもの。
●十字軍遠征は騎士階級に財政上の過度の負担を課し、その結果君主の中央集権化という方向を与えた。
●十字軍遠征の終焉はヨーロッパの外部世界との接触喪失となり「中世の秋」をもたらした。その間、イスラムの宗教的寛容(当時はそうだったんだ)に学ぶことなくヨーロッパの宗教的狂信(教皇の異端審問権による支配もその一つと思われる)が、その後の近世のヨーロッパ人の世界拡大での、正義と人道に反した世界の奴隷化を引き起こした。
●なお、この本で気になるのは、中世後期に発展した建築のゴシック様式に対する批判のところ。堀米さんは、ゴシック様式をルネッサンス芸術の近代写実主義とはまったく異質の中世象徴主義であり、瑣末なところの詳細化にすぎないと言っている。これは他の著者の本でも同様な見解が書かれているので一般的な解釈なのだろう。しかしながら、後世になってあのゲーテがゴシック様式の再評価を行い、且つバッハの音楽との関連ずけを行っている。ここらは、もう少し確認しておきたい。

・・・ということですが書いてみて支離滅裂です。この本は、もうすこしじっくり読み返さないと私の頭には入らないな~~。